『ハーレムエンドのその後で』10話11話あたりの使えなくなったもの
講堂に集まりクラスごとに並んだところで、青柳がこっちを見ているのに気づいた。今日は生徒会としての役割があるらしく、教職員側に立っているから距離は遠い。
「冬休みはさんだだけじゃ興味は変わらないかあ……」
がっかりしてつぶやく。
青柳の視線から目をそらすべく隣のクラスを見て、ぎょっとした。
なぜかまわりから距離が開いている空間の中心に、目に痛い色合いの二人がいた。目が死んでいるピンクちゃんと、彼女を放すまいと腕にしがみついている蛍光黄色の髪の少年。黄樹君の周囲を威嚇するギラギラした視線に誰も自分のクラスに戻れとも生徒会の仕事はどうしたとも突っ込めずにいる。
……この冬休みの間に何があったんだろう……。
疑問は浮かんだが、触らぬ神にたたりなしだ。
他の人たちと一緒にそっと一歩距離を取りつつ、目線を外す。
ただの群衆にはどうすることもできない。
とりあえず……ピンクちゃんがんばれ。
*
授業中も常に黄樹君がピンクちゃんにくっついているという状況以外特に変わったこともなく、日々が過ぎていく。
「姫の証さえ出ればハーレムエンドになるはずでしょ?なんなのなんでこうなるのっ!?嫌だ死にたくない死にたくない死にたくない……」
階段下の小さなスペースで頭を抱えてうつろな目でつぶやくピンクちゃん。
「もう、先輩こんなところにいたんですか?探しましたよ?」
「ひっ……!」
どこかからやってきた黄樹君がとろけるような笑顔で抱き上げて運んでいく。
……いや、うん。普通に怖い。
これも展開の都合上、使えなくなったものです。
ピンクちゃんが青柳にキスをしたら姫の印が出たので、黄樹が姫獲得に本気になったという状況です。
ここでの黄樹は長老の言葉が絶対だと信じているショタキャラというイメージで書いていました。
ただこれだと、黄樹ルート直行で四月以降ピンクちゃんが登場できそうになかったので、今の形になりました。