『ハーレムエンドのその後で』の世界について。使役獣と加護編(緑川・群衆女子)
「あ、あの。教えて欲しいことがあるんですけど……」
「なんだい?」
「使役獣の加護って……どういうものなんでしょうか……?」
「加護……加護ね。一般的には使役獣が主人に与える影響と言われているね。
使役獣は主人が死ぬと契約が切れて異界に戻ることになるから、できるだけ主人が長生きするように力を貸してくれるんだよ。傷つきにくくなったり、病気になりにくくなったりが基本かな。あと、寿命も長くなるし老化も遅くなるね。……たしか今の平均寿命は女性が九十八歳で男性が九十二歳だったかな」
「そうなんですね。……あの、緑川様の場合は……」
「僕の場合はかなり特殊なんだよ。まず、僕の魔力は50くらいしかないんだ。本来なら下級の使役獣とも契約できないくらいの少なさだね」
「……でも、契約……されてますよね……?」
「そうだね。僕の場合は上級の使役獣と契約しているね。足りない分の魔力は使役獣がすべて負担しているんだ。……かなり珍しい形態だろうとは思うよ。
前に青柳が説明していたと思うけれど、加護を受け取るにも魔力が必要なんだ。
上級の使役獣だと50かかるんだけどね。
僕の魔力でもぎりぎり足りると思ってたんだけど。……どうやら契約している使役獣が以前は神獣級だったらしくてね。
加護を全部受け取るには魔力が足りなくて、僕の魔力で受け取れる分だけ加護を与えてもらっているんだよ。
だからほかの色付きに比べるとかなり加護が弱いんだよね。
ちょっとわかりやすくステータス風に表してみようか」
群衆平均
体力:300
魔力:1
耐久:10
攻撃:10
「これが群衆の平均だとするね。ここで言う体力は、疲れにくさとか持久走で走れる距離とかそういう意味での体力だね。攻撃を受けた時の傷つきやすさなんかは耐久の数値が大きく関わってくるんだよ」
色付き平均(加護無し)
体力:500
魔力:300
耐久:50
攻撃:50
色付き平均(加護あり)
体力:600
魔力:300
耐久:200
攻撃:100
「こうして見てみるとわかると思うけれど、群衆と色付きでも体力はそんなに変わらないんだよ。個人差もあるしね。
加護の有無で一番変わるのはやっぱり耐久だね。
攻撃は術を使わない素手の状態の数値だよ。実際には術が加わったりするから値は変動するけれどね。
ちなみに、僕の値はこんな感じだよ」
緑川
体力:500
魔力:50
耐久:80
攻撃:60
「低いでしょう?だから色付きからのちょっとした攻撃でも傷がついてしまうんだ。
……それでも群衆たちよりは強いからね。きみたちのことは持てるすべての力で守るよ」
「……」
「そんな顔しないで。大丈夫だよ。
それに何より僕にとって重要だったのは『契約ができた』という事実だからね。
色付きは使役獣と契約しているということが信用の基準になるんだ。
使役獣と契約していないと、使役獣に見放されるほどの問題がある人間だとみなされるからね。本来なら使役獣と契約できないくらい魔力が低い僕が、出来損ないだと言われてきた理由はこれだね。使役獣がいない人間がいるだけで家の恥になる。
誰からもまったく信用してもらえない分、もしかしたら犯罪者よりも生きにくいんじゃないかと思うよ」
「……」
「大丈夫だよ。今の僕には使役獣もいるしきみたちもいる。……大丈夫なんだよ」
「あっ、あの……いますから」
「ありがとう。それじゃあ、次の商談に向かおうか」
「はい」




