第三話
二人は咄嗟に銃声のした方向を見る。
「父さん!?何があったの!父さん!」
優斗が叫ぶが返事はなく、
その代わりに、
何かが倒れる音がした
「くそっ!」
優斗が駆け出し、警察署の中に入っていく。
それに続くように俺も駆け出した。
*
〜〜1時間前〜〜
優斗の父である、天原 翔は今日も例の事件について調べていた。
「……被害者はどうやって殺されたんだろうな」
部下に尋ねる。
「………心臓だけ傷つけるなんて出来るのでしょうか」
「無理だろ。薬とか病気ならまだしも、心臓には刃物で傷つけられた痕があるんだぞ、こんなこと超能力や人間じゃない者にしかできん」
「警察官が犯行を超常現象で考えるのはどうかと……」
「分かってるよ、そんなことがありえないことぐらい。でも本当にどうやって――――」
その時、
ドンドンドンドンドン
「天原さん!至急来て下さい!」
「どうした、そんなに慌てて」
「それが、例の事件の犯人に殺されると言っている人が……」
「何だって!?すぐ行く!」
そう言い、下に降りると一人の男性が他の警察官に向かって叫んでいた。
「お願いだ!助けてくれ!このままじゃあの子に殺される!」
「落ち着いて下さい。話を―――」
「落ち着け!?この状況で!このままだとどうせ直ぐに―――」
「みーつけた」
「ひっ……」
入口に真っ黒な服を着た、そいつが立っている。
そいつ……いや、少女だ。
その少女は顔が真っ白で、死人の様な感じだったが、こちらを笑顔で凝視していた。
「君は……何者だ?」
「私?私のことは貴方の方がよく知ってるよね?ねえ、先生?」
「知らない!君の様な化け物を僕は知らない!」
「あれー、ここまできて、まだとぼけるの?本当は分かってるくせに……まあ、どっちみち殺すからいいけど」
そう言い、少女はこちらに近づいてくる。
「待ってくれ、話を聞かせてはくれないか」
「うーん……話してもいいけど、先に先生を殺してからじゃ駄目?」
「駄目だ。それに、君がこの人を殺すつもりなら私達は君を止めなければならないし、私達としても君みたいな少女を拘束するような真似もしたくない。それに君が何者で、どうしてこんなことをするのかも聞かないといけないしね」
そう言い、手を挙げ、周りの警官たちに警戒するよう合図する。
少女はその様子を見て、
「・・・・・・・・・はぁ、私は先生さえ殺せれば貴方達まで殺すつもりはなかったのに…………まあ、こいつは知らないけど」
「・・・・・・?それで話してくれるかな君に何があったかを」
「まあ、いいわ。冥土の土産に聞かせてあげる。男性に恋した一人の少女の、クソみたいな物語を」
*********
高校生になって1年がすぎた頃、
私は心臓に病気が見つかった。
高校にも通えくなり、ずっと病院で過ごす生活を余儀なくされた。
周りの友達が高校に行って、部活をしたり、行事を楽しみ、恋愛等をして、青春を過ごしているのにどうして私だけこんなに辛い思いをしなくちゃならないんだ。
そう思い、死のうと思ったことも多々ある。
そんな窮地の私を救ってくれたのが先生だった。
――――――――――――
「どうせ、私なんて生きてても意味ないんだ!」
その時期は、よく私は病気に対するストレスで、叫んでていた。お見舞いの時に持ってきてくれたものを投げつけたり、壁を殴ったりと、苦しみから解放されようともがいていた。
先生が来たのはそんな時で、最初は強く当たっていたけど、真摯に私のことを思って、助けようとしてくれていた先生にだんだん心を開いていき、いつしか私は先生に恋をしていた。
でも、それも全部嘘だった。
―――――
「先生、今日はどんな話をしてくれるの?」
「うーん、そうだね・・・今日は僕が行った――――」
「○○先生」
「あれ、どうしたんですか、△△先生」
「いえ、ちょっと今度の子はどんな子かと」
「・・・・・・・・・」
「先生?」
「あ、ああ。いや、何でもないよ」
その時に、その意味に気づけたなら私はあんな目に会わなくて済んだのかもね。
まあ、どっちみち無理だったと思うけど。
そしてそのまま時間が過ぎ、私は手術することになった。
「先生、今日の手術で成功したら私退院できるんだよね!」
「うん、今日成功したらもう大丈夫。安心して、必ず成功させるから」
私は手術室に運ばれ、そのまま手術を受けるはずだった。
「じゃあ、始めまーす」
周りには、先生を含めて4人の医者がいた。
私は麻酔が効くのを待っていたが、いつまでたっても効いてこない。
「あれ、先生。麻酔効いてこないよ?」
「・・・・・・馬鹿だね君は、麻酔何かしたら楽しめないじゃないか」
「…えっ?それってどういう―――」
そして先生達は私の事を――――
**********
「それで、そのまま私は乱暴され、殺された。馬鹿な話よね最初から全部演技だったのよ、笑えるわ」
「今の話本当か?」
男に尋ねる。
「・・・・・・・・・ああ、そうさ。全部本当の事だよ…」
「何でそんなことをした!」
「…仕方ないだろ!俺達だって苦しかったんだ!毎日、毎日患者の面倒を見たり、クソ上司共から無理難題を押し付けられたり、こっちが精一杯手を尽くしてやったのに、助けられなかったからって、その家族から恨まれる気持ちがお前達に分かるか!?」
「だからって・・・!」
「ほら、そんな奴殺しても文句ないよね?」
「ひっ……来るな!そもそも何故君が生きている!?僕は確かにあの時君が死んだのをーーー」
「全部あの人のお陰よ、まあいいわ、とりあえず死んでください・・・先生」
少女がこちらに近づいてくる。
私は―――――――――それでも、少女を止めようとした。
「あれっー、人の話聞いてた?おじさんってもしかして頭悪い?」
「聞いてたさ、でも君がこの人を殺すつもりなら私達は君を止める。それが、私達の仕事でもあるからね」
少女は溜息をつき、
「・・・・・・はぁ、残念だなぁー。………しょうがない、私じゃ貴方達を殺せないし、まあ先生が死ねば私は満足だから。後は任せるよ」
でも、先生も私の手で殺したかったな……そう少女が呟くと、
少女は何処からかメスの様なものを取り出し、それを―――――
自分の胸に突き刺した
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