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59 祭りの朝

 

 色々ごたごたが有りつつも、俺は徹夜で作業をすることで準備を無事終えた。

 今は朝食をみんなで食べた後、着替えやらが有るというシア達をダンジョンの入り口で待っている所だ。


 俺の用意はアイテムを作る事でほぼ終わっている。

 着る物だっておしゃれな衣装は持っていない。

 外に持っていくのは自分の体とカバンが一つだけ。


 四角いランチボックスをそのまま大きくしたようなシンプルなカバンには、手作りのアイテムが売れるほど入っている。

 大会の規模が分からないので向こうで不足が無いようにアイテムは持てるだけ持っていくのだ。


 それにしても……なんだかワクワクしてきた。

 この街の力自慢達相手に俺はどれだけやれるんだろう。

 元の世界では考えられない不思議な道具を見ながら、俺は不思議な気持ちの高まりを感じていた。


「クロウっちー!」

「ん? リノ!」


 アイテムを見て高揚感に浸っていたら、元気な少女の声で呼び戻された。

 顔を上げ、声の方を見るとリノがこっちへ走ってくる。


 リノは全速力で俺の傍まで走ってくると、前かがみになってはぁはぁと息を吐いた。


「出かける前なのに疲れるぞ? 二人は?」

「ふぅーーー……はぁはぁっ今来るっす!」


 前かがみのまま答えるリノを見て俺はどこか違和感を覚えた。

 何かがひっかかる。……なんだ?


 俺は体全体を揺らしてはぁはぁと繰り返すリノを観察する。

 言葉遣いは変わらない。着ている服だって色が違うくらいでほとんど変わらない。


 でも何か気になる。

 リノがまだ顔を上げないのをいいことに俺は無遠慮に舐めまわすように見た。

 そして、ある一点を見て気づいた。


 リノがオーバーオールの中にシャツを着ている……?

 そうだ! リノが屈んでいるのに体が全然見えないんだ!


 彼女はいつも長いオーバーオールを穿いている。

 胸の前に大きなポケットの付いた物だ。


 最低限にだけ体を隠すそれは上半身の横や後ろには布地が無い。

 だからすこし弛ませれば服の内部が見えてしまう。


 それなのにリノは上半身にシャツも下着もつけずに生活していた。

 なので日常的に触れ合うだけでその体は見放題だったのだが、今日はシャツで体を隠している。


 黒いオーバーオールの中に明るい赤色のシャツ。

 それが今日のリノの格好だった。


「ぅ? どうしたんすかクロウっち」


 俺が腰を曲げて服をのぞき込んでいた状態を、顔を上げたリノに見られてしまった。

 何をしていたかには思い至ってないようでリノは不思議そうにしている。


「いや、別に。今日は赤い服を着てるんだなって」

「──っ! そうなんすよ! お揃いっす!」

「お揃い? シア達とか?」


 俺が服のことに触れるとリノは嬉しそうに飛び跳ね、その場でクルクルと回った。

 お揃いってことは二人もこの格好をしてるのか?

 どうせならシャツ無しで揃えて欲しいな。


 いや、リノだから許されるがシアがそんな恰好をしたら……。

 俺はシアがいつものリノと同じ素肌にオーバーオールを着た姿を想像してみた。

 ダメだな犯罪だ。色々こぼれ落ちていかがわしさが大変なことになる。


「あっ姫っちサキっち来たっす! おーい! 早くいくっすー!」


 俺が妄想にふけっている内に二人も来たようだ。

 リノがじゃれてサキに飛びつく。


「ふふっリノ、今からその調子だと昼には疲れてしまうぞ?」

「リノはずーっと元気だから平気っすー」


「クロウ、どうかしらこの衣装。サキに用意してもらったの」


 シアの格好はいつもと似たものだった。

 リノほど変化は無く、大きな違いは黒い手袋は赤い物になっている事くらい。

 もっとしっかり見れば服自体もいつもとは全然違うのかもしれないが俺にはよくわからなかった。


「よく似合ってるよ。三人でお揃いなんだって?」


 俺はシアの手袋とリノのシャツを見比べて言った。

 比べてみると彼女らの服は使われている赤色の種類が同じものだった。

 これが揃えた部分なんだろう。


「ええ! お祭りはとても混むものらしいわ。だからはぐれても分かりやすいよう揃えたの」


 先ほどのリノと同じくらいシアも喜んでいるらしく、スカートの裾をつまんで優雅に一回転して見せてくれた。


 そうか人込み対策に一緒のカラーで統一か。

 探すとき人に伝えやすいもんな。


「あーそっか迷子になったら大変だな。携帯ないもんなここ」

「携帯?」


 シアが首をかしげる。


「遠くの人と話せる道具のこと。それがあればどこで待ってるって分かるだろ?」

「確かにそういう物が有れば便利。……なのかしら? サキ」


 俺の説明ではいまいち伝わらなかったようで、シアはサキに意見を求めた。

 聞かれたサキは一度頷くと答えた。


「とても有用だと思います。ロスの無い状況報告は無駄になる場面がありません」


 サキの今日の格好は普段のメイドから一転して執事服の様なパンツスタイルで、黒いジャケットの中に赤いネクタイをしている。

 いつも後頭部で一本にまとめている長い髪は更に細く縛っている。


「ほーら! みんなもう行くっすよ! 始まっちゃうっす!」

「そうだな。じゃあ行こうか」


 外に出たくてウズウズしているリノが俺たちを急かす。

 シアもサキももちろん俺も、そんなリノの後を笑顔で続いた。



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