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46 シアとお風呂

 

 ザーーーーーーーー


 激しい雨音が聞こえた。

 体に温かな物が触れる。

 その触れ方は、俺の体に一瞬触ってすぐ離れまた触るというとてもくすぐったい物で、鬱陶うっとうしく思った俺はそれを手で払った。


『起きた? 寝てるわね』

「んんー? 誰だ?」


 振った右腕が何かに当たった。

 ヌルりとした大きなスライムの様な物だ。


「柔らかくて気持ちいい」


 それは、握ろうとすると手のひらから滑って逃げる。

 逃げるそれを追いかけ、指を広げて鷲掴む。

 ムニムニとした触感、少しひんやりして気持ちがいい。


『っ!? 我慢、我慢』


 もにゅもにゅっもにゅもにゅっカリッ

 おお? なんだか違う部分が。ボールのゴム栓みたいな物がある。


『────っ!!!』


 ヒュッ! ドッ!

 栓を抜こうと、摘まんだり引っ張ったりしていたら、俺の腹に何かが落ちてきた。

 感覚的にはボーリング玉クラスの衝撃はあった。


「うっ……」


 あまりの痛さに口から息が漏れる。

 今のはダメな痛さだ。もしかしたら怪我したんじゃないか?

 確認しなきゃいけない。でも体を起こせないし目も開けられない。


『あっ……もしかしてやりすぎた? ヒールしなきゃ』


 腹の痛みと気持ち悪さに呻いていると、急に腹の表面が熱くなる。

 すると、痛みが薄れ、頭にかかっていた考えを鈍らせるモヤも晴らした。


 ……さっきから俺は何をやってるんだ? クリアになった頭が今俺が置かれた状況を考え始める。

 えっと、監督にダンジョンへ連れてかれて、なんだかんだあって監督と戦って、

 こっちのダンジョンに帰ってきて、それでご飯を食べた。


 その後どうしたんだっけ。

 ……ああ、眠くなったんだけど、体が汚れてたから風呂に入ろうとしたんだ。

 じゃあこの雨音はシャワーか。あれでも、自分で風呂場まで来た記憶が無い気がする。


 そっか、目を開ければいいんだ。

 目を開けると、顔のすぐ近くにシアの顔があった。


 彼女は俺の正面に居て、頭一つ高いところから見下ろしている。

 俺は何か固い物に背中を預けて座っているらしい。

 そして足に伝わるぬくもりから、シアが俺の足を跨いで膝立になっていることが分かった。


 昨日の夜もこんなことが有ったな。

 少しの間見つめあいながら、俺はそんなことを思った。

 俺は状況把握のためぼんやりと見上げていたのだが、彼女もじっと俺をを見ている。


 この距離感は嫌いじゃないが、いつまでも見つめ合うのはちょっと照れる。

 先に逸らすのは負けかもしれないが俺は彼女の顔から視線を外した。


 目から鼻、口へ下げていき、服へと……服を着ていない。

 シアは確か首元までしっかりと隠された黒のロングドレスを着ていたはずだ。

 それが鎖骨まで来てもまだ生地が見えない。


 これは……その、下まで見ていいのか?

 ちらちらと肌色の塊が見えかけているんだが。

 俺はもう一度シアの顔を見た。


「…………(ふいっ)」


 それってどういう反応だ。

 シアは何も言わずに俺から顔を背けた。

 見てもいいのか? 良いんだな?


「やっぱりダメ! ……まだ駄目、よ」

「なんで!?」


 覚悟を決めシアの体を拝もうと思ったのに、彼女が俺の目を手で塞ぐ。


「すこし待って、心の準備が」

「昨日は強引に襲おうとしたのに?」


「あ、あれは! あれはその……そうしなきゃって。──それなら貴方だって!」

「? なんだよ」

「貴方だって本当に好き同士じゃなきゃダメって言ってたじゃない! なに体見ようとしてるのよ」

「それとこれとは話が別だろ。放せって」


 俺はシアの手を外そうと掴む。


「どう違うのよ。体を見られるのも抱かれるのも同じような物でしょ!」

「全然違うわ! そういうことを致したいと思う前に、かわいい子の裸なら誰でも見たいだろ!」


 勢いで適当なことを言うが、そんなにかわいい子なら体を見たいのと抱きたいのはほぼ同じだと思う。

 それに、監督の話しも有って彼女を守りたいと思う気持ちも昨日よりずいぶん上がった。

 昨日は急すぎて拒んだが、今なら喜んで受け入れるだろう。


 まあ色々言ったがつまり単純にシアの裸が見たい。


「どうなんだ! 見せるのか見せないのか! 俺はお前の体が見たい!」

「えっええ、そういう物なの?」


 心の声を口からも出し、シアへ伝えた。

 彼女の手の力が緩んでいく。温かな彼女の手が離れ、光が差し込んで。


「姫っちー! お布団の準備出来たっすよー」

「こっこらリノ、待て!」


 バッ!


 リノとサキの声が聞こえたと思ったら、シアがまた俺の目を塞いだ。


「おい! なにするんだよ。見せてくれるんだろ!」

「(ちょっと黙ってて!)」


「姫っちー? あれ。まだ体洗ってるんすか?」

「ええ。思ったよりも体に汚れが付いていたみたい。もうそろそろ終わるわ」


 ガラガラと戸の開く音。そしてぴたぴたと風呂場を歩く足音。

 リノが入ってきたみたいだ。


「姫様、クロウ様はまだ眠っていますか?」

「──!? も、もちろんよ! 今連れて行くから向こうで待っていてちょうだい」


 サキも寄ってきてシアに聞く。

 そういや二人は一緒に居なかったんだな。

 食事が終わって俺が寝てしまい、シアが一人で連れてきてくれたのか。


「大変ではありませんか? 姫様は先に上がって体を拭いて待っていてください」

「いいの! その、将来のためよ! そう……サキが見つけた本にも最後までヤってこそ一人前って有ったもの」


「そうですか? ……終わりまでやってこそですか。確かに一理あります。リノ、私たちは部屋で待って居よう」

「うぅー? よく分かんないっすけどわかったっす。姫っち、早く来てっすよ」


 ガラガラとまた音がして二人が出て行った。


「ふぅ……」

「なあシア、二人が行ったんなら手を放してくれよ」


「──クロウ! 貴方ねえ、話してるときに勝手に触らないでよ」

「シアがくっつき過ぎなんだって。事故だよ事故」


 シアが二人と話してる最中、彼女たちの声と反対側の手を少し動かしたかもしれないけど完全に事故だ。


「どうだか。とりあえず目隠しをするからまだ目を開けちゃだめよ」

「でも目を隠されたままじゃ、俺着替えらんないだろ」


 体はシアが洗ってくれたらしく、この後はもう寝るだけ。

 さっき監督が来たんだし今日買った俺の着替えも持ってきてくれただろう。

 それに着替えないといけない。


「サキにも言ったでしょ? 最後までするって」

「え? 最後って?」

「私がちゃんと着替えさせてあげるわよ。貴方はそのまま目を閉じてなさい!」


「俺には見るなって言っておいて!?」


 俺はタオルで目隠しされた状態で体中拭かれるというマニアックなプレイをしてから寝室へと向かった。

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