表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/86

閑話 お姫様達のパーティー準備 1

 

 クロウがやってきた翌日の朝。

 四人で使った大きなベッドには一番小さなリノ一人が眠っていた。

 クロウは買い物に行き、リノにとっての姉二人は少し前に起きて着替えも済ませお茶を飲んでいる。


「んぅー……ハッ!? リノ! 起床っす!」


 一人ですぅすぅと寝息をたてていたリノの大きな目がパチリと開く。

 彼女は寝起きにもかかわらず元気よく体を起こし、誰に聴かせるでもない目覚めの宣言をした。


「おはよう。リノ」

「リノ、寝すぎじゃないか? もっとしっかりしなさい」


 リノは自分にかけられた声に反応してその方向を見る。


「おはよーっす! 姫っち! サキっち! あれ? クロウっちはどこっすか?」


 姉二人は居るのにあの男の子がいない。

 一瞬あれは本当にあった出来事だったのかとリノは自分の記憶を疑う。

(夢? 確かにちょっとリノの想像通りすぎた気もするっす)


 寝起きの壊れた頭脳はクロウが今いないだけという簡単な答えも出せず。

 夢の事を二人に話してしまったとリノは一人赤面した。


「クロウなら買い物に行ったわよ。そうよね、サキ」

「はい。私が荷物持ちを申し出たのですが……一人で見て歩きたいからと」


 リノの表情の変化に気づかず、二人はリノにクロウがどこに行ったか教えた。

 彼女らは小さな頃から一緒にいる。

 今、誰がどんな表情をしているかなんて一々確認しない。


「だ、そうよ。まったく、あいつも声くらいかけて行けばいいのに」


 それよりも今は昨日突然現れた少年の事の方が問題だった。

 シアはカップのお茶を飲み干し、テーブルに頬杖をついた。

 自分が寝ている内に出て行ったのが気に食わないという表情だ。


「姫様は可愛らしく眠っておられましたので起こすのをためらったのでしょう。ふふっだいぶスッキリとしたお顔でしたよ」


 そんなシアのカップにお茶を注ぎながらサキが微笑む。

 朝起きたらまず始めに自分を優しく起こして欲しい、という欲求が叶わなかったシアとは違い、

 サキは、朝出かける男性の準備を整え送り出す、という以前より一度やってみたかった事を成し遂げ機嫌が良かった。


「なっ! も、もうサキ! 余計な事を言わないで。……そんなことより貴女だって荷物持ちとか言って、本当は一緒に買い物がしたかっただけなのでしょ?」


 普段このダンジョンを出ることは禁じられているシアにとっても、二人きりで買い物をするというのは憧れだ。


「起こしてくれたら私が付き合って上げたのに」

 口を可愛らしく尖らせ呟くシアにサキは愛らしさを感じまた微笑んだ。


「はい。昨日のことから、やはり抱いていただくには心理的距離を縮める必要が有ると思いました」


「──はっ! あれ!? やっぱりクロウっちは居るんすか!?」

「……何言ってるのよ貴女は」


 ────────────


「「「いただきます」」」


 リノもベッドから出たので三人は揃って朝食を取ることにした。

 サキが朝食を配膳している間にリノは顔を洗い席についた。


 焼きたてのパンと肉の入ったサラダ、それに温かなスープ。

 どれもサキが作ったものだ。


「しあわせーっす」

「リノ、喋りながら食べるな。口元が汚れるぞ。ほら!」

「んー。ありがとうっす! サキっち!」

「だから喋るな」


 ガツガツと食べるリノとその世話をやくサキ。

 シアは一人、味わいながらゆっくりと食事をしている。


「もぐもぐ。クロウっちも一緒にごはん食べれば良かったのに」

「サキ、彼も朝食を食べていったのでしょう?」

「ええ。スープは準備が間に合わなかったのでサラダをパンに挟んだものを三つほど」


 シアはサキに尋ね、答えに納得し頷く。


「ならいいじゃない。夜は一緒に食べるのだろうし」

「そうですね。昨日は急なことで準備の時間が取れませんでした。今日こそはもてなしの料理を」

「ずいぶん気合が入っているわね。それ」


 サキの背中から光が漏れ出ていることに気づいたシアが指摘した。

 竜人であるサキは背中に翼が有り、その翼は興奮すると黄金色の魔力を帯びる。

 表情は変わらないが、今彼女は戦闘中と同じくらいに気合が入っているということだ。


「ええ。ここの食事でなければ受け付けなくなる程の物を仕上げてみせます」


 サキは拳にも魔力を纏わせ、グッと握り締めた。


「はい! はいはい! リノも作りたいっす!」


 準備に時間がかかるならいつまでもサキを拘束しておけない。

 朝食を終わらせるためシアが席を立とうとした瞬間、リノが立ち上がり手を上げた。

 サキに叱られてから急いで食べたのだろう、彼女の皿はすっかり綺麗になっていた。


「どうしたのよリノ」

「作りたいってまさか料理か!?」


 リノの発言に姉二人が驚く。

 家事をサキに任せていつも遊んでいるリノが料理を作ると言いだした。

 これは二人がそれだけ驚くことなのだ。


「そうっす! ずるいっすよサキっち! リノもお料理でクロウっちをメロメロにするっす!」


 両手をグーにし胸の前で構えるリノ。

 彼女もサキに負けないくらい気合が入っているようだ。


「ずるいって……今までどれだけ教えてやると言っても聞かなかったのはお前じゃないか」


 主人扱いしているシアはともかく、サキはリノに時々家事をて伝えと言っていた。

 しかしリノは今までそれにほとんど応えることが無かった。

 それが急に自分からやらせろと言うのだから、サキの驚きと喜びはかなりの物だ


「つーくーるーっす! 姫っちもやるっすよね?」

「えっ私も? ど、どうしようかしら。まあどうしてもって言うなら──」

「こらリノ! 姫様にまで無理を言うな! 料理は私がいくらでも教えるから。すいません姫様」


「私も──」

「じゃあ二人で頑張るっす!!!」

「ふふっ私の指導は厳しいぞ? 付いてこいよ」


「任せるっす! 追いつけ追い越せっす!」

「うむ。その意気だ。姫様、どうかしましたか?」


 無い胸をトンと叩くリノを微笑ましく見守るサキだったが、シアが変な表情をしていることに気がついた。


「え? なんでもないわ。楽しみにしてるわね」

「はい! 我が翼に誓って!」

「頑張るっすよー! おー!」


 二人揃って拳を突き上げるサキとリノをシアは少し羨ましそうに眺めていた。

気づけばずいぶん長いこと一人旅を書いていたので一度ヒロイン側も書いておこうかと

まあそろそろ一人旅も終わりますが

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ