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 正面の通路に入るとすぐに大きな部屋に出た。

 他と同じく部屋全体が暗い。そしてここも水の気配がした。


 サーーーと川の流れの様な音がする。

 ここには深い水があるようだ。

 部屋奥には煌々と光る大きな松明があり、そこに出口らしき穴が見える。


「ずいぶん目立たせてるな。あそこ行けばいいのか。……ん? なんだこれ」


 とりあえずそこを目指して歩こうと思って一歩踏み出したのだが、足元を見ると木の板があった。

 肩幅程の長さの板。それがまっすぐいくつも並んでいる。


「なんだ? 橋?」


 明かりを近づけてよく見ると板の両サイドには釘が打ってあり、板から外れた黒い床は水だった。

 まさか部屋全体がこれなのか? 俺はもう一度反対側の出口を見た。

 この暗い部屋で木の上を渡って行かなきゃダメなのか。


 木に足を乗せてみると意外としっかりしていた。

 トッと軽い足音が鳴る。


 トットットットットッ。


 足元を照らしながら慎重に歩いていく。

 木の橋は一直線に出口へ伸びているわけではなく、たまに曲がり道を挟んでくる。


 何度も曲がったせいで入ってきたところは何処だかもうわからない。

 方向が松明の反対だということはわかっているのだが、そこまでどれくらい距離があるのかわからなくなる。

 戻るのも進むのも正解が分からず、心理的ストレスだけが溜まる。


「どれくらい近づいたんだ……はぁ。さっきと変わって無いんじゃないか?」


 いくらか歩き、出口までの距離を測ろうとした時だった。


 バフッ!


 布団が破裂したような音と、強い風が松明の方から吹いてきた。

 風は瞬間的な物だったが俺は思わず目を閉じた。


「……? なんだったんだ? ──って松明どこだ!?」


 松明を正面に捉えた状態で目を閉じたはずなのに、どこにもそれがない。

 横を見ても後ろを見てもだ。


 松明が今の風で消された? 嫌な汗が額に流れる。これはまずい。

 慌てて周りを見たせいでどこに松明が有ったかすらもうわからない。

 いや、落ち着け。一本道だったんだから、出口はともかく戻ることは来た道を辿れば出来る。


「でも結局どっちから来たか分かんなかったら意味ないんだけど。…………ははっ親切すぎるだろ」


 足元を照らしてどっちが来た道か考えようと思った。

 だが、道は一つしかなかった。

 橋はそこがスタートラインかのように俺の足のすぐ横で途絶えていた。


 それが今来た道か、今から行くべき道だったのかはわからない。

 行った結果入口に戻ったら、あの宝箱の部屋まで行って少し休もう。

 出口に繋がっていたらまあそれはそれでいい。


 今まで以上にゆっくりと、一歩一歩しっかりと確認してから進んで行く。

 それにしてもこんな大掛かりな仕掛けがあるなんて面白いな。


 道が消える水上迷路といった感じか。

 これで明るかったらテーマパークみたいな気持ちで楽しめるのに。


「あーやっぱりこういうのも有るか」


 俺の視線の先には二股になった木の橋。

 それぞれその先がどうなっているかは全く見えない。

 うーん。どっちに行くか。


 こういう場合同じところを二度通らないよう、目印でも付けて置いた方が良いんだろうがあいにく塗料は持っていない。

 なら少し橋に傷をつけておこう。

 橋を叩き割ってしまわないよう加減をし、剣で橋に穴を開ける。


 三叉路の自分が来た方にも同じ穴を開けておく。

 これでもしまたここを通っても一度来た道だと理解できるだろう。


「はい。穴あけー」

「こっちも」

「またこっちもっと」


 その後いくつかの分かれ道に同じ細工をしたところ、とうとう一度通った道に出てしまった。


「どうするかな。そもそもゴールはあるのか?」


 ザバアアアアアアアアアアアアアッ!


「な、なんだ!?」


 急に大きな音がし、その直後パラパラと体に何かが、かかった。

 手でかかった場所を拭い明かりで確認する。


 手は濡れているだけで特に変なものはなかった。

 水? この下の物と同じ水か。


 じゃあ今のは大きなものが水に飛び込んだ音だ。

 見えない場所で何かが動いている……。

 しかも水しぶきが俺にかかったということはけっこう近い?


 たぶん友好的なモノでは無いよな。

 俺は動かず、また音がしないか少し待った。

 この足元も視界も悪いところでとは勘弁して欲しい。


 チャッ……チャッ……チャッ……。


 小さくだが音が聞こえた。

 正確なことはわからないが、そんなに早いスピードではなさそう。

 一定のリズムで動いている。


 チャッ……チャッ……チャッ……。


 ゆっくりだが確実にこっちへ来ている気がする。

 離れるべきか?


 チャッ……チャッ……チャッチャッチャ。


 えっ近っ。

 完全に距離感を読み違えた。

 いつの間にか音はすぐ近くから出ている。

 ヤバイ、走るか!?


 チャチャチャ──ッザアアアアアアアアアアアアアアア!


 水中から現れたのは、監督をも超える巨大な腕だった。




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