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 小瓶の中身は俺が一人で適当に作った中身も覚えてないポーションだし……どうするか。

 とりあえずリノから離れなきゃダメだよな。

 俺はミニポータルカードを一枚抜き取りリノに投げる。


「リノ、これ一枚もってろ」

「……なんすっか? これ」

「チャンプさん、お前の親父と作った道具。一度きりのポータルだから壊すなよ」

「父ちゃんが!? わ、分かったっす」


 今の彼女にポータルを預けるのは心配だが、彼女も俺に死んでほしいと思ってるわけではないだろう。……と信じたい。

 一度に多くのことを心配してもわからなくなるだけなので、これで帰りの準備は万端としておく。

 リノに預けたカードの対は胸ポケットに隔離し、次のひと組を取り出す。


 嫌だけどこっちからドラゴンへ近づかなきゃいけない。

 カードに穴を開けそこからロープをつないで拳大の石を結ぶ。

 もう一枚は足元に置き、ロープを持って石を回す。


 今ドラゴンは100mくらい先。

 出来ればドラゴンの上に飛ばしたいけど最悪足元に行かなきゃ何処でもいい。


「よっと!」


 石の回転数を上げ、十分に勢いが付いてからドラゴンの上へと飛ばす。

 ヒュッと石が風を切って飛んでいく。さあ急がないと。

 石が落ちる前に足元のカードへ魔力を注いで準備をしタイミングを図ってポータルを繋げた。


「さあどこだっ! うわっと」


 狙い通りに石はドラゴンの長い首を超え背中の上辺りに落ちていた。

 ポータルから飛び出た俺はその背中へ尻餅をつく。

 ヌメヌメとした嫌な粘り。もぞもぞと何かが動く謎の触感。


 この感じはどこかで体感したことがある気がする。でもよく思い出せないのだからそこまで重要ではないだろう。

 ドラゴンの背中は人が立てる程度に平らだった。

 だが、嫌な臭いにヌルヌルする床と楽しくピクニックが出来る場所では無さそうだ。


 幸いまだドラゴンはこっちを見ていない。

 突然消えた俺を探すように首を左右に激しく振っている。

 今のうちにウロコの強さを調べておくか。


 俺はあそこから持ってきていた、棒を魔力で加工した剣でドラゴンの背中を刺した。

 ズニュッ。

 想像していた物とは全く違う刺し応え。硬いのは硬いのだが、金属のような堅さではなくゴムに近い感じだ。

 ウロコの一枚でも簡単に剥がれてくれればまだなんとかなりそうだったんだが。


 何にしても簡単じゃないのは分かっていた事。

 あまり深く考えないで次はこいつの足を止める方法を探さなければ。

 背中はヌルヌルで首まで走ることは無理。顔をこっちに向かせることが一番なんだろうけど……。

 その時、俺は一つのポーションを思い出した。


 これが効くとしたら、ここで使うのは危ないだろ。

 ならもう一度この石を使って……待てよ、ポータルの残り枚数は……。

 っちこれ外したら下に降りなきゃダメか。


 俺は使用済みのポータルカードから紐を外し、新しいカードに結んだ。

 今度はさっきよりも時間が短いから左手に一本のポーション瓶ともう一方のカードを出しておく。

 ウロコのヌルヌルとドラゴンが歩く振動が邪魔をしてうまく狙えない。


 これは確実にドラゴンの上に落とさないとダメだ。外せない。

 深呼吸をし、1・2・3。


「ッ!」


 俺が投げた石は綺麗にドラゴンの後頭部に当たった。

 着弾と同時に左手でポーションの蓋を取ってポータルの向こうへと送りつける。


 カチャンッ。


 俺の気のせいだろうが、確かに瓶の割れる音がした。

 どうなる? 俺の予想が当たっていれば──


『グゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ』

「っくっはははは! なんだあれ!」


 あれだけ堂々と歩いていたドラゴンが苦痛の泣き声をあげている。

 青々としたコケに覆われた長い首から黒煙が上がりそれが上下に広がっていく。

 突然の事に驚き振り返ったドラゴンと目が有ったが目的はそれだ。何も問題はない。


 今俺がドラゴンの首にかけてやったのは、ダンジョンの掃除にでも使おうと作った全自動コケ・カビ滅却ポーション。

 ワックスの様に床に塗れば、ジメジメした場所でもコケやカビが生えないメンテナンスフリーなダンジョンになる。

 はずだったのだが元々そんなにジメジメしているダンジョンは換気性能が悪い。

 そんなダンジョンで使えば中に黒煙が充満してしまい苦情が酷かった。


 そもそもダンジョンなんてコケやカビが生えていたほうがそれっぽい。

 そう考える魔物の方が多くクリーニング系の道具は需要が薄い。

 まさかそんな役たたずのポーションがドラゴンに効くとは。


『グウウウウウウウウッ!』


 ドラゴンは首を曲げてどうにかポーション炎上地帯にブレスをかけようとしているが、うまく狙えないようでポーションの勢いは止まらない。

 まあこんな変な匂いのするコケなんか捨ててツルツルになった方がドラゴンも嬉しいだろ。

 とりあえず足止めは出来た。それにドラゴンは酷く混乱している。


 もし今リノのところに戻ればふたり揃って無事に逃げることは出来るだろう。

 でもあいつがそれで納得するだろうか。

 倒すとまではいかなくても、ドラゴンが俺から逃げるくらいのことをしないと認めないかもしれない。



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