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 驚きで固まった俺たちを見回しサプライズが成功したリノは腰に手を当てドヤ顔をしている。

 さっきの大暴れで忘れてたが、確かにリノは俺をプレゼントとして運ぶと言っていた。

 俺の意思を無視して物みたいに扱うなよと思った記憶がある。


 というかそもそも、結婚相手をプレゼントってなんだよ。

 魔物の独特な倫理観かと思えばリノ以外の二人も俺と同じくショックを受けている。


「リ、リノ……一つ尋ねても?」

「はいっす!」


 リノだけが笑顔で跳ねている空気がしばらく続き、やっと固まっていた姫様が口を開いた。

 それと同時に俺の右腕が何か温かな物で包まれる。

 何が起こったのか見てみようかと少し思ったが、やっぱりぐちゃぐちゃになっていると言われた自分の手を見ることはできなかった。


「お父様は正確にはなんと? ……その、急にそのようなことを言われましても」

「親分さんっすか? ぅえーっと……ゴホンッ『面白い人間を拾ってな! すぐ死ぬかと思ったが鍛えたらびっくりするぐれーに素質がありやがる。こいつなら俺の義理の息子にしてやってもいい。ぐはっはっは! なんだったらリノ、おめーもこいつの物になっちまえ』っす!」

「……はぁ。お父様がこの人を息子にしたい。だから私と婚姻を結ばせる、とそういうことですか」


 リノが今言ったのは俺がボケっとしていて聞いていなかった内容。

 あの時ちゃんと聞いてればその場で文句を言ったんだが。

 それにしてもおっさん何考えてんだ……評価されていたってのは嬉しいけど。


 拾われて約半年の間いろいろとあの人たちとの常識の差を感じてきたけど、まさか結婚なんていう人生の一大イベントを子供に言わず進めるなんて。

 いや、親同士で決めるのは有り得ることか? 許嫁とか。

 じゃあ有り得ることか? ……でも俺にこの世界での親はいない。


 ──だったら俺には言わなきゃダメだろ!?


 この場合の俺の立場って下手したら奴隷じゃねえか!

 ちゃんと給料貰ってるから従業員だと思ってたが俺はあの人たちの所有物だったのか?

 さっきのサキの件は百歩譲って俺に原因があるとしてもこっちは納得出来ない。


 こいつらには悪いがさっさと帰ってあのおっさんに文句を言わないと。

 右手をテーブルについて、俺は立とうとした。


「姫様、ちょっと悪いんだが──」

「わかりました。私、グローリア・バンクシアはこの人を喜んで受け取ります。プレゼントの配送ありがとう。リノ」

「はいはーい! なんでもリノにおまかせっす!」


 だがその俺の手を姫様が両手で覆い、そのままリノに向かって覚悟を決めた様子で頷いた。

 姫様の黒い瞳の中に赤い炎が見える。

 いや、あんたも俺を物扱いかよ。

 そっちが受け入れても俺はまだ結婚する気なんかない。


「ちょ、ちょっと待ってください姫様。彼は私の夫となるのです」

「サキ。諦めなさい。このお方は私が私のお父様から頂いた大切な贈り物なのです。貴女であろうと奪うことは許しません」

「──ッ! 断ります! 姫様であろうと譲れません。……力ずくになりますよ?」

「いいでしょう。いつが良いか言いなさい。時間は選ばせてあげます」


 一番長く固まっていたサキがここで再起動。俺を隠すように翼を広げ姫様を威嚇。

 黄金の魔力が鱗粉の様にキラキラとこっちに降りかかってくる。

 うわー美人二人が俺を取り合ってるモテモテだー。

 二人共一回も俺の意見を聞いてくれない。


「ダメっすよっ!!!」

「「っ!?」」


 二人が無言で睨みあっているとそれまでニコニコしていたリノが両手を広げて割って入った。

 ノリノリで連れてきたくせに止めてくれるのか?


「二人共なに喧嘩してるっすか!? ダメダメっすみんな仲良くっす。サキっちも姫っちも反省っす」

「いえリノ。私たちは喧嘩をしているわけでは」

「黙るっす!」


「リノ、聞け。これは私と姫様で今決めなければいけないんだ」

「いけなくないっす!」

「「…………」」


 おお、強いなリノ。

 二人の言い分は全く聞かずきっちり遮っている。


「いいっすか? 取り合うから喧嘩になるっす」

「どういうことですリノ」「二つに切り分けろとでも言いたいのかお前は」

「ちょっと二人はこっち来てっす。ここ」


 リノが自分の横を指しサキと姫様を呼び、しぶしぶ二人が並ぶ。

 魔物の空気に慣れてきた俺にはわかる。この流れはまずい。


「いいっすか? 喧嘩を無くすには! みんなで結婚すればいいっすー!」


 リノはそんな事を満面の笑みで二人に提案した。

 だから一度俺の意見を確認してくれよ。


「みんなで。とは私と姫様と」「リノっす! 姫っちは嫌っすか?」

「いえ……嫌、というわけでは」「じゃあおっけーっすね!」

「三人で……」「確かに争う必要はないですが」


 三人は抱き合う距離でそんな相談をしているがその最中に一度も俺の方を見向きもしなかった。

 もしかしたら結婚というものが俺の考えているものと違うのかもしれない。


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