【CONTINUE】 ゥマクァイヤ村
東南の街・アルサへ行くことになったマコト。目的地は出来たがまだその前に
しておかなければいけないこともあるようで。。。
マコトとキトは二人連れ立って村の中を歩いていた。
しばらくゥマクァイヤを基点に行動することになりそうなので村長へ挨拶しておいた方がいいだろうとのミツシの判断から、二人はアルサへ行く前に村長の家へと出向いたのだ。
どうせならと、回り道になるのを承知で村の散策も兼ね村内を見て回ることにした。
コッカーの家より少し手前で東に二股に分かれた道に差し掛かったところで家から出てきたコッカーをみつけ声を掛けた。
これから村長宅を訪ね、そのあとアルサへ行くので用事はないかと尋ねるとコッカーは自分も用事があるから同行すると言い出した。
キトが出発るときに声を掛けることを告げると、無言でうなずきを返し家の裏側へと消えていく。
二股に分かれた道は一方は井戸へ向かい、一方は共同浴場や鍛冶屋があるのだと教えられた。共同浴場のある方へ行ったほうが村長の家は近いが、そちらは帰りに通ろうとキトの提案を受け、井戸のある方の道へと進路をとる。
飲み水は数日ごとに井戸へ汲みに来て、水がめに溜めおきしたものを使うということを知った。
確かに、池にも水は豊富にあるが顔を洗った水を飲み水として使っていると言われたら嫌だったろう。食器や衣服の洗い場は井戸の脇を流れる小川でするという。この小川は山からの水なので池の水とはまったく違うものらしい。
ためしに触ってみろと言われ水の中へ手を沈めると、その冷たさに驚く。
池と山水ではぬるま湯と氷水ほどの違いがあった。
井戸には食器の入ったタライと木でできたバケツを持った二人の女性が来ていた。
衣服はリリカラッテが着ていたものと似かよっていて、白い麻の布で作られたブラウスとスカートといった素朴な衣服に前掛けだ。うち一人は頭をすっぽり覆う布で髪をまとめていた。
キトが声を掛けると水を汲んでいた女性が顔を上げて見知った顔に笑顔で挨拶を返してきた。そして、隣にいるマコトが目にとまったようだ。
「そっちの子は初めて見る顔だねえ」
「はい。ミツシ様の遠方よりの知人でマコトといいます。しばらく滞在することになるのでよろしくお願いします」
簡単にマコトを紹介すると女性の好奇の目がマコトに向けられる。
「もしかして、昨日のキューイの子かい? コッカーが肉を塊で置いていってくれたよ。半分は干しちまったから、料理した分は明日にでも届けるよ」
物々交換は村での生活では基本だ。
野菜だったら違う種類の野菜と交換することが多いが、肉などはもらったものの一部を料理や干し肉などに加工して返すことが多かった。
女性は鍛冶屋の奥さんでミツシの家からは池伝いに東へ行った二軒目の家がそうだと紹介された。食器の入ったタライを水で満たしていたのはその娘で三人姉妹の末娘だ。
十になったのでそろそろ働き口を探すか学校へ行かせようと思っていると母親がほがらかな笑顔で紹介するが、本人はどうにも乗り気じゃない様子で三人が話している間中、口を尖らせそっぽを向いていた。
「村長さんのところへ挨拶に行くところなんです」
どこに行くのか問われてキトが答える。
「そうかい、そうかい。気をつけてお行き」
ミツシの客ときいて納得したのか、それ以上は何もきいてこなかった。
見送られながら道なりに進んでいく。
井戸のすぐ近くの家をさして『井戸守』の夫婦が住んでいる家だといわれたがピンとこなかった。井戸の管理をしているのだという。
その家の主人は猟師なので森に行っている時間だろうとキトが話すのをききながら更に進むと三叉路に出た。
三叉路は西へ行けば西の泉に向かう森があり、まっすぐ南へ向かえば女たちが果実や香草、時々は遊びに出掛けるのに最適な森がある。そこには危険な生き物は住んでいないので安心して出掛けられるということだった。
そこで籐かごをもち果実をとりにいくというリリカラッテと女性の一行に出会い、そこでもマコトの紹介が行われた。
詳しく説明はせず、鍛冶屋の奥さんのとき同様、遠方からミツシを訪ねてきた知人ということにした。やはり、ミツシの知り合いというだけで誰もが好意的に受け入れてくれる。
こんな西の果てまで来るなんて、なんて物好きなお客だろうねとお客自体が珍しいのか女性たちはこぞってここがどんな場所であるかを教えてくれた。
嫁いでしまえば村を出ることもめったにないのだから新顔はいい話の種だ。
話し相手としてはかっこうの餌食であるマコトがオバ様方の相手をしている横ではリリカラッテが、村長宅へ向かうと聞きキトに頼みごとをしていた。
村長の家はそこを東に行った先にあった。
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