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衝撃  作者: 木崎 るか
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【CONTINUE】 一難去ってまた一難

最初はたしかにヤツから逃げたい一心で走っていたのに…

 走って走って走って、森の中を彷徨(さまよ)うように逃げた。

 もう当の昔に豚鼻のヤツの姿はないというのに、それでもまだ走っていた。


「だ、誰か止めてくれ〜!」


 情ない悲鳴が森に響き渡る。

 理由は簡単。

 足が止まらないのだ。

 恐怖のためでもなんでもない。

 先ほどから少年は坂道を駆け下りていた。

 はじめは緩やかだった傾斜が今は50度ほどになっている。こうなるともう走るという状態ではない。

 周りの景色が飛ぶように流れて行き、木々が正面から迫ってくるのを持ち前の運動神経でかわしていく。

 いっそ傾斜に身を任せ、滑り落ちればよいと思うのだが、その考えには至らないらしい。

 木の数が減っていて障害が少ないのも止まれない理由の一つになってはいるが、このままではいつか、あっ!

 突き出した木の根に足をとられる。

 しこたまぶつけた足がじいんと痺れる。

 (つまづ)くなんて表現では足りない。エンセキを思いっきり蹴飛ばしたようなものだ。


 シギャーーー!


 遠くで聞いたことのない何かの声を聞いた気がするが、それどころじゃない。


―――痛いっ!


 咄嗟(とっさ)に腕を伸ばして手に触れるものを掴む。植物の(つる)だ。

 駆け下りてきた勢いのまま蔓が引かれる。


 ぶちぶちぶちっ


 絡まりあう蔓が突然の負荷に木から剥がれるが、丈夫なものらしく蔓自体は切れることなく重みに耐えている。


「と…止まったぁ…」


 右手を蔓に絡ませ、どうにか止まったことに安堵する。

 しかし、安堵するにはまだ早かった。

 風が吹き上げてくる。

 そう、真下から。


―――下?


 傾斜は酷かったがいくらなんでも体の下から風が吹き上げてくるはずはない。

 嫌な予感を覚えつつも目を下へ。


「ひぎゃっ」


 慌てて蔓に両手両足を使ってガッシとしがみついた。


―――ない! 地面がない!


 自分の眼にしたものが信じられず恐る恐るもう一度目を下へ。


「い〜〜や〜〜〜〜」


 絶望の叫びが森に木魂(こだま)する。

 間違いなく地面はなかった。

 そこにあるのはぽっかりと口を開けた穴。

 それも半端なでかさではない。直径3メートルはある。

 深さは、え〜と、底が見えないくらい?

 アハ、アハハと乾いた笑いが漏れる。

 どうした作用が働いたのかその穴の真上にぶら下がってしまっている。


―――落ちたら死ぬのか? 死ぬのか俺!? それはいやーーー!!


 思ったところでどうしようもない。しがみつく手も足も、限界が近づいている。

 それ以前に掴まっている蔓の限界が先にきそうだ。


 ぶちっ


 無情にも嫌な音が鼓膜を震わせる。


「んぎゃーーーーーーー」


 悲愴な叫びと共に穴の中へと吸い込まれていった。


                            【SAVE】


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