市街地戦
今回は、貴族からの依頼だった。街を統治する領主が出かけるということで、街ががら空きになるのを狙って街の中にある金品を盗む。それを理由に汚い理由で稼いだ金を隠すための依頼。本当ならそんな貴族どもの腐った依頼などやりたくはないのだが、当然のように報酬が破格だった。さらに、護衛の近衛共が居ないのであれば、平民上がりの防衛隊など屁でもない。しかも、奪った金品も報酬に上乗せできるという歩合制も追加せれる。
「楽な仕事だと思ったが甘かったかもな。」
しかし、蓋を開けてみたらどうだ。街の外の陽動を行っていた奴らに勝手な援軍は来るわ、その援軍もろとも瞬殺されるは、国最強の自警団に出くわすわで散々な結果に終わっている。傭兵を止め、死に場所を探してここまでやってきた首領にとっては、初めての敗戦だった。
戦場の状況はかなりまずい。長いこと一緒にやって来た傭兵時代からの仲間はもここにいる二人を含め、五人ばかりになってしまった。それもこれも、一度は瀕死まで追い込んだ自警団が復活したせいだ。もっと言うならあとから駆け付けたあの黒髪のせいだ。
「おい。お前ら荷物をボスのところに運んどけ。ここはいい。」
本当なら、あんな貴族のことをボスとは呼びたくはないが、この以来の間は雇い主がボスだ。
ついに来たのかもしれない。命が燃え尽きるその時というのが。ならば、せめて以来だけは達成して死のう。
「おい。お前ら荷物をボスのところに運んどけ。ここはいい。」
やはり、ここにいる野盗たちの中では一番偉かったみたいで橋の前にいた二人の下っ端AとBに指示を出しつつ二人の側付きと共に橋を渡り切ったところで歩みを止める。
「やってくれたじゃねぇか。俺のかわいい子分どもを何人も。」
「今すぐ投降しなさい。そうすれば命までは取りません。あなた方の身柄はここの領主に引き渡した後に正当な処罰が決まるでしょう。安心して下さい、ここの領主は寛大ですので命は助かるでしょう。」
野盗達を代表して話し始めたのは当然というべきか真ん中の統領っぽい野盗だった。金髪の髪を無造作にオールバックにしている。強面のひげ面で年齢は40代前半位だろう。獣の皮で出来た服には返り血なのか無数のシミができていた。腰からはキラキラした豪華な鞘に入った曲剣が見える。
アリシアは自警団の団長として、野盗の言葉に一切耳を貸さず凛とした姿勢と上からの態度を崩さない。
「命。命ねぇ・・・そんなものとっくに捨ててるわ!」
双方全く抜刀する気配はない。アリシアは戦わなければそれで良し、と思っているようで野盗も子分たち二人が荷物を運び終わるのを完了するまでの時間稼ぎができればいいと思っているのだろう。
「オレ達のほとんどが傭兵崩れの野盗でなぁ。金も命も大切だが戦いがない生活は死んだも同然なんだよぉ。」
側付きの二人もニタニタと笑みを浮かべているのが見える。
「そこの黒髪ならわかるよなぁ。おめえの戦い方からは騎士どもから感じる気持ちの悪い美学感じなかった。だいぶ殺しになれてるだろ?。」
アレクも野盗の質問に全く答えない。アリシア達もアレクの顔を見ることはない。
「まぁいい。つまりは戦うことには変わりねぇってことだ。そろそろ始めようじゃねぇか。」
右から、セバス、アレク、アリシアの順番で並ぶ。リズベルはアレクの一方城に立っている。この立ち位置はちょうどアレクが野盗達の首領の正面になる形だ。
野盗の首領が腰に下げた曲剣を抜刀する。きらびやかな鞘からは全く想像できないくらい素朴な刀身。しかし、その刀身には一切の刃こぼれも血の跡も存在しない。アレクの持つ鈍らの剣とは全く比べ物にならない。
「アリシア、セバス。側付きの二人を頼む。」
「さすがですね。では、お願いします。」
「一番強そうだけど、さすがだね。アレクさん。」
「あ、いや。そういう意味じゃなくて。」
アレクの言葉をアリシアとリズベルが間違った解釈をしてきたため急いで訂正する。もちろん、アレクには、野盗の首領を倒せるだけの自身も自負も実力も持ち合わせていない。
「側付きでも俺じゃ勝つのも難しいからで。アリシア達が瞬殺してくれるのが一番だけど、まぁ何とか耐えてみせるよ。」
それだけ言うとアレクは野盗達の方に一歩、歩みを進める。それに呼応するかのように野盗の三人も足を運ぶ。
セバスは、アレクに聞こえないようにアリシアに話しかける。
「アリシア様。出来る限り時間もかけて敵を倒してください。アレク殿の強さを確かめたいのです。」
「ですが・・・・。」
「もしもの時はすぐに助けに入りましょう。リズベル様もアレク殿のサポートを一番に考えてください。」「・・・。わかりました・・・。」
あまり乗り気ではないようだがアリシアも近くに歩いてきたリズベルも頷く。話が終わるとセバスはアレクに不審がられないように馬の歩みを進める。
「おぉ。黒髪ぃ。オレと殺ってくれるのかぁ?。」
「ああ。やってやるよ。」
内心全く余裕はなかったが、不思議と落ち着いている自分自身に驚く。アレクの前にいるのは野盗達の中でずば抜けているはずの首領。自分よりも数段格上の相手を前にしても意外と平常心を保っていられたのはおそらく、記憶を失う前のアレクからくるものなのだろう。
首領の一撃で殺される危険もある。しかし、アレクは落ち着いて腰から鈍らの剣を抜く。
「(頼むぜ。もう少し耐えてくれよ。)」
二、三回。しかも直接ではなく受け流すために野盗たちの攻撃を受けただけなのにその刀身にはところどころに刃こぼれが見て取れる。それでもこの剣がなければ命を落としていたことには違いない。愛着とも違うが頼りにはしている。剣を持つ右手に自然と力が入る。 アレクと首領との間は約15メートルの距離がある。アレクと首領が同時に走り出す。二人に呼応して糸が切れたかのように全員が走り出す。15メートルの間も互いに走れば一緒にして詰まる。一番初めに交わったのは当然というべきか、アレク達。身長がニメートルにも届く長身の首領の曲剣の横薙はアレクの剣では届かない半円をアレクの胴体と頭部を分ける形でなぞる。その曲剣の線を身体を捻りの力を合わせて下からハルマの持つ剣でパディする。渾身の一撃が空を切ったにもかかわらず流石と言うべきか大してバランスを崩さない。首領はアレクの剣を力ずくで押さえつけようとするがてこの原理を利用してアレクは少しの力で上手に受け流す。すかさず、持ちあげた右腕の下から魔導書を持った左手を突き出す。
「≪ファイヤ≫。」
炎の塊は首領の体に当たり全身を一度焼くがその炎は首領が強い一括と力強く腕を振るうことで掻き消える。ぼさぼさの金髪のライオン頭がアレクをにらみ仄かに笑みを浮かべる。
「効かんわぁ!。」
怒号と共に飛んできた左手の突きがアレクの腹部を捉える。
「うぐッ。」
体勢を崩せば即死の距離。腹の鈍い痛みをこらえつつアレクは体勢を崩さないように後方に大きく距離を取る。けれど、その距離は首領に一瞬にして詰められる。今度は上段からの兜割。アレクの着地を狙っての攻撃。しかし、アレクは剣の腹をつたわせ体の中心からずれていく。
「≪ファイヤ≫!。」
今度は先ほどとは違い腹部に力いっぱいに魔導書に押し当て魔法を唱える。アレクの体の中の魔力が魔導書をつたい力が収縮し爆散する。その爆風を利用しアレクは三メートル以上距離を取る。
「小賢しい。もっとせめて来いッ!。」
苛立ちを全く隠そうとしないライオン頭の首領が咆える。全く効いていないとは思いたくないものだが・・・。精神力がすごいのであろう。
「こんな鈍らじゃあんたの装備を貫けない。ちびちび時間と体力を削らしてもらうぞ。」
本来であればセバスとアリシアの戦闘状況をちらりとでも見たいのだが視線を外した瞬間に瞬殺されかねない。全神経を目の前の首領の一挙手一投足に集中する。
アレクの言葉に怒りを覚えた首領は怒りを覚えたようで、突進してくる。今までの戦い方から薄々感じてはいたもののこの野盗の首領の戦い方は先ほどの刀使いとは違い研鑽された技術ではなく天性の戦いの嗅覚と体格によって支えられているようで、その一撃は重いものの粗削りなものだ。しかし、その巨体からの一撃は確かな威力を持っている。こういうタイプは怒りに任せて突進させれば扱いやすいのだが厄介なことには変わりない。剣を持つ手に汗が滴る。早く助けに来てくれと願いつつも限界まで引き絞った神経をさらに張り詰める。次の次の一手まで読み切るために・・・。
「どらぁッ!!。」
アレクから見て左斜め上からの振り下ろし。野盗たちの首領が放つのは、ほとんど全てが次の行動を考えない本気の一撃。しかし、確かな威力を持つ上に天性の身体能力からくる未知の追撃も含まれている。
今までの攻撃も受け流すのに限界は近かったが、この一撃はおそらく受け流すことは鈍らな剣の刀身には負担が大きすぎる。
「・・・なら。」
と、分析を始めたアレクは、左手に持った魔導書を一度懐にしまい両手で首領の一撃を受け止める。刀身ではなく、握り手と刀身の間にある小さなつば。
大きな金属音を立てて剣が交わったのはつかの間、瞬時に拮抗させた力を抜いたアレクは首領の勢いも利用しつつ腹部に鈍らの剣で横払いに一撃を加える。
しかし、いや、当然というべきだろう。アレクの鈍らな剣では首領の着ている獣の皮をはいで作った鎧を貫くことは敵わず数本の毛を切り取るのが精一杯だった。
両者はもともとの立ち位置を交代させて再び向かい合い距離が出来る。
首領は、アレクの剣に助かったと安堵しつつ、一撃を貰ったことで激高していた気持ちを落ち着けるために。
アレクは、わかっていたことだが自分の一撃が通じなかったことに次の一手を考えるために
どうも片桐ハルマです。
今日まで週三回投稿できてよかったです。とりあえずは、今月は週三回投稿を続けられると思いますのでよろしくお願いします。
話の途中の後書きだと何を書いていいのか分からないのでこのくらいで終わりにしたいと思います。
最後まで読んでいただいた方に心からの感謝をまたお会いできることを願っております。では