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震災後の被害

 一方、時は少々遡り、この大陸に歴史というものが生まれてから初めての大震災が起こる少し前。アレク達に西の砦の防衛を任せ、王都バルムントに向かうアリシア達は、疾走する馬上で会話をしている。もちろん議題は、この提案を行ったアレクと言う黒髪の素性の分からない人物についてになってくる。それもそのはず、イグニアス王国の英雄サイアス・フェル・ルイーズにとっては、つい先ほどであった人物が、自身の君主を動かしているのだから。信じるにたる人物であるかどうかは重要な問題だからだ。


 「アリシア様。あの男の言う事を信用されるのですか?今からでも西の砦に向かうべきだと具申します。」

 「わたくしも同意見です。彼の信用性という事もありますが、ここで王都に戻る意味も薄いかと。」

 「・・・いえ、西の砦にはフェルヴィオもいます。信じましょう。それにあの伝令。気になる処は私にもあるんです。」


 タイミング。そんなモノは偶然で、人間が勝手に思い込んで策謀と勘違いすることは非常に多いことだ。しかし、それでもあり得るのではないかと、考え込んでしまうのが人間で、最悪の事態に行動できなかったことを後悔するものだ。その点、アリシアは恵まれているのかもしれない。信頼できる人物が多くそばにいてくれる。自分よりも優れた人間が、サポートしてくれる。そのことのありがたみを感じつつ、彼らを信用して、今、自身がやるべきことの集中できるのだから。

 それが、今は一刻も早く王都に変えることだ。アレクの不安が気になるという事もそうだし、ベルディア公国との同盟締結を姉であり女王であるメリンダに報告したかったからでもある。

 先頭にセバス、サイラス、スフィアの順番で馬を走らせる。馬の扱いに長けているセバスとサイラスの後ろにダンケルとアリシアを乗せることで、ほとんど速度は変わることなく片道三日はかかるベルディア公国からバルムントまでの道のりをもう半分は過ぎたかもしれない。

 何度か最小限に馬を休ませている間もサイアスとセバスは、アリシアに考えを変えるように提案してくるが、二人もあまり強くは言ってくることは無かった。

 その一番の理由は、西の砦にいる、アリシアの妹の騎士であるフェルヴィオが向かったという事が大きいのだろう。彼は、サイアスやセバスのように単騎で軍を相手どれるほどの強者ではない。しかし、彼には他のどの騎士にも行うことのできないモノを持っていた。


 爆裂魔法。


 高度な魔法技術を必要とする魔法で会得することが出来れば、半径数キロの範囲を灰燼きする事も可能なほどの魔法とも言われている。

実際に彼が会得してみて言った感想は、『そこまでの威力を期待されても困る』という内容であり、確かにそこまでの爆裂魔法を使用したことはみたことは無い。しかし、その魔法が、彼をサイラスたちと同格の怪物に引き上げるには十分な威力を有していたことも事実であった。

 その彼は、城塞の籠城戦においてほぼ無敵であった。

 だからこその安心感。そして、いくらアレクが信用できなかったとしてもその他に向かったフィルビアやピリア、リズベルなどの含めれば王都で何もなかった後に西の砦に向かったとしても陥落しているという事はまずないだろうと、考えているからでもあった。半日もかかることなく半分の道のりを駆け抜けたアリシア達の一行は、日暮れ前には、王都に近い城塞都市で休憩できるところにまで迫っていた。しかし、このまま日暮れまで馬を走らせてしまっては、馬が先に使い物にならなくなってしまう。

 なので、この城塞都市で朝を待ち、明日たてば昼前にはの元に行ける計算である。

 アリシア達は、この街の領主の好意を受ける形でいくつかの部屋を借り受け、休息に入ろうとしていた。

 その時、突如地面が大きく揺れ動く。

高貴なものが泊まるように用意されたその部屋には不必要とも思える装飾品が多く、部屋の中は大きく揺れ動いた。タンスや机はひっくり返り、石造りの壁には大きなヒビが走る。それだけには止まらず、天上からつるされたシャンデリアは、接続部分が千切れたのか、大きな音を立て床に落下する。はめ込み式の窓は、ヒビが入るように砕け散り、多くの不要な装飾物は、固定されていないモノから価値が無くなるほど粉々になっていた。

さらに、アレク達が山崩れに巻き込まれたように、街の被害はそれだけでは収まることは無い。レンガによって作られた家々は崩壊をはじめ、城塞都市を取り囲む堅牢な城塞にすら崩壊の波は向かう。昼下がりと言う時間帯だったことも起因し、街のあちこちでは火の手が回り始める。幸い、全ての城壁が崩れるようなことは無かったが、崩れた城壁の残骸は、内にも外にも大きな被害をもたらしていた。


 「アリシア様!ご無事ですか!」

 「ええ。問題ありませんそれよりも街の者達を!」


 流石、アリシアの騎士であるサイアスは、こんな非常事態にも動じることなくアリシアの部屋に一番乗りで駆け付けた。普段ならばアリシアがあげたことになっている白亜の鎧を身に纏っているのだが、そこまで準備する時間は惜しかったのか、服の上に必要最低限の装備を身に着けアリシアの部屋のドアの外で大きな声を上げる。

 アリシアが返答をしてもしなくても同様の行動をしただろうが、アリシアの返事を待って、部屋のドアを勢いよく開け放つ。

 アリシアも床に就く時間にはまだ早いため、いくつかの書物に目を通していた為、寝ている間に家具の下敷きになることは間逃れた。白いインナーの上から、ベルディア公国の街で購入したハイネックの淡い水色のセーター。白い、短パンに革製のベルトを着けそのベルトに自身の愛剣を装備する。


 「街の様子はセバス様が、城内はスフィアとダンケルに任せております。アリシア様も早く非難を!」

 「・・そうですか。私も市民の避難誘導に参加します。」

 「ハッ!お供いたします。」

 「お願いします。」


 アリシアも地震が起きてから長いこと硬直していたわけでは無い。普通の人に比べれば、幾分も早く事態の異常さを察知し、行動出来たと思っていた。しかし、優秀な自警団員たちはもっと早くに行動を起こしていたのか。と、仄かに嫉妬しつつもアリシアはサイアスを連れて街へと向かった。


 「・・・・こ、これは。」


 言葉を失いそうになった。

 多くの家屋が瓦礫の山を作り、街のいたるところでは火の手が上がっている。その炎は未だ大きくないが、時間の問題だろう。傷ついた民衆は、泣きながら家族や友人たちを探し回っている。こんな異常事態では城塞都市にいる兵士達は十分に機能しない。瓦礫の処理も避難も各自の判断で無法に行われていた。

 しかし、中には、正気を保っている勇敢な者もおり、助けを求める声にこたえようと動き、避難の指示を出しているが、いかんせんその絶対人数が少なすぎる。


 「サイアス。あなたは避難指示をお願いします。手があればがれきの処理を。」

 「ハッ!」


 こんな時にも絶対服従の膝をつく忠義の姿勢を取らなくてもいいのにと心底思う。


 「私は兵士達を集めてきます。人手は多いに越したことは無いですから。」


 一旦サイラスと別れ、アリシアはその場で動けなくなっているような兵士に声をかけ、正気が取り戻せそうなら随伴させ、無理そうであれば自力の批難を促した。


 「セバス、ダンケル!」

 「アリシア様!?サイアスはどうされたのですか?」

 「避難誘導に向かってもらってます。彼らの手も借りようと。」


 幸いにも街の兵士や男たちを束ね、避難や火の手を防いでいるセバスとダンケルに遭遇することが出来た。ここにいないスフィアは、場外にある臨時避難所の指揮をとっているとのことであった。

 その後、アリシア達自警団の指示の下、城塞都市内の兵士や勇敢な民衆が集い夜通し行われた避難誘導のかいがあって、多くの市民を救うことが出来た。しかし、それはすべてではない。崩壊と共に下敷きとなった人や炎の海の中に取り残されてしまったものなど、多くの死傷者を出してしまったことは語るまでもないだろう。


 「ありがとうございます、アリシア様。自警団のおかげで多くの市民を救うことが出来ました。この恩義に見合える忠義をイグニアス王国とその庇護下にある者たちの平和のため・・・。」


 毎回同じみの領主たちの長々としたお礼分を片耳で聞き流したのち、アリシアは、セバスたちのもとに駆け寄った。


 「当初の予定通り、王都へ向かいましょう。あそこには天馬騎士団もいますし、姉様もいるので大丈夫だとは思いますが・・・。」

 「不謹慎ですが、最悪の事態も考えなくてはなりませんね。急いだほうがいいでしょう。」


 メリンダは、アリシア以上に優秀な人間だ。この程度のことで動揺し、民の批難がこの街より進んでいないということは考えられない。しかし、セバスの言うように、万が一の事態も想定しなくてはならない。それは、メリンダの死である。そうなった場合は、天馬騎士団のエリダのことであれば、メリンダに変わりある程度の指揮を執ることも可能だろうが、民衆はそうではないだろう。光を失った者たちがどう動くは全く想像が出来ない。

 そうなった場合、彼らの光になれるのはリズベルかアリシア位のものだろう。だからこそ、今、アリシアが王都に向かうことは重要になってくる。

 それ以上に、王都の人口はこの城塞都市とは圧倒的に違い過ぎるので、そう言った心配も大きい。

 その後は、渋るようにアリシア達を送り出した領主に一度も振り返ることなく馬を走らせた。馬たちが無傷であったことは本当に幸いであったと言える。あの城塞都市までにかかった半分の時間で王都バルムントに戻ったアリシアは、おのれの目で捉えた光景を疑った。

 そこには、あの綺麗だった王都バルムントの姿は無かった。遠征に行く前、たった7日に満たない間留守にしただけにも拘らず、見る影のない瓦礫の山が王都バルムントの広場を満たしていた。

 しかし、アリシアはホッと胸をなでおろした。それは、広場にて指揮を執っているエリダの姿を見たからで、その後ろには王章が描かれたテントが張られていたからだ。そのテントへは、けが人の長蛇の列が出来ていることを見ると、神聖系の回復魔法を行なえるものがいることが推察できる。


 「姉さま!」

 「!?・・よかった。アリシア。無事だったのね。」


 そのテントに勢いよくアリシアが入っていくと想像通り、そこには傷ついた民たちの手を取り自ら回復魔法で癒しているメリンダ・イグニアス・フェニシオの姿があった。

 他にも何人かの神官やシスターが回復魔法を施している様子を見る限り、大体の救助が住んでいるように思える。

 続けて、そのテントの中にセバスとサイアスも入ってくる。恐らく、ダンケルとスフィアはそれぞれの家の方に向かったのだろう。


 「セバス。サイラス。ご苦労様でした。休息をとって下さい。・・・・」


 サバスたちにねぎらいの言葉をかけるとメリンダは何かを探すようにテントの入り口を見つめ辺りを見渡してから伏せるように目線を落とす。


 「リズベルは・・・いないのですね。」

 「ええ。でも、無事だと思うわ。王都からの伝令を受けて、今はフィルビアと一緒に西の要塞にいるの。アレクさんもフィルヴィオもいるようだし心配ないと思う・・・の。」


 確証は一切ない。

確かあの辺りは険しい山が連なっていて、その中に存在する狭い山道に西の要塞は存在する。あれほどの地震だ。下手をすれば山が崩れてそのまま・・・

 いやな想像をしてしまいアリシアは大きく首を振る。そんなはずはない、きっと大丈夫と信じるように


 「そうですか。では、朗報を待つとしましょう。」

 「そうね。・・・メリンダ様。」


 いきなりアリシアの声色としゃべり方が変化する。それは、妹であるアリシアから自警団団長としてのアリシアに変化したことをつげるものだ。

 それに反応するようにメリンダも家族に向けるような優しい笑顔から、王たる風格のある顔を作る。そして、テントの入り口で控えていたセバスとサイラスもその場にひざまづく。


 「ベルディア公国との同盟無事締結いたしました。今後、ベルディア公国側からの軍勢の危険性は低くなったと思われます。並びにボトムス王国からの侵攻時の協定の話も進める準備は整っております。」

 「ご苦労様でした、自警団団長アリシア。並びにサイラス。今日までの北方での警備の任を解きます。」

 「「はっ。」」


 二人は同時に返事をする

 これでようやく戦争の危険戦が低くなったと言えるだろう。いくらボトムス王国がイグニアス王国を毛嫌いしていたとしても大陸の中の二大大国が協定を結んでしまえば下手に手は出せない。メリンダが望み、アリシアが今までの生涯をかけてようやく結んだ協定。6年以上かかったが、それでも素晴らしい偉業と言えるだろう。


 「それで、王都からの伝令と言うのは?」

 「はい。西の砦にボトムス軍の影らしきものが現れたとういう情報が我々のもとに。その伝令を受け、リズベル、フィルビア、ピリア、アレクを含む6名が救援に向かいました。」

 「6名ですか?」

 「ベルディア公国に向かう途中、魔獣に襲われていた村よりセベとシャノンというものをアレクが自警団の候補として同行させております。」

 「まぁ。あの人もなかなかね。」


 と、メリンダは嬉しそうに笑いをこぼす。それに対し、自身も思うところがあるのかアリシアも嬉しそうだ。ここで、はぁ、と言うため息が聞こえたとすれば、ブレーキ役であるセバス一人だろう。


 「では、戻ってきた後、正式な自警団員としましょうか。村の方への支援は、セバス。お願いできますか?出来うる限り早急に。」

 「ハッ。」

 「それと、伝令のことですが、わたくしは看過しておりません。むしろ、あなた方からの伝令を受け、天馬騎士団を西の砦に派遣しました。後ほどエリダと共に確認を行ってください。」

 「畏まりました。」

 「本当にご苦労様でした。ゆくっり休んでください。王都の救助はあらかた終了したので、これから天馬騎士団を各都市に向かわせようと思います。サイアス。お願いできますか?」

 「御心のままに。」


 すると、メリンダは再び優しい笑顔に戻り、アリシアを抱きしめる。


 「本当に良かった。リズもきっと無事よね。」





 それから2日の時間が流れた。各地に派遣した天馬騎士団や各地からの情報が王都にいるメリンダのもとに続々と集まり始めていた。主要な都市だけで死傷者は10万に上り、小さな町や村に至るまでの情報が上がってくることは無いだろうう。

 幸いにもほとんど無傷の王城では、行き場を失った多くの住人を避難させており、そのメリンダの仕事場である書斎には、机の前で難しい顔をしているメリンダと、報告のためにやって来たエリダが話をしている。


 「かなりの被害が出てしまいましたね。戦争でなくこんなにも・・。」

 「メリンダ様。天災はどうする事も出来ません。この後、どうするかです。」

 「分かっています。エリダ。各院の連携を今まで以上に密に行ってください。特に衆議院の要望に応えられるよう取り計らって下さい。」 

 「畏まりました。」


 王様の書斎には今までで経験したことも無いくらいに高々と書類の山が積まれていた。いや、一度このくらいの山は経験していた。両親が急死し、メリンダが急遽王位を継いだ時もそうだった覚えがある。再び書斎の扉にノックの音が響く、外には一応警護役の兵士がいるので、ここに来れるものはそう多くない。


 「アリシアです。姉さま。」

 「どうぞ。」


 姉さま。という呼称を使ったという事は、自警団としてメリンダに上げるほどの情報は何もないという事だろうであれば、


 「リズの向かった西の砦についてなのですが・・・。」

 「やはり、王都から伝令は出してませんでいたね。もちろん、あなたたちからも・・・。帰って来たアンジュの話では、無事到着していたようですが、そうなるとやはり。」

 「私達自警団に任せて欲しいのだけれど・・。」


 アリシアの言葉が詰まったのは、ここに向かう前に言っていたアレクの言っていた懸念だ。メリンダの暗殺。普段であったとしても混乱は必至なのに、この震災の間にメリンダが殺されてしまったら、イグニアス王国は立て直すことは不可能に近い。それに加え、西の砦に向かう唯一の山道は、山崩れによって通行不可能と言う。これではリズベルたちを助けに行くどころか安否の確認すら取れない。

 様々な不安と嫌な想像が重なりアリシアの麓美な顔は苦悶の表情を浮かべる。


 「アリシア。そのことなのだけれど、今、信頼できる者に調べてもらっているわ。リズのことも、わたくしの暗殺についても。」

 「信頼できる者?」


 メリンダの信頼できるものについては幾人か心当たりはある。天馬騎士団の団長エリダ、副団長のアンジュ。メリンダの騎士であるセバスや自警団の面々。しかし、彼らは今、各地に派遣し復興の支援を行っているものが多い。今、王都にいるのはエリダかアリシア位のものだろう。そして、エリダは、天馬騎士団の統括にメリンダのサポート、各院のパイプ役の三役になっている。かくいうアリシアも王都復興の責任者で各地の自警団員の指示と情報の集積を行っているので多忙極まりない。寧ろ、メリンダの近しい存在で震災復興に従事していないものなど存在していない。で、あれば、貴族院や衆議院の誰か?いや、彼らも同様だろう。だとすると一体?

 その時、書斎の左側にある本棚の中にある一つの本が動いたような錯覚をアリシアは感じ取り、その本棚とメリンダの間に飛びいる。


 「誰か!」

 「アリシア。大丈夫よ。そこの本が動いたのなら。わたくしの協力者だから。」

 

 そういうとメリンダは、いったん書類を置くとその動いた本が刺さっている本棚の方に向かう。すると、何の迷いも無く一冊の本を手に取る。赤い表紙の本で、城下町で市販されている本。多くの歴史書や軍事、政治にまつわる難しい本が並んでいるこの書斎の中で異彩を放つと言えば異彩を放つジャンルの本。しかし、背表紙だけを見ていれば、違和感は全くないのもまた事実だった。

 その本を開くと紙きれのような物を取り出し、再び元あった場所に戻し、紙切れに書かれた文章を読みメリンダは、驚いた表情をする。その後、嬉しそうと言うより安堵の笑みをアリシアの方へと向ける。


 「アレクさんには感謝しないといけませんね。わたくしの命の恩人ですよ。」


 そういうとその紙きれをアリシアに渡してくれたのでアリシアもそこに書かれていた文章に目を落とす。そこには、筆やペンで書かれた文字とは少し違う雰囲気を持ち、片言の文章いくつか並んでいた。


 『カゲ、アリ。ショリ、スミ。』

 『ヤマ、コエ。セイ、アリ。』


 簡略化され過ぎていて何もない時に見たらほとんど文章の内容を把握できないだろう。しかし、今は、メリンダによって何を調べていたか分かっている。一つ目の文章は、暗殺者の影があったという事、2つ目の文章は、リズベルが無事に山を越え、生つまり命は無事であることが確認取れたという事だろう。


 「これは一体!?」

 「言ったでしょ?協力者がいるって。それにしてもアレクさんはどうやって・・・。」

 「このショリ、スミ。と言うのは・・。」

 「恐らく、暗殺の危険はひとまず無くなったってことでいいと思うわ。これで心置きなくリズのもとに行ってらっしゃい。」


 それは、つまりボトムス王国からの刺客を排除できるほどの腕を持っている人物なのだろう。どれほどの手練れが刺客として送り込まれたかは不明だが、一国の王を殺そうというのだ。それなりの人数と人員を用意していることだろう。だとすれば、メリンダの協力者と言うのは・・・・。

 様々な疑問がアリシアの中で浮かぶが、リズベルや西の砦に向かった面々が生きていることが分かったのであれば、次に行う行動は決まってくる。


 「一番近いのはサイラスだったわね。彼が帰ってきたら、二人で向かいなさい。最近、あまりうまくいってないのでしょう?」

 「姉さま。今は非常時です。そんな、私的なことを・・」

 「だからこそよ。非常時に言葉も無く信頼できる存在は必要な者よ。」


 メリンダにとってそれは、エリダであり、セバスであり、アリシアなのだろう。

 アリシアにとってもメリンダやフィルビアは、言葉も無く信じられる中である。もちろん、サイアスだって信用という面では、その域の人物であることには変わりはない。しかし、彼が、最強の英雄と呼ばれ、アリシアにつき従っていることが、重圧に感じ、彼との距離が幼少期の様に行かなくなりつつある。

 それを解消するにも今回の西の砦への遠征は打って付けであるメリンダ入っているのだろう。


 「わかりました。戻り次第向かいたいと思います。」

 「そうそう、ルシアちゃんの安否も確認しておいてって、エリダに言われてるのでした。そちらもお願いね。」


 あまり乗り気ではないが、そう言う事なら拒むわけにはいかない性格のアリシアは、メリンダの書斎を出ると、自室で西の砦に向かう準備を進め、実際に出発したのは、震災からなのか後の話であった。


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