アレク結婚します。
アレク達がオフィアに家に案内され一日が経過した。厳密には、昼過ぎにその家に案内され、翌日の朝には決定を話すためにオフィアがその家に訪れることになった。今回の決定を下したのは、司令官や大半の穏健派の予想通り族長ではなくその息子であった。理由は、直訴したのもあるが、鬼族との戦争にも関係があると話した司令官の言葉が、決め手となったと言えよう。なぜなら、鬼族との戦争の全権を次期族長である息子が持っているからだ。しかし、それは司令官も周知の成り行きでその方向に誘導したと言っても過言ではない。なぜならば。
「では、その王子と戦うことになるという事ですか?」
「ええ、そうよ。戦うと言ってもルールの存在する試合に近いわ。英雄戦と言ってね。三人の英雄同士を戦わせるエルフ族の伝統の決闘の方式よ。」
三英雄戦。その昔、エルフ族に現れた三人の英雄たちからそう名付けられた決闘の方式で、その名の通り三対三で試合を行う決闘の方式。先に2勝したチームが勝ちというシンプルな勝敗を競うものであるが、最近では、市民に対する見世物的な意味合いが強くなりつつある。
「この英雄戦でアレク達に勝ってもらう必要があるわ。なぜなら、この英雄戦では、死者が出ることもあり得るからよ。」
基本的な英雄戦に死亡に対するペナルティは存在しない。それは昔ながらのルールを変えることは出来ないとう言う理由と、見世物に死闘はふさわしくない、野蛮であるという近代の族長の方針をくみ暗黙の了解として殺さないからである。しかし、今回は、エルフ族の敵でもある人間。故に、誤って殺したとしても罪人を死刑に処したことと同義。むしろ、次期族長として、蛮族である人間を罰したとして拍がつくというものだ。
「それを見越して、司令官は名話を進めたんですか?」
「そうよ。噂に名高い自警団の団員ならエルフの三英雄にも勝てるってね。」
実際、外の情報など一切入ってこないエルフの里から出たことのないオフィアには、その自警団なる者がどの程度の実力を持っているのかは不明であるが、自身の上司であり、オフィア自身、エルフ最強であると思っている司令官が言うのであれば、人間の自警団の強さというのは確かなものなのだろう。それに、アレクが起こしたと言っていた、森での爆発の魔法の規模から考えてもかなりの実力を有していることは目に見えていた。
「でも、オレ達が勝ったとしてオフィアたちにそこまでメリットがあるんですか?」
「なによ、知ってるくせに。」
「は、はぁ・・・。」
オフィアたちの望みそれは、現在エルフの国と鬼族との戦争の抑止力とするべくイグニアス王国とのパイプ役になってもらうことだ。しかし、それは現状二言で返答することはアレク達には難しい。その理由の一つは、アレク達の立ち位置だ。アレクとシャノンは自警団員ではあるが、多くの自警団員のように王族に近い人間ではない。シャノンは一介の村人だし、アレクは、正体不明の異邦人だ。ルシアは、天馬騎士団の新米なので、ギルビアが唯一アリシアの乳姉妹という肩書を有している。けれどフィルビアであっても他国との同盟をアリシアなしで進めるだけの権限など当然、有していない訳であり
「そんなこと関係ないさ。ただ、その、アリシアって子にそんな話をされたそう話すだけでも私たち穏健派にとっては大きい一歩ってことさ。」
「ならいいですが・・。」
「さて、本題に入る前に、もうすぐあんた等に紹介したい子が来ることになってる。ちょっと待っててくれ。」
そういうと、朝早くからアレク達が借りているこの家に報告に来てくれたオフィアは大きく伸びをする。彼女は、事件のあった2日前の夜の森番からほぼ休みなくアレク達の問題と自身の森番の仕事をこなしている。20代後半の見た目に騙されていたが、本年齢は46歳で二人の子供もいるらしい。そんな忙しい中でも、アレク達のこともやっているのは、本当にアレク達が、戦争を現実化しないための最後の砦だからである。
オフィアといつの間にか仲が良くなったのか、フィルビアと談笑していると、この家の戸を叩く音が鳴る。そして、
「あ、あの。オフィアさんいいですか?」
透き通るようなかわいい声が戸の外から聞こえてくる。
「ああ、いいぞ。入りな。」
「失礼します。」
戸が開かれるとそこには、薄桃色の髪の絶世の美女が立っていた。
その女性のエルフを見ると同時にアレクは飛び上がり、近づくと完璧な姿勢の土下座を繰り出した。
「すまなかった。そんな、つもりがあったわけじゃないんだ!許してほしい!」
「え、あ、あの。」
「いや。謝ることも傷つけると分かってる。でも謝らせてくれ。」
薄桃色の髪を降ろしているエルフの女性―ターニャは、アレクの突然の行動に一歩後退する。
「アレクさん。何やってるの!怯えてるよ。」
「シャノン。謝らせてくれ。でないとオレは!」
「あ!あの!」
突然の大声にアレクを含め全員の視線が、ターニャに集中する。
そのまま、誰にでも聞こえるように大きな声で言うほど理性は仕事をしないことは無く、ターニャは、一度家の戸を閉めてから、近隣の家々に聞こえない程度の大声でアレク達に言い放つ。
「あ、あたし。アレクさんの求婚を受けようと思います!」
「「「え、えぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」」」
誰もが驚く中、最も驚いているのは、当然、求婚した本人アレク自身であることは語るまでもないだろう。




