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章間 メリンダ

 アレク達が王座の間から出た後、アリシア達もすぐに王座の間を後にした。

 向かったのは、本日、開催が予定されていた議会の開かれる会場。このためにセバスは早く帰ろうとしていた節もあった。

 元々、議会に飛び入りで発言をすることなどできない。

 下準備を進めて、議会に出席するすべての人が周知した事実のみを、議会で話さなければならない。そのため、今回の遠征の件や魔法陣の件も本来なら次の議会に回すのが普通である。しかし、イグニアス大王国の紋章を付けた騎士がいたというのは、かなり、由々しき事態と言える。物的証拠もこのために持ってきたのだ。


 会議場には数多くの人はいない。いるのは、貴族院から三人、衆議院から三人、そして、メリンダとエリダが国王側から出席する。

 衆議院は民衆から選ばれた数人議会で主に民からの要望を集約しこの議会で話す。主に、暴動や一揆、貴族への軋轢を無くすことを目的としている。

 貴族院は、領地を持つのでその領内での出来事や主な問題を国に教え、その後の方針の指示を仰ぐ。国家の財政を支えてくれている貴族たちの不満は、国の転覆につながりかねない。そして、国王であるメリンダは、上がって来た案件をそれぞれのものに対処させる指示を出すことをこの会議で行う。

 しかし、この会議はそこまで重要性は強くない。元々、騎士の称号を有していた貴族が大半を占めているため、そういった領地では、民の不満も無ければ、諍いも少ない。さらに、戦争もないため、民たちも安全に暮らしているので、ある不満といえば害虫や不作の時くらいなものだ。そのため、最近の議題は、メリンダがもってくる(自警団や天馬騎士団がもってくる)国境間でのボトムス王国からの野盗達の話題しか出てこないのだ。


 「それでメリンダ様。今回の遠征はうまくいきましたかな?」

 「ええ、ですがその前に皆様にお願したいことがあるのですがよろしいですか?」


 貴族院も衆議院もメリンダには絶対の信頼を持っている。ここで反論するものは一人としていない。


 「ありがとうございます。今回は自警団より取り急ぎ伝えたい案件があり、飛び入りの発言を許していただきたく思います。」

 「それは、それは。我が国の危機なのでしたら早急に他書せねばなりませんな。異論はありますか?」


 衆議院の代表が分かりやすく貴族院をけん制する。


 「もちろんありませんとも。では、アリシア様お願いします。」

 「ご配慮痛み入ります。では、早速ですがこちらをご覧ください。」


 そういうと同時にセバスが、森で発見した騎士の死体を会場のほぼ中心に置く。さすがに、ここにいるメンバーはしたいだけでは動揺はしない。しかし、


 「これは・・・。」


 話だけは聞いていたメリンダが一番早く反応する。そして、事の重大さに気付いたそれぞれの長たちにもざわめきは伝染する。


 「ここにあるのはつい先日、王都より南西にある街道沿いの森で発見したものです。もうお気づきの通り、我が国の紋章を付けた騎士のしたいです。」

 「男性ということは、天馬騎士団ではありませんね。」

 「はい。ですが、ご存知の通り自警団員は人数も少ないので私が把握している中にもこのような男性はいません。」


 つまりは、この国の戦うものの中にはこの死体と符合する人物は存在しないということだ。そうなってくると一番怪しいのは、自衛のための軍備の許される貴族院の私兵なのだが、


 「我々貴族もその家の家紋を付けるため、イグニアス王国の紋様は使いませんぞ。」


 何処の誰だかわかりやすくするために、貴族の私兵たちは、イグニアス王国の紋章ではなく、貴族ごとの家紋を鎧に刻む。故に、


 「他国の工作ですか・・・。」


 そう。軍を持たないはずのイグニアス王国が、騎士団を再び作った。という、証拠物件になり得るものだ。もしこの騎士が、他国にいたとしたら、国家間の緊張を揺るがしかねない問題になる。


 「ボトムス王国の仕業でしょうな・・・」


 貴族院の見解は的をついている。現状、イグニアス王国と戦争できるだけの国力を有しているのは、同じ大国であるボトムス王国かベルディア公国位なものだ。そのどちらかならば、圧倒的に前者である可能性が高い。


 「では、なぜ我が国の森なのでしょうか?」


 そう。もし、イグニアス王国と戦争をしたいボトムス王国の工作ならば、ここまで巧妙に作った騎士の死体をイグニアス王国の領内に置いたかという問題が浮上する。

 自国であれば戦争を仕掛けるための完璧な理由になり得た品をあっさり考える時間をくれたのだ。


 「その騎士の死体は、元々、死んでいたのかね?」


 衆議院の代表がアリシアに質問する。生きている騎士がアリシア達に襲い掛かって来たのか、死体のみが転がっていたのかも重要な問題だ。


 「いえ。完璧な確認は出来ていません。この死体を発見したのは、今回の遠征時に新しく仲間に加わったアレクという少年とリズが発見したものです。」


 再び会場内にどよめきが走る。新たに仲間が増えたことはそれほど問題ではない。しかし、信憑性に非常に大きく関わってくる問題だ。そして、この場にいない事も。


 「さらに、そのアレクのみが観測したのですが、森一帯の空を覆いつくすほどの規模の魔法陣も観測しています。」

 「そのアレクという少年が、工作員という可能性が高いのでは?」

 「それは、ありません。」


 衆議院の指摘にアリシアが即答する。

 確かな確証があるわけではない。その可能性だってアリシア自身も考えた。しかし、少ない時間共に行動して分かった、アレクは、自分に害をもたらす存在ではない事に。あの、市街地でのこと、帰り道での表情や過ごし方。すべてがアレクの計算で行い騙していたとするなら、仕方がないと思えるほどにアレクは善人である確信がある。


 「・・・・。」


 アリシアの人を見る目は国中が周知のものだ。さらに、メリンダも直接会い、悪意がないと判断したという。そうなってしまえば、危険視はするものの、これ以上疑うことは厳しくなる。


 「では、簡単なものから行きませんか?」


 メリンダの提案に一同が賛成する。


 「ではまず。魔法陣についてなのですが・・・。」


  以前も説明したが、召喚の魔法陣には召喚するものと同等の魔力を媒介とした魔法陣が形成される。であるならば、この騎士、その前の黒い怪物は、空を覆いつくすほどの物か、もしくは遥か遠い場所から送られてきたと考える。前者は、人ひとりにはありえないため魔法陣の規模は距離から大きくなったと結論が出た。


 「であれば、ボトムス王国。いえ、このバルダーム大陸外の可能性が十分考えられますね。」

 「この騎士が、サイアス殿クラスの実力がなければですな。」


 サイアス。本名、サイアス・フィル・ルイーズ。この国最強の騎士で人類最強という声も出ている。一騎当千では収まらないほどの強者であり規格外の化け物だ。本人の実力もすごいのだが、その強さは聖槍グングニルに依存している。本来なら王家に継承されるはずの国宝のグングニルに選ばれた、この時代の大英雄の一人だ。そのクラスの人間を転移させるには、それ相応の莫大な魔力は必要となるだろう。


 「ですが、そうなるとこの者を殺したものはそれ以上の強者となりますぞ?」


 さらに言うのであれば、魔法陣は二つ存在したのだ。黒い化け物はサイラスクラスの怪物で、それを殺せる本物の怪物はまだ生きてこの国にいるということになる。


 「話を戻しましょう。現実的にアレク殿が観測した魔法陣を形成できるかどうかについてですが・・・。」

 「不可能ではないだろう。一人で作ったのではなく、複数人が同量の魔力を消費すれば、同色の魔法陣は二つ形成できる。」


 しかし、それでは、実際はタイムラグが発生するものだ。しかし、しかし、しかし・・・・。



 今回の議会も決定的な結論は出ることなく閉会した。


 「やはり、アレク殿の見間違いなのでしょうか・・・。」


 議会会場から出てセバスが呟く。セバスだってアレクのことは、他の代表たち以上は、信頼はある。しかし、アレクが観測したものは荒唐無稽の話に感じてならない。空を覆いつくすというのも個人的主幹が強い可能性もある。


 「楽観視することは簡単です。最悪の事態に泣きを見ることになりますけどね。」


 セバスのつぶやきにメリンダが辛辣な返答で返す。いいように考えれば今だけは、平静を保てるだろう。しかし、もしもの時に、何もできなくなってしまう。そこで痛い目を見るのは自分自身だ。だからこそ、最善を尽くす必要がある。


 「アリシア。これからもアレクさんの事、頼みましたよ。」

 「はい。姉さま。記憶の件も含めて善処します。」

 「ええ。よろしくね。」


 二人はアレクを全く疑っていない様子で話を進めていく。だからこそ自分がしっかりせねばとセバスは強く思う。


 「そうだ。アリシアに一ついい報告よ。次の議会で言う予定の事なんだけど、私の今回の遠征の件ね。」


 今回、メリンダが遠征することもあって野盗討伐に天馬騎士団ではなくアリシア達自警団が、急いで向かわなくてはならなくなったのだ。緊急の要請の割には被害がなかったのは、本当に運がよかったといえるだろう。


 「・・・本当!?」


 メリンダの耳打ちの後、アリシアが声を裏返して叫ぶ。


 「まだ内緒よ。でも、今度、アリシア達にも会いたいって言っているから、数日中に向かってほしいのだけどいいかしら?」

 「ええ。すぐ行きます。」

 「ふふっ。焦る気持ちも分かるけど、体も大切にしなさいよ。」



 早くみんなに伝えないと。と、議会での暗い雰囲気から一転、笑顔になったアリシアは、メリンダに笑顔でを開かれてから、自警団の兵舎に向けて走り出す。


どうも片桐ハルマです。

 今回はアレクが模擬戦をしている間のアリシア回の話です。

 メリンダの今回の遠征は、北にあるベルディア公国へ向かい、アリシアが以前から行おうとしていた同盟の締結に向けた大きな一歩を進めていました。

 そして、自警団というよりこれからアリシア自身が向かうことでようやく同盟が締結する運びになるようです。

 少し書き足りない感がある話になってしまったのですが、読んでくれれば幸いです。

では、またお会いできることを心よりお待ちしております。

では


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