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模擬戦 2


 アレクとルシアは互いに向かい合って演習場の中にある決闘場のような場所に立つ。互いの距離は、およそ10メートル。同時に走り出せば、一秒で簡単に詰まってしまうほどの距離なのだが、槍を持っている、ルシアにはさらにアドバンテージのある距離。

 およそニメートル強のリーチを持つ槍。アレクの持つ刀身80センチくらいの木剣では、明かに不利な距離でもあった。


 「では、ルールを決めましょうか。三本先取。寸止め。それでいいですか?」

 「間違って当てちゃったら?」

 「その時は、中断してリズベル様の力を借りることにしましょう。それから、仕切り直しということで。」

 「了解。それでいこうか。」

 「この距離でいいんですか?」


 ルシアにとってはかなり有利すぎるため少し気が引けてくる。もう少し距離を取ればアレクにも何か策があるだろうが、この距離では本当に一瞬で詰まってしまうため、アレクが何もする間もなく決着がつてしまう。

甘く見られることは仕方ない。と、ルシア自身も理解しているため、初めて戦う相手にはちゃんと確認を取るようにしている。


 「ああ。問題ないよ。」

 「・・・そうですか。」


 しかい、往々にしてルシアの真意が相手に伝わることは無い。

 そのため、初戦は本気の攻撃ではなく、手加減をしながら徐々に合わせていくようにしている。しかし、今回は少し状況が違う。なぜなら目の前にいるのは、アリシアと同等の剣士。そして、先程、副団長のアンジュが叫んでいたことが正しいのなら、古の大英雄と同じ魔剣士だ。初めから本気を出さない理由が思いつかない。

 ルシアは、腰を落とし、両足を開き、重心を下に構える。槍の先端を地面に近づけ、尻の部分を持ち上げる。

 自身の持つ最高の突進技を出すための構え。幼いころから続けてきた、槍術の師範代にまで選ばれた実力を遺憾なく発揮するための構え。

 だが、目の前にいるアレクは一向に構えようとしない。ルシアが少し待ってみても右手に持った木剣の刃先を地面に向けて垂らして持った、ほぼ棒立ち状態から動こうとしないのだ。


 「誰か合図してくれるのか?」

 「いえ。模擬戦といっても合図はないです。お互いに準備が出来たらもう始まっています。」


 アレクの方もなかなか始まらないことに疑問を持ったのか、ルシアに話しかけてくる。まじめなルシアはその問いに答える間も構えは崩さない。


 「それよりも構えてください。そうでないと始められません。」

  

 再び、両者の間に沈黙の時間が流れる。痺れを切らしたルシアは、アレクに話しかける。


 「?。ああ、悪い。こっちはもう準備OKだ。いつでもいいぞ。」


 と、垂らしていた剣をくるくる回しながら答える。

 ここまで舐められるのは最近ではない事だ。天馬騎士団に入りたての頃は、こういった対応をされることも多かったが、ルシアの実力が知れ渡り始めた最近では、このようなことも無くなってきている。


 「そうですか。では、行きます。」


 ということは、アレクの戦い方は基本、カウンター重視の戦いであるとルシアは分析する。今まで構えていたルシに距離を詰めなかったこと、そして、今も構えを変えないところを見ると、突進攻撃の意思はアレクから感じることは出来ない。

 一度大きく深呼吸をする。もちろん、大きくは出来ないので、アレクには気付かれないような大きさで体の中の空気を抜き、取り込む。そして、


 「ッシ。」


 一気に吐き出すとともに体全体をばねにして突進を繰り出す。

 ルシアの槍術は、呼吸法も取り入れたもので、体全体の筋肉を効率よく動かし、連動させることで見た目以上の力を生み出す。

 ほとんどの人が初見でなくても見切ることなど不可能な突進技。ルシアの流派の奥義でも何でもないただの突進技なのだが、ルシアが使うことにより、必勝必殺の一撃に変わる。

 10メートル近くあった両者の距離もルシアの見解通り一瞬にして縮まる。ルシアは、持っている槍を突き立て、アレクの胸にめがけて突き出す。

 これでまず一本。自信はある。寸止めのつもりで多少手加減しているものの確実に、一本もぎ取ることが出来る。


 「・・・。うそ。」


 目の前で起きた光景にアンジュは思わず言葉が漏れる。

 ルシアが、初手に出したのは天馬騎士団でも防ぐことが出来るのは、団長であるエリダくらいしかいない突進技。しかも、その攻撃が来るとわかった状態での話であって、初見のときはあっけなく胸元に矛先を突き付けられた一撃。この国にいる、数多くの手練れと同格の座に、ルシアが上がることのできる必勝必殺の一撃だ。


 「・・・。信じられない。」


 しかし、目の前で起きたのは今まで見ることのなかった光景。ルシアの放った突進からの一突きは、身をひるがえしたアレクによってあっさり躱されてしまったのだ。


 「さすがアレクさん。あれを躱したの、サイアスさん以来、初めての事じゃない?」


 サイアスというのはこの国いる最強の騎士の男の名前だ。その称号にふさわしく、この大陸以外の国にまでその名が知れ渡るほどに強者である。実際、ルシアの一撃も初見であっさり躱してしまったのも事実だ。

 であるならば、このアレクという少年もそのクラスの強者であるということなのか?アンジュは、思考を巡らそうとしている間も状況は刻一刻と変化していく。





 一撃を躱されたことは完全に想定外の出来事だった。しかし、アレクからの追撃がない以上、まだ決着はついていない。この一撃を躱された後の追撃もしっかり想定して毎日訓練しているのだ。


 「ッハ。」


 ルシアは突き上げた槍を、再び呼吸に合わせて体全体に力を入れることで、その勢いも含め時計回りの回転へと動きを変える。そして、ルシアから見て左斜め下からの振り上げへと攻撃を変換する。しかし、その連撃ですら見切られたのか、読まれたのかは定かではないが、右手だけで持った木剣で上から地面に叩きつけられる。槍の先端は地面に突き刺さり、力を込めても動かない。

 そして、アレクは何も持っていないは左手をルシアの腹部に当てる。白を基調とした服の下にある、締まった体がアレクの左手に伝わることで、無意識のうちに魔法を使うために魔導書を突き出そうとしていることにアレクは気付く。しかし、魔導書は、この模擬戦が始まる直前に預けているため、突き出した左手には何も持っていない。

 自分が魔導書を持っていない事に気付かず突き出してしまった左手を引っ込め、アレクは後方に距離を取る。その行動に呼応するかのようにルシアもいったん大きく距離を取るために後方に退避する。


 「悪い。ちょっと無意識だった。剣だけの戦いなんだよな。仕切り直しといこう。」


 再びアレクは、剣を片手で持ちほとんど棒立ちのような先程と同じ姿勢を取る。

 ルシアも無言であるが、それに同意したのか、先程、完全によけられた突進の構えを取る。

 もう一度呼吸を整えて大きく深呼吸する。一度目も完全に見切られた手を使うほどルシアは、負けず嫌いのバカではない。これは模擬戦。しかし、ルシアが望むのは、実践と同じような緊張感のある戦いだ。

 

 「(今、本当なら死んでいた。)」


 対峙しているのは元々魔剣士であるアレクだ。基本的な攻撃は、剣と魔法からなる変幻自在な戦い方。剣で相手の動きを制限し、0距離で確実な魔法による一撃を食らっているはずだった。

 敗北した。しかも、たった一手しか出さないうちに。その事実は、ルシアの中に残っている。だから、


 「ッフ。」


 再びの、今しがた必勝必殺ではなくなってしまった突進技。10メートル以上あった先程よりも遠い距離も一瞬にして詰め寄る。そして、同様にアレクの胸元に一撃を加える。当然のようにアレクはその一撃を先程と同じように体を翻して躱してみせる。しかし、


 「ハッ。」


 先程と同じ手は使わない。今度は解けられることを前提にした一撃。先程のように、完全に移ってしまった重心をずらす事による、追撃ではなく。重心を残し、体の自由が利く追撃へ。

 躱された後、瞬時に足を置き換え、重心を落とし、アレクの顔の横を通り抜けた槍をアレクにめがけて振り下ろす。しかし、


 「なッ。」


 その一撃はルシアには想像できない一手によってアレクの体には届かない。それは、ルシアが一度も命がかかった実戦を経験していないからで。ルシアが一度も寸止めや初手終了の模擬戦以外をやらなかったから想像できなかった一手。

 

 ルシアの振り下ろした槍は、アレクが自身の左腕を槍の柄に勢いよく当てられたことによってその動きを止め、その瞬間、ルシアの右側腹部にアレクの持つ木剣が突き立てられていた。




 槍は基本的には、刺突攻撃や投擲による攻撃を目的の武器である。強みは、圧倒的なリーチで片手剣のようなもので戦う者にはかなりの実力差がなければ勝つことは難しい。しかし、その長いリーチ全てが攻撃範囲という訳ではない。殺傷能力を持つ刃は、先端にしかついておらず、それ以外の部分はただの棒だ。それも状況に合わせて持ち替えたり、普通に打撃目的で相手に当てても効力は発揮する。だが、アレクのように、打撃覚悟で柄の部分に腕を打ち付けられてしまうと、効果的な一撃を相手に与えることもできず、こちらの攻撃は止まってしまう。


 二人はしばらく動かなかったが、先にアレクがルシアの側腹部に突き付けていた木剣を引くことで緊張の糸は切れる。


 「何度も悪いな。寸止めだったのにこれはルール違反だよな。そっちの一本でいいぞ。」


 そういうとアレクは、打ち付けた左腕をふって痛がっているようだ。

 ルシアは放心で動くことが出来なかった。左腕によるパディイは、アレクの寸止めの上ではルール違反。それは間違えない。模擬戦に使用するのが、槍に見立てた棒である以上、殺傷能力は打撃武器と同程度しかない。故に、暗黙の了解で寸止めや初撃決着の模擬戦では、どこかに一手加わった時点で一本になる。しかし、これは先ほどと同じ考えがルシアの中に回る。アレクが打ち付けたのは、突進時ルシアが握っていた場所。つまりは、確実に刃がない場所。そして、腹部への寸止めの一手。これが互いに寸止めであれば、急所を取っているアレクが勝利しているはずだ。


 「(二度死んでいる。この短い間に。)」


 ここで、アレクにちゃんとした結果を伝えるのは簡単だしかし、


 「(どうせならもっと見てみたい)」


 実力の差は明確だ。三本勝負の模擬戦で次に試合、今回と同じようにルシアが勝利することはありえない。確実にアレクが勝利する。そうなった場合、二本とられて三戦目を迎えることは出来ない。

 最後の一本までアレクの戦い方を知りたい。実践的なその戦い方を。


 「じゃあ、二本目といこうぜ。」


 最初の立ち位置と全く同じ10メートルの間合い。


 「はい。お願いします。」


 もうルシアとアレクは対等ではない。ルシアの中ではすでにアレクの位置づけは、教わるべき師匠になっている。ルシアも最初の立ち位置に戻ると、礼儀正しく一礼する。





 再び向き合う両者。周りで見る者も何も言うことなくその模擬戦を見つめる。

 先程までの棒立ちのような構えではなく、アレクは両足を広げ重心を落とし、木剣を腰の高さまで持ち上げる。右足の先は体と同方向を向き、前にある左足は一直線にルシアに向けられる。

 先程とは打って変わって突進の意図をアレクからルシアは読み取る。そのため今度はルシアが、先程のアレクにならってカウンターを狙った構えを取る。重心を低い位置に固定したまま、背筋を伸ばし。矛先は地面に対して斜めに向けた状態で脱力している。アレクに対して半身で構え、アレクの出す情報を一つも見逃さないように注視する。

 先に動き出したのは当然、アレクの方だった。後ろに構えていた右足を強く踏み出し走り出す。両手を後ろに伸ばしたその走り方、まるで忍者のような走り方でルシアに迫る。ルシアは、一度は横からの薙払いで迎撃しようとするも、間に合わないと判断し刺突攻撃をする構えを取る。


 戦いとは常に先の読み合いと先手の取り合いだ。突進攻撃をしているアレクは先手を取っているようにも見えるが、カウンターを狙っている者に対しては悪手である。思考を行動に移すのには幾つかのプロセスがある。行動を一度停止しなければならないアレクはルシアより一手多く行動しなければならない。

 戦いで勝つためには、相手の行動を完全に読み切り先手を取り続けるか、加速し続ける後出しじゃんけんをし続ける、体力と思考力が必要になる。


 再び、ルシアは呼吸を整え、アレクの一撃に備える。こんなにも後手に回ったのは、本当に久しぶりの事だ。自警団の団員が相手をしてくれる時も、天馬騎士団を相手するときも、もう少し対等な読み合いが出来て来た。もちろん、アレクとの戦闘が初めてであることが、理由の一つではあるのだが、それはアレクにも同様の話である。

 互いの距離はほんの一瞬で交わる。互いの得物が届く距離へ。


 「フー。」


 一度息を吐き、もう一度吸う。負けることは分かっている。場数の違い。命を懸けている数の違い。アレクという少年にルシアはまだ勝つことは出来ないだろう。だが、いずれはその高みへ。


 「ハッ。」


 呼吸で全身の筋肉を連動させた渾身の突き。あの速度で走ってきているのだ。先程のようには簡単に躱せない。もう、ルシアの頭の中に寸止めの意識は完全になくなっていた。アレクであればどうにかしてこの突きも当たることなく乗り切る。そう信じて。

 頭部に向けて放たれた突きは完全にアレクの脳天を捉える。


 しかし、アレクは顔を少しそらすだけの最小限の動きでルシアの突きを躱す。


 もう、読みではない。付き攻撃を読み切ったとしても、こんな風には躱せない。つまり、見えているのだ。アレクにはあの速度の突きが、そして、ルシアの思惑が。

 

 ルシアの突きを躱しアレクは、ルシアの腹部に横切りの寸止めを当てる。




 「勝っちゃった・・・。」


 先程とは違いアレクの完璧な勝利。この国の天才騎士ですら、アレクの半分にも満たない実力に劣っているということだ。魔剣士であるアレクが剣だけで戦ったにもかかわらずルシアはたった一手で腹部に木剣を突き付けられている。

 もちろん、リズベル自身もアレクが勝つと思っていた。自国の騎士ではあるが、ルシアは知らない人だった。実力が分からないうちは、知ってる方が勝つと思うのが普通だろう。だからこそ、フィルビアとアンジュは驚きを隠せなかった。

 ルシアは強い。確かにこの国にはルシア以上の強者は沢山いる。フィルビアやアリシアだってルシアに勝つことは可能だしそういった意味では、ルシアはそこまで強者ではないのかもしれない。だが、決して簡単に勝てる騎士ではない。

 だからこそ、こんなにあっさりルシアが敗北することは想像していなかった。


 「こんなに簡単に・・・。」

 「さすがは、大英雄ってこと。」


 不安そうなアンジュに対しフィルビアはどこか楽しそうだ。

 フィルビアは貴族の出身だ。幼い頃から様々な教育を受けて来た。裁縫や料理、槍術もそのうちの一つで、貴族として必要な立ち振る舞いに品位を持たせるために両親が勧めてくれた。そして、天馬騎士団からスカウトが来るほどの使い手にまで成長した。だが、アリシアのために自警団に入ることを伝えたときは、両親も驚いていたが、笑顔で受け入れてくれた。そこからだった。フィルビア自身も気付かなかった武人としての自分がいることに。

 アリシアにセバス、サイアスといった強者の存在を知るたびに、いつか対等になりたい。そう思うようになっていったのだ。

 だからこそ、自分が目をかけていた後輩が負けたとしても、ドキドキが上回ってしまう。


 「楽しみだね。今後の彼の活躍。」


 




 「最後の一戦、お願いします。」

 「ああ。そうするか。」


 何も言葉を交わすことなく密着状態から再び10メートルくらいの間合いで二人は正対する。

 周りをよく見てみると、リズベルたち以外にも見物客が出来ていることが分かる。現状この場の責任者である副団長がここにいて、天馬騎士団一の天才騎士が模擬戦をしているのだ。一度は見たいと思う気持ちは止められない。

 ほとんどの人が、先程の試合が終わったくらいから、来たため戦績が一対一という、数字上では、同格であることしか分かっていない。だからこそ、最後の一戦への期待が高まる。


 ルシアの構えに変化が生まれる。今までのように何かに特化し、何かに対しては弱い構えではなく、多くの流派で最初に習う基本の構え。両足を前後に小さく開き、相手に対して斜めに立ち、槍先はしっかりと相手を捉える。攻守に優れているが攻守ともに特化していない構え。言い換えれば全く隙のない構えに。

 ルシアの変化に対してアレクも今まで一度も見せたことのない構えをする。剣を身体の前方で構え、右足を少しだけ前に出した立ち方。


 「行きます。」

 「来い。」


 何かの合図があったかのように、二人は同時に走り始める。数歩で両者は交錯しルシアの左側からの横薙をアレクが剣を使って阻止する。

 コンッ。という木製のもの同士が当たる良い音が鳴った直後、ルシアは槍の尻部分をアレクの木剣を基点として大きく回し右からの殴打にかかる。完全に死角からの一撃であったにもかかわらずアレクは、その攻撃を難なくよける。

 その後は何度か互いの攻撃は相手に届くことなく打ち合いが始まる。ルシアは、アレクの放つ攻撃を何とか弾きつつ反撃を試み。アレクは躱せるものは躱し、パディイからのカウンター重視の戦い方で。

一度、距離が生まれルシアは大きく突きを放つ。その攻撃を剣で受け流しながらアレクはルシアの方に左手を掛けると、勢いよく左足でルシアの内足である右足を払う。

 前方に進み続けようとする慣性の法則が働いていたルシアの体は、急に支えを失うことで、バク宙をするように体が浮く。しかしルシアは、持ち前の運動神経で右手を地面について何とか宙返りをし、体の捻りも加えることでアレクから大きく距離を取る。


 「すごいな。そんなことできるのか。」


 アレクが余裕そうにルシアのバク転を見ている。

大体、10メートル以上に距離を取ることに成功したが、この距離は、ルシアにとって必ずしもいい距離ではなくなっている。アレクへの突進も、アレクからの突進も現状、対策はまるでない。


 「ハァ・・・ハァ・・・。」


 今日はやけに呼吸が乱れる。こんな短時間の戦闘で体力を使い切るようなやわな鍛え方はしていないはずだが。これが、実践の、アレクの放つプレッシャーなのかもしれない。

 ついた右手の手首が痛む。無理な体勢から全体重を反発させたのだから、このくらいで済んだのは御の字かもしれない。

 もう一度息を吸い、呼吸を整える。ルシアの戦いにはこの呼吸法が不可欠だ。筋力はそこそこあるのだが、大きさよりも連動性を重視しているため、大きな筋肉もそこまで発達していない。見た目以上の意外性。それがルシアの強みでもある。


 「ふー。」


 体力的にはまだ余裕があったように感じていたが、呼吸を整えるのに時間がかかって来た。実際の戦いでは、こんなに相手は待ってくれない事を考えると、次の一手を最後にしなければならない。

 全神経を槍とアレクに向ける。勝てない事は分かっていても、負ける気は全くない。





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