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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
六章 死人に口なし
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誕生日会・質

―大広間 夜―

「恥ずかしい……」

『何を恥ずかしがる必要があるの? もうめっちゃ楽しみだわ! 描く日いつぐらいだったらいいのかな?』

「それは色々と相談してみないと分からないです……はい」


 何かと理由をつけて断れるのであれば、今からでも断りたい。口約束なんて見えないもの、破ってもいいんじゃないかと思ってしまう。

 でも、この人の場合は母上と仲がいいみたいだし、そんなことは絶対に許されないだろう。


『あー楽しみ! 圧力沢山かけて待ってるわねぇ! 以上!』


 パン、とシャーロットさんが手を叩く。


「はい。えっと……よし、私ですよね。私」


 先ほど自分が何者であるか分からなくなる、そう言っていた。その言葉通り、自信なさそうに首を傾げ僕に問いかけてきている。これが演技でないのなら、控えめに言って異常事態なのではないだろうか。


「智さんですよ。えっと、シャーロットさんからのお話は以上ですよね?」

「じゃあ、私? いや、僕? ん? あぁ? えっと、ん? あれ?」

「★◎♡▲◇×!」


 シャーロットさんは、何を言ったのか僕には当然理解出来なかったが、その言葉は智さんを落ち着かせる言葉だったようだ。


「あ! そうでした、私は先生の弟子です!」


 彼は、万歳と高らかに両手を上げた。 


「◇▲◎……」


 シャーロットさんは、小さくため息を着くと近くにあった席へと座り、お酒を飲み始めた。この光景を見ると、未成年がお酒を飲んでいるようにしか見えないが、彼女は中年の女性である。

 ただ、未成年であっても中年であっても違和感を感じるのは、その白髪だろう。しかし、よく見れば眉毛などは金色であるから染めているのでは、と感じた。


(でも、一体何で白に染めているんだろう?)


 僕が彼女の髪を眺めていると、突然頭に響くようなキーンと音がした。


「たぁぁあああつぅぅぅみぃぃぃ! どこにいるのよぉぉぉぉ!」


 その音の後すぐに、聞き慣れた声がした。例によって無感情である為、マイクを通して言われると大根役者みたいだ。

 周囲の人々はクスクスと笑ったり、困惑の表情を浮かべ舞台上を見ている。

 舞台上に誰がいるかなんて、とっくに予想出来ていたが一応舞台の方を確認した。すると、そこには顔を真っ赤にしながら、暴れ回っている美月がいた。男性の使用人達が必死に抑え込んでいるが、中々厳しそうである。


(完全に酔ってるな……ああなると手がつけられなくなる。使用人達に余計な仕事をさせたくないし、僕が美月のとこに行けば解決するかな)


「すみません、姉があの様子なので少と止めてきます」


 隣で楽しそうに笑う智さんにそう言った。


「ハハハ、愉快なご家族ですね! また今度! 先生も!」


 お酒を飲みながら、美月に釘付けになっていたシャーロットさんに智さんは話し掛ける。一瞬、明らかに嫌そうな表情を浮かべたがすぐに気付いたらしく、彼女はお酒を飲むのを一時中断した。


「サヨナラ~」


 拙い日本語で、彼女は僕に笑顔を送り手を振った。それが少し僕には可愛らしく見えて、思わず笑ってしまった。

 そして、彼女に手を振り返して、美月が暴れ待つ舞台へと向かった。

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