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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
六章 死人に口なし
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誕生日会・伍

―大広間 夜―

 壁に向かい、気が付けば夢中になって食べていた。肉はあっという間になくなってしまった。だが、ひさしぶりの満腹感を得ることが出来た。

 手を見ると、ほんのり赤くなってしまっている。


(まずいな……口の周りもついているかもしれない)


 僕は、慌てて手拭いを取り出す。皮膚が剥がれそうなくらい強く拭いてみると、案の定赤く汚れていた。これだけ強く拭いたのだから、そこの部分は完全に取れただろうか。


(危うく恥ずかしい姿を晒してしまう所だった……あ、そういえばゴンザレスに聞かなければいけないことがあるんだった。もう、近くにはいないか?)


 周囲を見渡すも、ゴンザレスの姿はこの位置からでは見えない。もう奥の方にでも行ってしまったのかもしれない。


(仕方ない……しらみ潰しに探すか)


 僕は、人混みの中へと入る。満腹になった為か臭いもそんなには気にならなくなった。

 

(探してる時って大体見つからないんだよな……別に何の用もない時に限ってほいほい現れるのに)

 

 ホールの奥まで来てはみたが、やはりゴンザレスの姿は見当たらない。舞台上も一応確認してみるが、そこでは芸者達が舞を披露していた。

 流石に、舞台上にはいないだろう。入って行ったら、怒号が聞こえそうなものだ。


(もうここにはいないとかか? でもさっき何か食べるって言ってたし、まだいるような気もするんだけどな……)


「ハイ!」


 腕を組んで悩んでいると、どこからか何者かの声が聞こえた気がした。しかし、左右を見ても誰もいない。後ろを振り向いてみても誰もいない。


「あれ? 誰か僕に話し掛けたような気がしたんだけど……気のせいかな?」

「〇▽×◆×▲※!!」


 そのどこかで聞いた記憶のあるようなないような言葉が聞こえた途端、両足にずっしりとした感覚があった。下を向いて確認すると、白髪の背の小さい少女が僕の足に抱き着いていた。


「え!? 何!? 誰!?」

「〇◆×!」

「は!?」


(駄目だ、何言ってるか全然分からない……もしかしてこれは英語……!?)


 そう考えた瞬間、僕の全身から血の気が引いてく感じがした。それと同時に過去の恐怖が蘇る。


「◆×〇@」


(と、とりあえず一回ちゃんと耳を澄まして聞いてみよう、もしかしたら分かるかもしれない。可能性は絶望的だけど)


「◆▲×★◎」


(駄目だ、さっぱり分からない……くっ! 母上がいてくれたら解決する問題なのに!)


「もう先生! 勝手にあっちこっち……って、えぇぇぇぇえええええええ!? 何しているんですか!? え、あ、すみません! 先生はちょっと自由奔放な人なんです! お願いですから逮捕だけはぁ……」


 急に現れた眼鏡の黒髪の男性は土下座を始める。


「や、やめて下さい! 誤解されます! とりあえず頭を上げて、この少女をどうにかして下さい!」

「先生は少女じゃありません! いい歳した中年のおばさんです!」

「ええっ!?」


 恐怖は塗り替えられて、驚愕に変わった。


(中年……一体何歳だ!?)


 相変わらず僕に抱き着いたままの少女改め、女性は満面の笑みでこちらを見つめていた。

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