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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
六章 死人に口なし
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誕生日会・壱

―大広間 夜―

 煌びやかに装飾された大広間には、大勢の人々が集まっている。家族や親戚は勿論、貴族達や他国の王族や有力者がいた。しかし、まだ主役は登場していない。

 まだ、皐月自身の準備が終わっていないのだろう。これはあくまで僕の予想だが、皐月が暴れて時間が掛かっているのだと思う。だから、この時間を利用してやらなければならないことがある。


(ちょっと掃除をしないとね)


 僕は、隣のお酒を飲む男性に目線を送った。すると、その男性はわざと(・・・)酒の入った物を床に落とす。当然だが、それの割れる軽い音がこの大広間に響く。

 しかし、それをすぐに女性の甲高い悲鳴が覆い隠した。


「キャアアアアアアアアアアッ! 何!? 何ですの!?」


 僕は、その声の主の元へ近付いてみる。その声の主が誰であるかは、僕は勿論知っていた。

 近付くと、既に彼女の周りには野次馬が集まっていた。そして、彼女を忍び装束を着た人物が羽交い絞めにして捕えている。彼女も必死に暴れるが、それが何の意味もなしていないようだ。 

 もしこれが、忍び装束を着た人物でなければ、とっくに彼女は助け出されているだろう。今この場面で、忍び装束の人物をとめられるのは僕だけである。横で彼女の子分達が、そそくさと逃げて行くのが見えた。


(哀れだな……)


「巽? これ……どういうつもり?」


 哀れんでいると、美月がいつの間にか隣にいて、僕にそう問いかける。


「相変わらず、いつの間に……まぁいいか。僕達は貴族達に甘い飴を与え過ぎたんだよ。でも、そろそろその飴はなくなる頃でしょ?」

「じゃあ、あの人をまさか……殺すつもりなの?」

「別に殺したりなんかしないよ……死んだんじゃ、死の苦しみしか分からないだろ? だから、生きていく苦しみを学ばせてあげるんだ。今まで誰に支えられて生きていたのか、自分達が浪費し続けた物の尊さを実感して貰う。それだけさ」


 美月は僕が言ったに対して何も返すことはなかった。やがて、捕えらえた彼女は抵抗をやめ、俯き大人しくなった。

 すると、忍び装束を着た人物は彼女を羽交い締めにした状態で、煙玉を取り出す。そして、それを地面にたたきつけると煙幕が会場全体を覆う。

 分かっていたことだが喉が痒く、目を開けているのが辛い。美月も腕を目に当てながら、咳をしている。


(煙玉って必要なのかな……彼らのこだわりみたいだけど)


 数分経って煙幕が消えると、呆気に取られていた人々がざわめき始める。


「あれは……忍者か?」

「あれが、王直属の特殊な任務をする部隊か」

「初めて見た。まさか、本当にいるなんて」

「一体、あの貴族は何をしたんだ?」


 そんな会話が僕の耳に入る。僕は、とりあえず口を開いた。


「申し訳ございません。皆様」


 一斉に目線が、僕へと向けられた。恐怖、困惑、動揺、尊敬……色んな感情を感じる。


「このような日に、みっともない物を見せてしまいました。彼女は、二階堂一族の者であります。度重なる侮辱行為を王として見過ごす訳には行かず、油断している内に捕えるという判断でした。この国の事情に他の皆様を巻き込んでしまい、本当に申し訳ございません」


 僕は言った後、最後に深く頭を下げた。


「正しい判断でしょう」


 近くで男性の声がした。僕は頭を上げて、その声がした方を向くと、椅子に座って優雅にお酒を飲む、金髪の黒い服を着た男性がいた。

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