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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
六章 死人に口なし
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―大広間前 昼―

「皐月? こんな所で何してるんだ?」


 僕が声を掛けると、皐月は肩をビクリと震わせた。そして、ゆっくりと僕を見上げて口を開く。


「か、かくれんぼしてたの! ホントだよ!」

「へ~、かくれんぼねぇ……誰と?」

「閏とだよ!」

「そうだったのかぁ……僕はてっきり、皐月がこっそり会場に忍び込もうとしてるんじゃないかと思ったよ。そうかそうか、かくれんぼか」

「違うよ! そんな訳ないもん! 誕生日の贈り物を先に見ようとする訳ないでしょ! もう!」


 皐月は、ぷくっと頬を膨らませた。


(やっぱり見ようとしてたんだな……何度も何度も皐月も懲りないなぁ。楽しみはその日にとっておくべきだよ)


 皐月は昔から我慢が得意ではない。だから、例えそれが明日には見れるものであっても、このように今見ようとする。

 ただ、その度にことごとく失敗している。それでも諦めない心は評価されるべきだろう。


「そうか……でも、こんな所に隠れてたらすぐに見つかると思うよ?」

「え?」

「ほらだってさ、鬼から見たら皐月丸見えでしょ。それに、今大広間は準備中で子供立ち入り禁止だしね。だったら、皐月が向いてたあっちの方向から閏は来る。だから、すぐ見つかるよ」


 僕がそう指摘すると、皐月はガクッと肩を落とした。


「だってだって……怖かったんだもん」


 うるうると涙を溜めて、皐月はそう言った。ようやく観念したみたいだ。


「怖い? 何が?」


 そう質問すると、皐月は僕から目を逸らしてから口を開いた。


「その……兄様が……怖かったの」

「僕が?」

「だって……凄く怖いこと言ってたでしょ、向こうのあの人達に」


 皐月は柱から顔だけ出して、僕の背後を見る。


「あぁ……」


 後ろを振り返ってみると、まだ女性達は座り込んでいた。僕の様子を伺いながら、ひそひそと何かを話している。僕と皐月の顔をちらちらと比較するように目を動かしながら。


(容赦しないって言ったんだけどなぁ。僕は相当舐められてるみたいだね……なら、一度厳しくやっておく必要がありそうだな)


「ねぇ、兄様、どうしてあの人達は私達の顔を見てるの?」


 皐月も流石に気付いたようで、僕にそう質問する。僕は皐月の目線の前に移動して、彼女らが見えないようにした。


「もしかしたら、僕達の顔にゴミがついてるのかもしれないなぁ」

「え!? 本当!?」


 皐月は慌てて、自身の頬や額、顎などに触れる。


「ほら、向こうに行って確認しよう」

「うん……兄様の顔にゴミがついてるとは思えないけど……私には見えないだけかな」

「同じゴミにしか見えないものがあるんじゃないかな。さぁ、立って」


 僕は、皐月に手を伸ばした。


「同じゴミ……?」


 皐月は首を傾げ、そう言いながら僕の手を取ってゆっくりと立ち上がる。


「ハハ、皐月には分からなくていいことさ」

「えー、気になる! 八歳になったら分かる?」

「……どうだろうね?」

「もー! 意地悪!」


 再び頬を膨らます皐月に笑みを向けながら、手を引いて足早にここから立ち去った。

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