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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
六章 死人に口なし
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偶然か必然か

―諜報大臣室 夜―

 数日経っても、朝比奈大臣が帰ってくることはなかった。


「私のせいで……私の……」


 興津大臣は、涙を流しながら自分を責め続けている。


「別に、君のせいではないだろう? 愚かな反逆者を炙り出せたしね……でも、残念だよ。彼女は優秀な人材であったというのに……後任は苦労しそうだね」

「私がああさせてしまったんじゃないかって……、もしかしたら本当に違って、ただ偶然だったんじゃないかって……」

「偶然? そんな訳ないだろ?」

「どうして……そう言い切れるんですか?」

「僕が向こうに着いた日、君も聞いただろう? 龍が現れたと……僕はその龍を再び封印しようとした。あ、これは内密にね。今までの恩を忘れないでね。で、その時に人影が現れたんだ。そして、僕に対して彼に怒られるから、それは駄目と言った。その声は間違いなく、君か朝比奈大臣のものだったんだ。この時点で、どちらかが反逆者だと突き止めていたんだよ。そして、君達を呼び出した日……朝比奈大臣が僕達が出た後、箒に乗ってどこかに出かけたという証言も得た。あの反応を見る限り、それは真実。さらには、それを嘘をついて隠そうとし、挙句の果てには、今逃亡している。言い切らない方がおかしいだろう?」

「……うぅ……」


 興津大臣は、ガクッと下に俯いた。


「朝比奈大臣……いや、朝比奈元大臣があんな国に歯向かう行為をするなんてね……正直信じられないよ」

「どうしちゃったんだろう……彩佳ちゃん……何か悩んでたのかな」

「悩む?」

「分からないんですけど、箒持って飛び出した時、顔が真っ青だったんです。切羽詰まった感じで……」

「へぇ、真っ青ね……何でかな」

「あの……」


 顔を上げて、興津大臣は言った。


「もし、彩佳ちゃんが戻って来たら……巽様は嫌ですか」

「嫌って……そんな筈はないよ。さっさと戻って来てくれた方が、こっちとしても色々楽なんだ。まぁ……それなりの処分は勿論あるけどね」

「処分……もしかして――」

「そこまで残虐なことはしない」


 僕がそう言うと、興津大臣の表情から安堵の色が見えた。


(多分ね……さて、そろそろ準備をしないとな。使用人達も忙しそうだったし)


「じゃあ、僕はこれで失礼するよ」

「あ、はい!」


 興津大臣はビクッと反応して、僕に対して深く頭を下げた。


(やれば出来るんだ……)


 普通のことだと思っていたが、普通のことをやるのは難しいと教えてくれたのは彼女だ。

 僕は扉の前まで歩き、ゆっくりと扉を開く。そして、この部屋に来た時から思っていたことを言った。


「前この部屋に来た時から、机の上にある資料が全く減ってないと思うけど……他の人の心配をするより、君は自分のことを心配した方がいい。朝比奈元大臣より早く処分を受けたくなければね。いつまでも僕は甘くない。先ほどあった特別会合の件も……ちゃんとまとめて公表するようにね、じゃあ」


 興津大臣の方へと一度振り返って、笑顔を繕った。そして、また扉の方を向き、ゆっくりと廊下へと出た。


(会場の様子でも見てみるか……)


 僕は窓から射しこむ光を踏みながら、目的地へと向かった。

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