番外編:アルバムⅠ
番外編ですー
おまけみたいなものです
国を追われる者の部屋
思惑の為 持ち出され
時の流れと共に 忘れ去られた あの日あの時の記憶
記憶は記録へ 記録は闇の中へ
埃被って 目覚める日を待っている
***
ー? 城内 夕刻ー
「睦月様~こっち向いて~」
女性の写真家が写真を撮り続けている。使用人でもなければ、王族でもない彼女ががここにいるのは、王族の子供達専属の写真家だからだ。
女性の名は、山本 聖那。国一番の新聞社で働いている。彼女がこの仕事をすることになったのは、八年程前、睦月が生まれた年からだ。
「も~、恥ずかしいよ~」
睦月は、そう言いながらも嬉しそうだ。下ろしたての可愛い海外の豪華なドレスを着ての記念撮影だ。別に、誕生日とかそういう訳ではない。
「とってもお似合いです! じゃあ今度は……」
聖那が、違う角度から写真を撮るため移動しようとした時だった。
「僕も撮ってよ!」
聖那のズボンを引っ張り、下からじっと睨むように見つめる可愛らしい髪を二つに結った少年がいた。
「ちょっと、動くな。まだ結んでる途中」
その少年の腕を引っ張り、無理矢理連れて行こうとする、やけに大人びた少女。
「やだぁ! やだよぉ!」
「あともう少しで二つ結びが出来るの、動くな」
「髪結びたくない! 写真撮りたい!」
「髪結んでから写真撮ればいい、ね?」
「え? そ、そうですね」
あまりにぎこちなく質問されて、聖那は戸惑ったが、これが少女の美月の普段である。そして、美月に人形みたいに遊ばれ、聖那に写真を撮ってとねだるのが次期国王候補の巽だ。まだ幼く舌が上手く回っていないが、聞き取れることには聞き取れる。
「僕は、男なの!」
「どこが」
「どこもかしこも!」
「知らないの? 巽は実は女の子なのよ」
「えっ!?」
巽は硬直して動かなくなる。そんな訳はないのだが、巽は騙されやすいというより、信じやすい傾向がある。
「はいはい、巽と美月もうちと一緒に写真撮ろう。お願い」
呆れ笑いを浮かべながら睦月は、巽と美月の手を引っ張って少し遠くへと離れる。
「巽様は……そのままで宜しいのですか?」
と、聞いてみたが巽から返事はない。
「いい、いい、さっさと撮ろう」
美月は聖那を急かした。
「じゃあ……睦月様がそこで、美月様はその隣、巽様は下で座って下さい」
巽は睦月に座らされ、焦点が定まらない目で写真機を見る。視線の先に写真機があるだけで、見ているつもりはないのだろうが。
「完璧、これ新聞に載っけてよ、絶対最高」
美月が、巽の頭を撫でながら言う。
「それは色々と兼ね合いが……でも、相談しておきますね。では、撮りますよ! はいっ!」
カシャッ、と音が響いた。
この時撮った写真は無事次の日の朝刊の記事に載った。巽にとっては嫌な記録だろうが、大切な思い出として、アルバムに残してある。
しかし、それは今の巽の記憶にはない。幼い時の記憶は、その後この国を混乱へと導く男の手によって、奪われたままなのだから。




