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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
五章 縁は異なもの味なもの
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反逆者

―上野城内 夕刻―

(さて、黙らせた)


 口をパクパクさせる迅を尻目に、僕は言った。


「消されないようにね。君がいなくなると……大問題でしょ? フフッ、またこの国で内乱が起こる」


 新たな後継者探し、地位や財産を手に入れたい者達は沢山いる。後継者争いが大きな火種となり、混乱は生まれる。そして、その内乱によって生じた隙を狙う国が現れたら、どうなるかなんて大体は予想が出来るだろう。


「君が何を考えてこうしたのかは全然分からないんだけど……もし、これから君やこの国に何か不利になるようなことがあれば、それは全て……君の口軽さと意思の弱さのせいさ」


 僕はそう言って、小鳥のいる場所まで舞い上がった。龍の足下で、足掻いても仕方がない。


(呑気な奴も君も脆いんだよ)


 しばらくして、やっと小鳥の所まで辿り着いた。小鳥は僕を見るなり、顔を強張らせた。


「その手……一体さっき何を……」


 小鳥からの位置では、下の景色は鮮明には見えない。だから、この状況はとてつもなく恐ろしいのだろう。片方の手がほぼ粉砕されてしまったのだ、仕方ない。


「まだ使えるから大丈夫さ、数本あるでしょ」


(……もう僕には関係ないけどね)


「使えるとか使えないとか、そういう問題では……」


「今はそれより、君をどうにかしないとね。下の者達は、龍に夢中だからどうにもならない。だから、僕がどうにかする」


 もはや手であると認識できるのは、腕の先には手があるという概念があるからのお陰としか言えない血塗れの手を、ゆっくりと空へと突き上げる。

 その時、ようやく龍が僕に気付いたようで顔をこちらに向ける。


「巽様っ! 駄目です……!」

「大丈夫、今まで有難う」


 龍を封印する。そんなもの今の魔法では出来ない。とうの昔に、龍が絶滅したと同時に衰退し、忘れ去られた魔法。その魔法がなければ、どんなに足掻いた所で無駄死にするか、脅威に怯え続けるかしかない。

 そして、その魔法は僕の国では禁忌魔法として指定されている。使う人なんていないも同然だが、使うことは罪。


(でも、今僕がいるのは上野国だ。バレても、僕の国の法律など適用されない)


 龍が僕に向かって口を開く。


「巽様っ――」


「世界を創り出した大いなる者よ……我が体使い、邪悪なる龍を封印したまえっ!!」


 突き出した手は、目映いほど輝いた。

 

(これで……やっと。ごめん。僕嘘つきだから……)


 琉歌の顔が浮かぶ。でもそれは徐々に消えて行く。そして意識が遠のく直前、龍の向こうに人影が見えた。


「残念……私が彼に怒られるから、それは駄目ですよ。巽様ぁ~ウフフフフフ……」


(この声は……どっちだ?)


 情報を流した反逆者の正体。この声により、僕の中で二人に絞られた。しかし、それを確認することは、叶わぬまま僕の意識は途絶えた。

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