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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
一章 変わらない世界
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その塔の入口は王には出口

―城内飛脚所 夜―

 僕が急いで飛脚所に行くと、若い青年がせっせと配達の準備をしていた。城用に飛脚所があるとは言え、外にあるから結構行くのに時間がかかる。


(間に合ったな)


「配達前で忙しい所申し訳ないが、これも配達願う」


 そう声をかけると、僕に気付いた彼は深くお辞儀をした。そして、すぐに顔を上げると僕の手にあった封筒を受け取る。


「巽様! はいはい! 承りますよ!」


 彼は、封筒に書かれた住所を確認する。


「えーっと、信濃国の望月様ですね! となると」


 彼は指笛を吹いた。すると、上から羽の生えた女性が現れた。彼女は鳥族と呼ばれる者だ。空を誰よりも理解し、空と共に生きる者達、それが鳥族だ。

 足で行くより、飛んだ方が外国に行くのは圧倒的に速い。だから、基本的に外国への郵便物は鳥族に委託される。

 僕らも魔法を使えば飛べるが、彼女達ほど速く飛べたり、高い所までは行ったりすることは出来ない。


「承知」


 彼女は、手紙を受け取ると凄い勢いで上昇して、あっという間に彼方へ行ってしまった。


「凄いな」

「空の専門家ですよ、鳥族は。天気とかも教えてくれるのは彼らですから」

「うん、彼らがいなければ農業とか行事の開催……色んな所で支障が出る」

「神様、仏様、鳥族様~なんてね。おっと! すいません、自分、そろそろ配達の時間なんで失礼致します!」

「嗚呼、気を付けて」


 と、僕が言っている間に既に彼は、颯爽と配達物が入った籠を持って遠くに行っていた。


(速っ)


 風よりも速いのではないかと思ってしまう。風になって消えた彼とは対照的に、夜風は穏やかだ。そして、日中と比べるとまだ冷たい。そんな中、ふとあることを思い出した。


(そういえば、あの開かずの扉があるのはあの塔だったかな? 折角ここまで来たし、ちょっと見てみようかな。久しぶりに)


 僕は、少し外を歩いてみることにした。

 城内飛脚所と隣接するようにあるあの塔は、蔦に覆われた古い煉瓦造りになっている。幼い頃はもう少し綺麗だったと思うが、あまりに誰も使わないから掃除もされていないのだろう。その塔の扉はどうやっても開かない。だから、開かずの扉と呼ばれている。

 その開かずの扉は、異世界へと通じる扉だと噂されていた。その扉の中は、色んな世界線が入り混じっていて、固い意志がなければ、その空間で迷子になってしまうとも言われている。そもそも、その門を開く事が出来るのは選ばれし者だけだとか。


(その選ばれし者でさえ、固い意志がなければ迷子になってしまう扉。とても興味がある。幼い頃は遠くで見ることしか出来なかった。だけど今は、僕にとってこの世界から逃げ出せる唯一の出口だ)


 所詮は伝説、だけど今はその伝説に縋りたい。

 開かずの扉は、僕の意思を意志だと認めてくれるのだろうか?

 僕は、ゆっくりと歩みを進める。


(一体何に使われたんだろう。記録には、塔の用途もいつ出来たのかすら書かれていない。どうでもいい建物だったのか、記録出来ないようなことに使われていた建物だったのか……)


 僕は塔の目の前に立った。そこで気付いた。


(塔はこんなにも汚いのに、扉はまるで新品だ)


 木で出来た扉なのに腐敗している様子もない。まるで、この扉だけ時間が止まったままのよう。


(ふふ、伝説は本当かも知れないな)


 大きく深呼吸をする。


(僕をどこか知らない世界に連れて行ってくれ)


 願いを込めて、その扉の金色に輝く取っ手を引っ張った。

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