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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
五章 縁は異なもの味なもの
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泡沫の時

―上野城内離れ 夕刻―

 僕達は、そのままの体勢で多くの話をした。琉歌は嫌がっていなかったし、僕も出来ればこのままでいたかった。琉歌の話は小さい子供が話すような感じで、とても可愛らしい。


「宝生様〜! 晩餐のお時間です〜!」


 その声で、夢のような世界から現実世界へと連れ戻される。琉歌と話した時間は、信じられないくらいあっという間だった。


「もうこんな時間か……」

「ねぇ、晩餐……? って何?」

「夜ご飯だよ、単純には」

「あぁ! そういうことか!」


 琉歌は、納得したように首を動かす。


「琉歌は一人で食べるのかい?」

「うん、私はここから出れないもん」


 悲しそうに琉歌は笑った。


「じゃあ……僕がここで食べるって駄目かな?」


 僕としては、なるべく人がいない所で食べたかったし、琉歌も誰かと一緒に食べられるしいいと思ったのだか、そんな僕の気持ちとは裏腹に琉歌の表情は強張った。


「駄目! それは駄目!」

「そんなに……嫌かい?」

「巽さんと一緒に食べたいけど……ごめんなさい。巽さんと食べるのが嫌な訳ではないの! だから、そんなに悲しそうな顔をしないで」


 琉歌は、そう言って僕の頬に優しく触れる。僕はやはり顔に出てしまうらしい。


(何故、駄目なのだろう? 琉歌から拒否するなんて)


「晩餐が終わるのはいつ?」

「さぁ……それは色々あると思うから……」

「そっか、分かった。ここにまた戻って来れる?」

「言ってみるよ」


 僕は、口角を上げて笑った。一瞬、琉歌の表情が悲しそうに見えたような気がした。


「宝生様〜!」


 待ちくたびれたのか、先ほどより少し声色が怖い。


「待ってるよ。急いで行ってあげて」

「うん……」


 琉歌は、ふらつきながら僕の上からのける。僕も、ゆっくりと体を起こして立ち上がった。


「ねぇ、ここには使用人達は入らないのかい?」

「彼らは……入って来れるけど、入って来ない。当然よ、彼らから見れば私は化け物そのものだもの」


(化け物……!?)


 その言葉に思わず、心が貫かれたような衝撃を受けた。


「そんな筈ないよ……君は美しいじゃないか」

「違うの、違う……」


「ほぉおーしょぉおー様ぁああ!?」


 使用人の声は、完全に怒号だ。僕が王でなければ、もっと下品な言葉が飛んで来ていたかもしれない。


「うわ、怒ってる……怖い怖い。そろそろ行かないと大変そうだね、じゃあ行くよ」


 僕は、部屋を出て玄関へと向かう。琉歌が見送りに、一緒に来てくれた。


「行ってらしゃい」


 笑顔で琉歌は手を振った。離れるのが惜しい。でも、行かなければならない。


「嗚呼、行ってくるよ」


 玄関の戸を閉めて、橋を渡るとその先に使用人はいた。この位置から声が伝わって来ていたのだと考えると、その発生方法を是非お伺いしたい。


(距離を感じる。琉歌がさっき言っていたこと……本当なのだろうか)


 やはり、先ほどの使用人と一緒であった。腕を組んで仁王立ち、笑ってはいたけど抑えれきれていないその苛立ちは、確かに僕に伝わった。


(この使用人は僕と同じ人だね、多分)


「お待ちしておりました、ささ、急ぎましょう」


 足早に使用人は歩き出す。


「嗚呼……すまない」


 僕は、再び彼と共に来た道を戻った。

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