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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
四章 与えられた休養
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夜の相談室

―美月 医務室 夜―

「わざわざ私を呼び出すなんて……一体何の用事? 藤堂先生」


 なんて言ってみる。正直、これは愚問。


「申し訳ございません、美月様。用件は、巽様のことです」

「あぁ」


(知ってたけど)


 しかし今まで、私からここに来ることはあっても、呼ばれてここに来たことはなかった。


「先日のこと、どうも引っかかるんですよ」

「引っかかる?」

「その……巽様は、何かを隠しておられるのではと」

「何かって何?」


(巽が隠していること、か。巽があの人と関わっていたことと、最近国で頻発しているあの現象のことに巽も関係しているってこと。それ以外は知らない)


 この人は怖い。私が今一番注意して関わらないといけない相手。それと同時に頼らないといけない相手。


「巽様は化け物に誘拐され、それを助けに来た二人が自分の代わりに殺され、自分は命辛々逃げて来たと私に仰いました」

「うん、私、それ父さんから詳しいこと聞いたよ、それ。今日の朝、巽が来る前に父さんが皆に言ってたから」


 特別会合で巽以外の主要な人物達は、早く集合させられた。そして、その報告を父さんの口から聞いたのだ。


(この人からの情報だったんだ)


「そうですか、なら話は早いです。私には巽様の話に、どうも違和感を感じました。何故なら、巽様の背中の傷には鋭利な刃物、剣で斬られたような跡があったからです。それも、ほんの少し前に出来たような傷です。背中はガラスの時の傷口が開いたり、掠り傷のようなものが多くありましたが、一番その傷が目立ちました。しかし、巽様からその傷のことが語られることはありませんでした。と言うより、その傷に気付いてないようにも感じました。あれだけの傷、それに化け物の口の中にいたということは、歯形くらい残っていてもいい筈なのに、それもない。つまり、巽様の証言に確固たる証拠がないのです」


 そう言うと、彼は私の目をじっと見つめる。


「巽が嘘をついてるってこと?」

「……そう言うことになりますね」

「なら、さっさとそう言ってよ。回りくどい」


 巽は嘘をついたり、隠しごとをする時、面白いくらい顔に出る。

だから、大体の人は巽の嘘に気付く。彼が確信を持てなかったのは、巽の顔を見ずにその話を聞いていたからかもしれない。


「これって、私と先生以外誰か知ってるの?」

「いえ……美月様にだけご報告させて頂きました。誰も知りません。この話を誰か盗み聞きしてない限りは」

「そう言うの、怖いんだけど。こういう所から何か起こっていくんでしょ、ドラマとか映画では」


 一応、私は周囲をうろついてみたり、扉を開けてみたりした。人がいる気配は感じない。


「誰かいますか?」

「いない。それより、何で私にだけ?」


 私は、再び彼へと近付く。


「美月様は一番、巽様を見ていらっしゃる。よく理解していらっしゃる。相談されに来る度、それを感じていました。ただ、それだけのことです」


 にこりと、彼は笑った。


「……やめてよ、恥ずかしい。私はただ、結婚の近い男がずっと不健康的な生活をしてたり、色々抱え込んだりしてるのが気に食わないだけ。それをどうにかしてあげたいけど、私はそれが出来ないから、頼ってるの。色々やっては見るけど。正直言ってどれもこれも上手く出来ないの」

「私は……心理的なものは不得意でしてね。見えないものを見るのは、かなり苦手です。提案をすることは出来ますが、結局は美月様頼りになります」

「知ってた。でも、誰かと共有出来ると少し楽だから、それでいい。で、折角だから今日も相談」

「何でしょう?」


 彼は、机の上に置いていたメモを手に取る。それには、今までの私がした巽のことについての相談が沢山書いてある。言うなれば、巽メモ。


「巽、今日の昼食と夕食食べてる時、凄く顔色悪かった。水も死ぬほど飲んでた。後、私が苛々してて昔たいに罠にはめてみようと思ったら、危うく殺されかけた」


 藤堂先生は、私の話を聞きながらメモを取り始めた。


「う~ん。まず前者の方から、朝食はどうだったんです?」

「一緒に食べてない。多分、父さんが怖いからかな。昼食は無理矢理。重い雰囲気をさらに酷くしてくれたわ、夕食は普通に来た。でも、どっちも食べる前は普通に見えた」

「なるほど、その時は何も聞かなかったんですか?」

「聞いてはいけないオーラが出てた。珍しく空気を読んだ、巽の」

「はぁ……それらの夕食のメニューは私が後ほど、ちゃんと調べておきます」

「お願い」

「後者は気持ちが不安定な時に、過激な悪戯は駄目ですよ。特に今の巽様は、時々凄く冷たい目をしているように感じます。あの目は危険な感じが……」


(目……黄色……)


 目の話に触れられた時、巽の目が黄色く光っていたことを思い出した。それと、歌術で苦しんでいたこよも。


(疑惑を確信に変えてしまうかもしれない。この情報は言う方が正しいのかもしれないけど、私の口からでは駄目。覚悟を決めた巽の口から言わなければいけない気がする)


「ごめん、気を付ける」


(巽は一体どうなってしまうの)


 不安、巽のことだけが今はただ気がかりだ。

 明日から、ロマンチックな手紙のやり取りをしていた婚約者の所に行くというのに、あの状態ではどうなってしまうのだろうか。

 手紙の内容は、かなり可愛さと純粋さと素朴さを感じた。きっと、かなり素敵な子だろう。


(上手くいくといいな。少しでも幸せになって欲しい。睦月はそうなれなかった、巽にはなって欲しい)


 私の願いは家族全員のが幸せになること。ただ、それだけだった。

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