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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
三十二章 掴んだ未来
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見守る者

―御霊村裏山 朝―

 あの部屋で話すのかと思いきや、小鳥は外で話がしたいと言った。それを拒否する理由もないし、彼女がそれを望むのなら僕はそれに従うべきだと思った。

 彼女に対して、贖罪と感謝の気持ちが大きかったから。少しでも彼女の為になることをしたかったのだ。

 

「どうして、裏山なんだ?」


 彼女の手を握り、導かれるままに空を飛んだ。風を切る音が耳元で響いていたのに、自然と恐怖は芽生えなかった。五色絢爛の両翼を使い、上へ上へと導くその姿はとても神秘的で美しかった。

 そして、魔法を使うよりも速く山頂へと到着した。そこで、僕は何故わざわざ裏山なのかという疑問を解決しようと彼女に問うたのだ。


「本当に二人っきりで話すなら、ここしかないかな……と思ったんです。フフ、本来ならばここは立ち入りが禁止されていますから」


 小鳥は、頂からの景色を望みながら言った。太陽を彼女が完全に遮断してしまっている為、完成した景色を僕は楽しむことが出来ないが。


「え!?」

「ここは、かつて鳥族が御霊村を見守る為の場所だったそうです。私達を神秘なる者だと思い込んでいた御霊村の人達は鳥族に感謝の気持ちを込めて、この山頂付近を鳥族以外が入らないようにしてきました。それは、かなりの時が経った今でも守られています。本来の意味は失われてしまいましたが……つまり、ここは鳥族がいれば自由ってことですよ」


 表情は見えないが、彼女は悪戯っぽく笑っていると思う。


「そ、そうかい……知らなかったよ」

「そうですね。ここを守る為には、あえて伝えないことも大事なのでしょう。巽様、私の隣に来て下さい」


 彼女もそう言っていたし、その景色も見たかった為、僕は隣まで歩いた。


「おぉ……!」


 欠けていた太陽が現れたことで、この景色は完成された。温かな太陽の光が、下に見える御霊村を照らしている。きっと、ここから望める景色は昔とそんなに変わっていないだろう。流れる川、村を囲む木々、のどかな景色が続いている。

 それに確かにここからなら、御霊村全体を隅々まで見守ることが出来るだろう。何かあった時でも、鳥族達ならばすぐに駆け付けることが出来そうだ。


「何故、鳥族がここから御霊村を見守っていたのか……理由もなくそんなことはしないはずです。かつて私は父に聞きました。永い時を知る父に」


 そこで、僕は興津大臣から聞いた御霊村にまつわる伝説を思い出す。


「かつて、この裏山……いや、御霊山付近で現れたという獣に関わることだったりするのかい?」

「知っておられたのですか?」

「……最近ね」

「そうですか、でしたらお話は早いですね。巽様のことですから、そういう話の類には関心がないのかと……」

「確かに疎いさ。でも、これは僕にも関わることだ」


 僕を長らく苦しめた技術が、この国にも昔から存在し続けていたという可能性。今は国民に、あの現象が起こっているという話は聞かない。だが、僕が黙り隠し続けていたように、そうしている国民がいないとも限らない。手遅れになってしまう前に、何かしらの対策を打ちたい。

 その対策を打つ為には、あの悍ましい技術を誰よりも知っておく必要がある。そうすることが、顔も名前も知らない孤独な誰かを救う手段になるのだ。


「はい、ですから巽様にはお伝えすべきことだと」

「嗚呼、教えてくれ」

「……鳥族がここを守っていた理由はたった一つ。贖罪の為です、仲間が犯した過ちを……かつての村人達に背負わせてしまった罪への」

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