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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
三十一章 精神世界
376/403

人生ってのは不確かさの連続

―精神世界 ?―

 はぁ、と一つゴンザレスは息を吐く。


「ね、ねた……ね――」

「ネタバレだよ! この馬鹿!」


 目を吊り上がらせて、ゴンザレスは言った。


「難しい言葉を使わないで貰えるかな」

「難しい言葉も糞もないだろ……小鳥とか美月には通じたのに」

「認めるよ、僕は無学だ」


 今更、隠すことも出来ない。僕は興味を持ったこと以外を学んでも、ちっとも頭に入って来ない。楽しくないし、面白くもない。楽しくなければ、学ぶ意欲も自然と薄れていく。面白くなければ、他の面白いことに逃げてしまう。

 結果、僕は逃げ続けてしまった。今現在、その弊害が大きく表れるのは多言語を使った会話をする時だ。最近では、僕の国でも横文字の言葉が日常会話で当然のように使われるようになった。勿論、僕だって少しは使える。意味も理解出来る。だが、全てに対応出来る訳がない。


「知ってるよ、随分前から」

「やっぱり?」

「ぶっちゃけ、俺の世界でここまで喋れない奴は中々いねーぞ。ネタバレとか横文字って言うほどの横文字でもないし。ある意味、才能かもな。それを個性にして生きていけば、明るい未来が待ってるかもな」


 ゴンザレスは、フンと鼻で笑った。


「その明るい未来は、僕にとって屈辱的な未来だな」

「でも、案外楽しいかもしれねぇぞ。お前、そこまで他の誰かに馬鹿にされたことないだろう? 新鮮な新しい世界が待ってるかもしれんぞ」

「そんな世界は興味ない。折角なら……皆と……あ」


 そこまで話して気付いた。


「それがお前の希望か」


 僕に未来を語る資格も、希望を持つ資格もないのにつられて言ってしまった。


「言わせるつもりだったの?」

「フン、お前だって本当は望んでんじゃねぇか。未来を、誰かと一緒に歩む世界を」


 ゴンザレスは、珍しく優しく微笑んだ。それは、かなり僕をむず痒くさせた。


「僕には……そんな資格もないよ。それに、元に戻ったってもう何も出来る気がしないんだ」

「でも、望んでる。贖罪は、生きて初めて成せる。消えたり死んだりしても、贖罪にはならない。悪いと思ってるんだったら、生きてる内に果たさねぇと駄目だ。死に際に後悔しても、もうどうもなんね。今やるんだ。その為の機会がお前にはある」


 そう語るゴンザレスの口調は、柔らかく優しかった。むず痒さが増していく。


「それに、皆はお前を待ってるよ。贖罪とか、そんなんどうでも良くて……ただ、お前の帰りを待ってる。皐月が言ってた。お前は普段ほとんど笑わないし、難しい顔をしてるけど、ふとした瞬間に見せる笑顔がとても優しかったんだって。それすらも最近、見れなくなって寂しいって」

「皐月が……?」

「しっかりとし過ぎた妹だな。ま、お前がそうなったのも、化け物のせいだ。小鳥の言うことが確かなら、お前はその化け物の呪縛から解放されるはずだ。そうすれば……きっと、元に戻れる。もう苦しむこともない」

「小鳥は、そんなことも出来るのか?」

「あいつは可能性の塊だから」


 ゴンザレスは、遠くを見つめた。


「それって、よく分からないけど多分出来るってことか?」

「おぉ、そんな感じだ」

「そんな不確かな……」

「人生ってのは、不確かさの連続だ。だから、奇跡とか夢があるんだよ」

「ぽいこと言ってはぐらかしてないか」

「そんなことはない」


 気が付いたら、僕達は関係ない話に夢中になっていた。

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