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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
三十一章 精神世界
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正気に戻す為の拳

―精神世界 ?―

 見せるだけ見せて、その光景は弾けるように消えた。


「っ!」


 すると、渦巻いていた景色があっという間に元通りになっていく。渦巻きがあった中心には、ゴンザレスがあぐらをかいたままの体勢で固まっていた。


「しっかりするんだ!」


 僕は急いで身を起こし、ゴンザレスが正気を取り戻すように肩を揺らした。しかし、焦点の定まらない目で、遠くを見つめたままで返事はない。


「あぁ……俺が……俺が」


 どうやら、ゴンザレスも僕と同じようにその光景を見ていたようだった。


「ゴンザレス!」


 瞬きも、自分が何をしに来たのかということすら忘れて、ただ自分の犯した罪についてのことを繰り返し呟き続けている。


「そんなつもりはなかったのに……俺のせいで俺の!」

「いい加減にしろ!」


 さっきまで余裕をかましていた奴が、僕の精神世界で廃人のようになっているのに腹が立った。

 だから、力一杯殴ってやった。目を覚まさせるための、正気に戻す為の拳。


「うがっ!」


 僕の拳を受けて、ゴンザレスはそのまま後ろに仰向けで倒れた。


「普通に肉体があるみたいだ。これは凄い」


 精神世界と言えども、元々持っていた力も完全に継承されているようだった。


「思い込みによっては、もっと強くなったりして……想像力が全てだったりしないかなぁ」

「おい、てめぇ……ふざけんなよ……」


 ゴンザレスが、地を這うような低い声で言った。仰向けのままなので、恐怖を感じることはないが。元々、こいつに恐怖などそんなに感じたことはないが。


「おはよう」


 正気に戻ってくれたようなので、とりあえず挨拶をした。


「おはようだぁ? 人を殴って、最初に言う言葉がそれかよっ!」


 そう言いながら、ゴンザレスは身を起こす。目はしっかりと僕を見つめている。僕が力任せに殴ってあげたお陰で、正気を取り戻すことが出来たみたいで本当に良かった。


「だって、お前がボーッとしてるから。不快だったんだよ。だから、殴った」

「……やっぱり危険だ、ここは」


 ゴンザレスは、突然真面目な顔を作って嘆くように呟いた。


「危険? 酷いなぁ、勝手に入って来てゴチャゴチャわめいてるのはそっちなのに」

「いや、これは俺の責任だ。勝手に感極まって泣いたんだから。結果、お前の負の感情に囚われて思い出したくないことまで思い出しちまった」

「……もしかしたら、僕もそれを見たかもしれない」

「は?」

「いや、その……お前が父親を」


 しばしの沈黙が流れる。そして、それをゴンザレスを切り裂く。


「良くねぇな、ご褒美に取っておいた奴のネタバレは」

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