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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
三十章 夢の世界
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なんとかなる

―ゴンザレス 中庭 夜―

 その眩い光が消えた後、周りには無数の五色絢爛に輝く羽が舞っていた。


「へ……?」


 俺は無事だった。木に座ったままで、化け物の口の中で転がされてはいなかった。その化け物は、苦しそうな表情を浮かべたまま横たわっている。サイズが大き過ぎるから、顔が目の前にある。

 今にも動き出すのではないかと勘繰ってしまうが、本当に力を使い果たしたようで、呼吸する為に体を僅かに膨らませたり縮めたりを繰り返しているだけだった。


「ゴンザレスっ!」

「小鳥? そ……その姿は……!」


 声のした方へ、顔を上げた。そこには五色絢爛な翼を二枚生やした小鳥が、少し気まずそうな表情を浮かべて宙に浮いていた。その姿は、まるで天使のようだった。


「絶対助ける! って思ったら……急にこんなことに」

「俺のことを?」

「うん」


 小鳥は、優しい笑みを俺に向ける。


「俺は死なないのに、か?」

「痛い思いをして欲しくなかったから……ゴンザレスの苦しむ声を聞きたくなかった。痛い思いをすることに変わりはないでしょう? だから……咄嗟に……」

「そうか、ありがとう」


 内心、ここから宇宙へ喜びのエネルギーだけで飛んでいけそうなくらい嬉しかった。小鳥は、俺を助けようと思ってその力を覚醒させたのだ。嬉しくない訳がない。巽の為に覚醒させようとしていた力が、俺の為に覚醒された。こんなにも幸せなことはない。


「もっと早く……こう出来ていれば、巽様がこんなお姿になることもなかったのに。ゴンザレスに余計な迷惑を沢山かけちゃった。こんなにもあっさり……何か恥ずかしいな」


 小鳥は、逆にそれを気にしているようだった。


「全っ然問題ねぇよ! ハハハハハハ! で、こっからどうするんだ? これが一応最初の目的だろ? どうすんだ?」


 今のテンションなら、何でも出来る気がする。痛みなんて、どこかに吹き飛んだ。


「え、えっと……急に凄く元気になってびっくりした。元気なら良かった……えっと」

「そうですね、それ気になります」


 唐突に、背後の方から興津さんの声がして驚いた。振り向くと、木の枝に興津さんが立っていた。


(気配がない……なさ過ぎる)


 多分、ずっとそこにいたのだろう。俺が、目の前の出来事に気を取られ過ぎていただけである。それでも、今の今まで何も言わなかったのは何故だろう。


「そんなに存在感がなかったでしょうかね。隠していたつもりなど殊更なかったのですが。まぁ、いいです。さぁ、話の続きを」


 俺の表情から悟ったのか、少し不満げに興津さんは言った。


「ごほん……お話をさせて頂きますと、この状況まで持ち込めたならやることは一つなんです……が、また一つ課題が」


 小鳥の表情が、厳しいものになる。例えるなら、野球でサヨナラ負け食らいそうな時のチームの監督の顔だ。眉をひそめて、喉に何かつかえたような感じだ。


「課題? 大丈夫だ、俺らなら何とか出来る!」


 謎の自信に満ち溢れていた。俺は自覚する。今、ウザいくらいにテンションが高いことを。

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