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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
三十章 夢の世界
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殺させねぇ、もう誰も

―ゴンザレス 中庭 夜―

 化け物は、気絶している訳ではないようだ。起き上がろうと必死に足をばたつかせている。


「ついにここまでって……見越してたのか?」

「えぇ、それが元々の目的でしたからね。しかし、今はそれを危惧していました」


 興津さんは、こちらに振り返る。


「目的……?」

「長々と語りたいのですが、そんな時間を彼は与えてはくれないようです」


 彼女が言うように、既に化け物の前足は地面に着き震えていた。後足が地面に着こうと必死だ。


「じゃあ、戦いながら教えてくれ! そこに立ったままだと危ねぇっすよ!」


 伏せた状態であるが、化け物は正面に立つ彼女に向かって口を開いていた。今すぐ喰らってしまおうとせん勢いだ。


「分かりました」


 彼女はこちらを向いたまま、足を後ろに蹴り上げた。見事にそれは化け物の顎らしき場所に当たった。その後、彼女は全速力で走ってきた。


「グゥゥゥ!」


 化け物は顔を伏せて、痛がる素振りを見せた。彼女の履いている靴を見てみると、鋭いヒールがあった。

 何故、戦う時にそんな動きにくい靴を履いているのかと思ったが、今の場合それを有効活用しているようなのでいいかなと思った。


(普通に走ってたし……普段とは違う靴を態々履いてくる理由は分からんが……ん?)


 隣に立つ彼女を見て、疑問が浮かんできた。


(結界が張られたここに、どうやって入ってきた?)


「あの~」

「はい?」

「ちょっとした疑問なんすけど……どうやってここに入って来たんすか?」

「あぁ、そのことですか」


 何を言ってるのか、とでも言わんばかりの表情で彼女はこちらを見る。


「結界を壊したんですよ、だから私がここにいるのです」

「壊した!? 壊したんすか!?」

「はい」


 彼女は自分のやったことを、何とも思っていないかのような様子だ。軽く相槌を打つような感じで、俺に返事をした。


「どうすんすか! もし、化け物が力を使ったら……そこから他の人が――」

「問題ありません、皆さん眠らせました」

「は?」

「無策に行動するはずがありません。それに、化け物が何をしでかすか……こちらが不利になるようなことを消したまで。結界を張って下さったお陰で、一人一人にかけて回るという面倒なことをせずに済みました。一気に広範囲にかけることが出来たので」


 つまり、小鳥が必死こいて張った結界は無駄ではなかったということ。しかし、彼女が壊した結界の一部は壊れたままだということだ。


「広範囲って、どれくらいっすか?」

「国一体くらいには。フフ、困りますよ。私を仲間外れに進めるなんて。私だって貴方の協力者なんですから……あら、彼は相当お怒りのようですね。殺されないように頑張ります」


 化け物は完全に起き上がっていた。怒りは頂点に達していたようだった。邪悪なオーラが漂っている。


「殺させねぇ、もう誰も!」

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