表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
三十章 夢の世界
353/403

おかしいのは僕だ

―? ?―

 僕は、洋風庭園の長椅子に座って息を整えていた。


「僕がおかしいの? でも、こんなに違和感を感じるなんて……なんで」


 僕が、おかしいと思っているのは主に三つ。


 一つ目は、家族でご飯を食べようと言われた記憶が一切ないということ。でも、気が付いたら僕は食べていた。皆には父上から食べようと言われた記憶があるのに、僕にはない。

 二つ目は、皆の年齢だ。皆が若返っているように感じるのだ。閏は一人で食事が出来る年頃であったはずだし、皐月はもっと背が高かったはずなのだ。睦月の髪はもっと長かった気がするし、美月はもっと感情の表現が上手かったはずなのだ。父上と母上はそんなに変わってはいなかった。あえて、違いを挙げるとするならそれはしわの数だろうか。

 三つ目は、父上が王であるということ。何となくだが、父上は王を退位していた気がするのだ。そして、僕が王であったような気がするのだ。

 これらは全て根拠のない違和感。しかし、どうにもこれを解決しなければすっきり出来ない。


(違和感のあるここがおかしいのか、違和感を感じている僕がおかしいのか……僕は何に違和感を感じてるんだ? あ、全部時が関わってる。急に始まって……そこは……)


 僕は考えた。違和感の元凶を、何故感じるのか、何が原因なのか。そして、一つの結論を出した。


「ここは……過去?」


 もし、ここを過去と仮定すればその違和感はいくらか消える。皆が若いのも、父上がまだ王であるのも。

 何が理由で、僕が過去に来てしまったのかは分からない。しかし、そんな非現実的なことはあり得るのだろうか。異世界に続く開かずの扉を開くことが出来たのならまだしも、僕は何かをしたという記憶がないのだ。過去に飛ぶと、記憶が壊れてしまうのだろうか。


「うっ!」


 突然、目に激痛が走った。何かに貫かれたような痛みだ。目に何かあったのかと、僕は恐る恐る触れてみた。だが、感じたのは自身の肌の感触だけ。

 その手に何かついていないかと思ったのだが、付着するものは何もなかった。ただ激痛を感じただけ。理由もなく、突然。


(僕がおかしいのか……)


 その痛みが落ち着いた後、そんな考えが湧いてきた。もはや、理解しようと思うのが間違っているような気がしてきた。過去なんだの、馬鹿馬鹿しく思えてくる。


(別に、このままでもいいかな。過去とか未来とか……僕は今、幸せを感じていたじゃないか。そもそも、冷静に考えれば開かずの扉を使うとかもあり得ないな。僕はやっぱりおかしい。おかしかったんだ。僕がどうかしているだけだ……そう、どうかしてる)


「帰ろう」


 違和感を感じるのは考えるからだ。違和感なんて気のせいだと思えば、それでいい。あやふやなのは僕だ。


(僕があやふやなんだ。そうだ……僕が。このままでいいんだ。このままで……)


 僕は考えるのをやめた。考えることに意義などないと気付いたからだ。考えることで苦しむなら、考えなければいい。僕はそのことに気付いたから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ