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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
二十九章 貴方を超えて
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己との戦い

―中庭 夜―

「全然攻撃効かねぇ! 超ムカつくわ!」


 ゴンザレスは、岩の塊の頭の上で地団駄を踏んだ。岩の塊はゴンザレスを払いのけようと、手を頭の上に持って行く。しかし、掴もうとしても、ゴンザレスは跳んで簡単にかわし続けた。


「魔剣でも駄目なら無理じゃん! おい! 攻略法教えろ!」

「知らないよ……」

「は? 全然聞こえねー! もっと大きな声で言いやがれ!」


 知る訳がない。僕はただ、頭に浮かんだ言葉を言っただけ。そうしたら、岩の塊が現れた。その言葉が呪文なのは分かるが、意味までは分からない。ましてや、分からない存在の倒し方など知るはずもない。


「はぁ、はぁ……」


 息が苦しい。胸も痛んで、呼吸がままならない。大きく息を吸い込んでも、またすぐに新たな空気を体が求めた。


(嫌だ……嫌だ)


「おい! って、ぬおっ!」


 ついに、岩の塊の攻撃がゴンザレスに当たった。僕に気を取られていたのだろう。真っ逆さまに、岩の塊の正面から落ちていく。

 今度こそと岩の塊が掴もうとした時、ゴンザレスの姿は消えた。そして、すぐに岩の塊の前に現れる。だが、何故か僕の方に体を向けていた。


「謎……解けたぜ! は~ゲームやってて良かった!」


 それだけ言うと、ゴンザレスは岩の塊に体を向けた。


(は?)


 僕は理解出来なかった。


「まさか、こんな簡単なことだったとはなぁぁ!」


 そう叫びながら、ゴンザレスは飛び上がる。岩の塊の額と同じくらいの高さまで行った時、ゴンザレスは距離を詰めた。


(何をするつもりだ?)


 次の瞬間、ゴンザレスは岩の塊の額に手を伸ばした。すると、光が溢れそれがここまで伝わってくる。どうやら魔法を使ったらしい。でも、流石にこの位置からでは何の魔法を使ったのかは分からない。


「ゴオオオオオオオ!」


 地響きのような声を岩の塊は出した。鼓膜を破りそうなくらい大きな音があまりに不快で、僕は耳を塞いだ。しかし、その声は徐々に弱くなっていく。

 そして、この声が完全に消えた時、岩の塊は項垂れるように動きを停止した。


「あ~この爽快感! 真理ね……は~不幸中の幸いって奴ね。しゃああ! 次はお前じゃあ!」


 ゴンザレスは、瞬間移動を使って座り込んでいる僕の前に現れる。先ほどから激しく動き回ったり、酷い攻撃を受けたり、魔法を使ったりしているのに、ここまで元気になれるのは素直に尊敬する。


「ん? 何でそんな死にそうな顔してんだ? はっは~ん、もしかしてチキってる? 俺の閃きと強さに? 分かる、分かるよ~その気持ち!」

「何を……思い上がってるんだ。僕は……お前を!」


 胸を押さえながら、僕は立ち上がる。突き刺すような継続的な痛みに加え、握り潰されるような痛みが襲った。


「倒すってか! ゴーレムを召喚したのは、流石に体にきてるみてぇだな。ま、俺に慈悲はないから容赦なくぶっ倒すけどな! 時間稼ぎくらいにはなってやる!」


 ゴンザレスは腕を押さえながら、剣を魔法で取り出した。先ほど投げ捨てた魔剣と同じみたいだ。投げ捨てた剣を、いつの間にか回収していたらしい。


「魔剣、誰に貰ったの?」

「貰えるような人間じゃねぇ、俺は自分でこれを作った。強くなる為に……ないなら自分で作ればいいだけだ」


 ゴンザレスは、その剣を構える。


「執念を感じるよ……魔剣を自分で作るなんて、伝説でも作るつもりなのかな? いいな、僕も……欲しかったよ」


 僕も同じように剣を取り出す。その剣は何の力も持っていない。この剣に必要なのは、己の実力だけだ。


「お前には作ってやんねーよ。これ作るの、二カ月かかったし」

「そう、残念。まぁいい。無駄話はこれで終わり。覚悟!」


 振り下ろした剣は、僕らの意思を背負ってぶつかり合った。ゴンザレスの剣が青い光を放っているのに対して、僕の剣はそのものの光だけを放つ。


「手間かけさせやがって……」

「そっくりそのまま返してあげる」


 僕は、笑みを向けた。ゴンザレスを煽り、より力を引き出させる為だ。僕も、手加減など求めていないのだから。

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