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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
二十九章 貴方を超えて
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全てを終わらせよう

―旧館 夜―

 人が通らない可能性の高い場所を選び、匂いを嗅ぎ分けながら僕はやっとここまで辿り着いた。


(幸運だな……)


 もし、人と出会っていたら僕は完全に自我を失っていただろう。目標を達成する前に、暴走してしまう所だった。


(父上に会って、僕は自我を保てるだろうか? いや、保てなくてもいいんだ。僕が勝てばそれで……)


 僕は再び匂いを嗅いだ。父上の匂いは、二階の方から感じる。匂いが濃い。


(やっぱり、こっちにいるんだ)


 安心からか、思わず一人で笑ってしまった。


「フフ……」


 僕は匂いのする方へ、歩みを進めた。進めば進むほど、匂いはどんどん近付いてくる。階段にまで来た時、僕は新たな匂いを感じ取った。


「ゴンザレス?」


 その匂いは、ここから始まり二階に続いていた。


(……いるのか)


 匂いはまだはっきりとしている。僕としては父上がいるだけでいいのだが、ゴンザレスがいる可能性も否定出来ない。そうなれば、確実に邪魔をされてしまうのだろう。そして、僕は何も果たせず消える。それだけは回避しなくてはならない。


(負けたりしない)


 僕は、覚悟を決めて階段を数段飛ばしながら上った。二階に辿り着いた時、二人の匂いが合わさって一つの場所へと向かって行っているのが分かった。僕はその匂いをなぞって進む。


「ここは……」


 匂いの先には、豪華な扉が待ち構えていた。覚えている。ここは昔、鍵がかかっていた場所だ。僕が物心ついた時には、既に開かなかった。睦月や美月すらも入ったことがないと言っていた。その場所に二人がいる。

 僕は、恐る恐る扉を開いた。いや、開いたというより破壊した、だろうか。破壊しようというつもりは一つもなかった。扉を引いたら、吹き飛んでしまったのだ。魔法の制御が出来なくなっていた。少し力を入れたら、こんなことになってしまった。


「いない?」


 派手に現れた僕に対する反応はなかった。匂いは確かにあるのに。二人はいなかった。どうやら、いなくなった後だったらしい。しかし、つい先ほどまでいたことに間違いはない。


「……うっ!」


 頭に激痛が走った。その痛みで、意識がどこかに行ってしまいそうだった。僕はそれをとめるため、舌を思いっ切り噛んだ。

 すると、たちまち意識はここに戻って来た。外部からの痛みを与えれば、何とか自我を保てるみたいだ。


「……目も痛い。急がなきゃ」


 部屋の中は金と赤だけだった。ずっとこの場にいたら、気が狂ってしまいそうだ。こんな悪趣味な部屋誰が作ったのだろうか。鍵をかける理由が分かる気がする。

 すると、冷たい風が部屋の中で吹いた。


「風?」


 窓が開いていた。そこから風が入って来ているらしい。


「どうして窓が……あ、もしかしてここから部屋を出たのか? なんで?」


 僕は疑念を抱きながらも、父上を倒す為に窓から飛び降りた。上手く着地することに成功した僕は、周囲に父上がいないか探す。


「あ」


 少し遠くで、庭を歩いている父上を見つけた。こちらに背を向けて、どんどん離れていく。自分の部屋に戻るつもりだ。


(ここでさっさと終わらせてやる……!)


 時間がない、それは分かった。父上が戻るのを待って、部屋で戦う余裕などなかった。ここで、広いこの場所で全てを終わらせる。

 僕は魔法で剣を取り出すと、風の魔法を使い自身の体を運ばせながら父上へと斬りかかった。

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