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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
二十七章 化け物の正体は
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誤解された犯人

―父の部屋 早朝―

 身の確認を終えた僕は、父上が待つ部屋に来ていた。傷は無事癒えていたし、形跡は一切残っていなかった。

 しかし、父上の前に来るとなると妙に緊張してしまう。全てを見抜かれてしまいそうで。


(最悪、化け物の力を借りればいいが……)


「呑気に寝ていたのか……信じられぬな」

「すみません……」


 第一声から怒られた。僕に出来るのは謝罪だけ。


「まぁ良い。大変なことになっているぞ。お前の……影武者とやらが」

「ゴンザレスが?」


 深夜、僕は見た。あれは夢などではないし、現実だ。ゴンザレスが何故かいて、倒れていた。怪我などはしていなかったようだが、血塗れだったらしい。

 僕がこの目でしっかりと確認した訳ではないが、確認した武者達の声がそう言っていたので間違いない。


「化け物のことでな。一体どこから話せばいいのか……」


 父上は相変わらずの難しそうな表情を浮かべて、腕を組む。


「ゴンザレスがどう大変なのか、教えて頂けませんか?」


 あの場いたゴンザレスが、何かしら良くないことに巻き込まれているのは確かだった。


「……そうだな。完結に言うなら、ゴンザレスが城で散々姿を現してた化け物の正体だと思われている」

「え?」


 城で姿を現していたの化け物……それは間違いなく僕。僕にその時の記憶はない。残ってなどいない。だが、人の姿に戻れた時にある証拠が、僕がそれであると証明している。

 それは、刃物のような物で切られた跡だ。王である僕が、刀や剣などの所持を認められている武者や使用人、王族に斬られることなどない。しかし、その傷があるということは、僕が確実にその化け物になったからということだろう。

 なのに、疑われているのはゴンザレス。何を根拠にそんな疑いをかけられているのだろうか。


「化け物が逃げ込んだ場所に、ゴンザレスが血塗れで倒れていたらしい。無傷でな。こちらも傷は与えたはずであるのに、それが少し引っかかるが……ゴンザレスの口からは肉片が出てきた。周囲にもあった肉片と同じものであった。そして、その肉片を今調べている所だ」

「ゴンザレスの口から肉片?」


(おかしい……何故、ゴンザレスがあの肉を?)


 あの肉は生肉だった。ゴンザレスがそれを食べられるはずがない。しかも、あれはそこら辺の動物の肉じゃない。人間だ。どこかで嗅いだことである匂いだった。匂いばかりは、思い出すことは出来ないが。


「あぁ。そして、さらに気になることがある。ゴンザレスは間違いなく無傷だった。それなのに、大怪我を負ったような感じなのだ」

「は……それはどういう?」


 父上の言っていることが理解出来なかった。


(無傷なのに、大怪我を負ったような?)


「見に行けば分かるであろう」

「分かりました……」


 確かに状況を確認しない訳にはいかない。その化け物の本当の正体は、父上の目の前にいるこの僕であるのだけれど、勿論それを明かせるはずもない。


「城に現れた化け物の正体……いよいよ明らかになる日が来た。まだ疑惑であるが、限りなく黒に近いだろうな。ゴンザレスが来てから、あの獅子の化け物が現れるようになったのだからな」


 それは違う。ゴンザレスが来た時に、僕はあいつに見放されたのだ。それから制御が出来なくなった。化け物になったら、なるままになってしまったのだった。偶然と必然が重なったと言える。


「とりあえず……ゴンザレスの所に行きます。あいつはどこに?」

「魔力無効化することが出来る部屋で一時拘束されている。まぁ、裁判が開かれれば結末は一つだな」


 そう、裁判は開かれる。判決も出る。しかし、それは所詮形式だけのようなもの。もし、僕がそれを望まなかったら、結果など好きなように変えられる。おじい様のように。でも、僕はあんな奴のやったことをしたくない。


「失礼します」


 僕は会釈して、部屋を後にした。複雑な思いを抱えながら。

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