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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
二十七章 化け物の正体は
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子供じゃない

―自室 早朝―

「巽様……あの、巽様……」

「兄様、起きてって!」

「ん……」


 目を覚ますと、二人の少女が僕の顔を覗いていた。僕から見て右にいるのが小鳥で、左にいるのが皐月だ。小鳥は不安そうな表情で、皐月は明るい表情でこちらを見つめている。


「あのね、今すっごい大変なことになってるんだって! 兄様がいないと大変だって! 小鳥ちゃんがね、ずっとお部屋の前でうろうろしてたの。変なの~って思ってね、それでぇ――」

「あぁぁ! も、もういいです! やめて下さい! 巽様! 颯様がお呼びです」


 小鳥は、少し顔を赤くして早口でそう言った。


「父上が?」


 寝ている場合ではない、と僕は起き上がった。父上が呼んでいるのなら、急いで行かなくてはならない。


「はい。お部屋におられますので……」

「分かった。わざわざありがとう」

「い、いえ……私の仕事ですから」


 小鳥は俯いた。先ほどから少し元気もないし、ぎこちない。


(まだ根に持ってるのかな? 味噌汁程度……ふん)


「じゃあ、僕は着替えるよ。僕の半裸なんて見たくないだろうから、二人共部屋を出てくれる?」

「は、はい。承知致しました」


 小鳥は軽く頭を下げると、慌てて扉から出て行った。しかし、皐月は僕のベットから動こうとはしない。


「皐月?」

「家族だからいいでしょ」


(良くないんだよ……傷がどれくらい癒えてるか確認しないといけないのに)


 足の傷が、一番損傷が激しかった。しかし、それ以外にもいくつか傷があった。主に背中辺り。

 流石にそれを確認するには、上の服を全て脱がなくてはならない。が、皐月がいる状態ではまずいだろう。色々不審がられる。


「……おかしいなぁ」


 皐月を追い出す為、僕は一芝居打つことにした。


「おかしいって何が?」


 皐月は頬を膨らませる。


「皐月って今何歳だっけ?」

「八歳!」


 皐月は笑顔を浮かべ、指を八本立てる。


「八歳かぁ~じゃあ仕方ないかなぁ」

「仕方ないって何が?」

「皐月は子供ってことさ。まぁ、八歳だかね。八歳は子供だよね。兄の裸を見ても、何とも思わないんだから。いや~ごめんね、悪かった。じゃあ、今から――」


 見る見る内に、皐月の顔が赤くなっていく。僕は知っていた。子供扱いされることを皐月を望んではいない。子供扱いをしたら、こんな風に怒る。


「もーーーー! 皐月は子供じゃないもん! 兄様の馬鹿馬鹿馬鹿!」


 皐月はベットから宙回転して飛び降りると、そのまま荒々しく扉を開けて部屋から出て行った。こうなったら、皐月は一週間は根に持つ。

 皐月を傷付けてしまったことには変わりがないので、後でお菓子でもあげよう。お菓子をあげたら、いつも機嫌を元通りにしてくれる。


「はぁ……」


 一息吐いた時、僕は思い出した。


(瞬間移動したのに……どうして僕は平気なんだ?)


 普通に眠っていたし、苦しくもない。昨夜のことはいまいち思い出せない。覚えているのは、ただ必死で腐った肉を食べたことだけだ。


(これも化け物の恩恵か? まぁいいか。無事なら)


 僕はベットから降りて、タンスへと向かった。

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