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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
二十六章 壊せ奪え
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彼の正体を僕は知らない

―中庭 昼―

 ゴンザレスが突然、倒れてしまった。急に頭が軽くなったな、と思ったら鈍い音が背後でしたのだ。


「あらら……」


 白目を向いて倒れているのは、かなり気味が悪い。まるで、自分がそのように倒れているように見えて不快だ。とりあえず、手をかざして目を閉じさせた。


(よし)


「ゴンザレスを、医務室に運んでくれ」


 近くにいた武者に頼んだ。


「承知致しました」


 武者は軽々とゴンザレスを持ち上げると、そのまま城内へと消えていった。


「巽様~! これは一体何のお祭り騒ぎなんですか~!」


 庭の向こうから、手を振りながら走ってくる奴が見えた。呑気で楽しそうな声だ。それは前、僕を必死で避けていた人物だ。それなのに、それをもうすっかり忘れてしまったようだ。


「智さん……いたんだ」


 彼の正体はよく分からない。シャーロットさんの弟子で、僕とはかなり違うが化け物の影響を受けてしまっているらしい。目が極端に悪いようで、眼鏡をかけている。また、彼は物真似が上手い。物真似の域を通り越している。時に、そのせいで自分を見失ってしまうらしい。そして、彼は馬鹿だ。


「凄いです~! 是非、絵にしたいです!」


 智さんは、あんなに全速力で走って来ていたというのに疲れた素振りすら見せず、目を輝かせ僕の前で跳ねていた。


(事故だと思ってない? 影響を受けていない? 同じ化け物だからか? 酒を飲まないのか?)


「あの、智さん。これってどうして起こったと思いますか?」


 探りを入れてみることにした。


「どうして? どうして、それを私に聞くんです? 私は知りません」


 智さんは、不思議そうに首を傾げる。


(やっぱり……)


「あれ、巽様の目って……私の思い違いですかね? 最近、記憶が飛ぶことが多くて……いや、こんなことはいいんです。それより、この爆発ですよ! もっと近くで見ていいですか? ありがとうございます!」


 僕は許可もしてないし、何も言っていないのだが、智さんは勝手に塔のあった場所まで走って行ってしまった。

 別に何もないし、描きたければ描けばいいだろう。摩訶不思議な事故の絵を後世にまで届ければいいだろう。そして、教科書の挿絵にでもなればいい。


「龍……兄弟がいるって言ってたよね。他の龍が彼の中に? 例えば、不老にでもなるような力を持った……」

「巽様、どうかされました?」


 近くの武者に声をかけられた。考えていたことが口に出てしまっていたようだ。


「なんでもないよ。気にしないで。作業頑張って」


 この独り言を聞かれてしまったのはまずい。あまりこの場に留まっていたくない。僕は一刻も早く、この場から立ち去ることにした。

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