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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
二十五章 破滅の道へ
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今出来ること

―琉歌の部屋 夕刻―

(くだらないな……まぁ、ここに置いておいてもしょうがないし、僕の部屋に保管しておこう)


 本当なら、さっさと魔法を使って物だけでも部屋に移動させるか、空気と同化させ保管するかしている所だ。だが、生憎僕は今魔法を使えない。本来の力を取り戻すためにも、小鳥から新鮮な肉を受け取りたいものだ。


(とりあえず、部屋に戻って……古い肉でも食べようか)


 僕は琉歌の部屋を後にした。

***

―ゴンザレス 御霊村の裏山 夕刻―

 予想通り、小鳥はここに現れた。姿を見てちゃんと無事を確認出来たが、小鳥の体はボロボロだった。


「酷くない? 一応、俺相棒でしょ? 帰って来たなら帰って来たって言ってくれよ。こっちはどれだけ心配したと思ってんだよ。お前は、俺とは違って……死んじまうことだってあるんだろ。それにその傷、本当は歩けるほどじゃねぇだろ」


 俺は小鳥が生還してきたことを知っていた。近くにいると、何となく分かるようになった。これって愛の力かな。なんて冗談はさておき、本当は元々そういう仕組みなのだ。小鳥が近付いてくると、ビビッと来るのだ。それは小鳥も同様だ。これでお互いにやり取りする。鳥族の力の恩恵を受けたテレパシー的なやり取りだ。まぁ、言葉を交わせる訳ではないが。


「急いでて……別にそんな訳ではなくて……その……」


 俺が前、十六夜とか言う奴に利用されてしまったのは、俺が小鳥に抱いた疑念のせいだ。そのことで小鳥は自身を責めている。別に小鳥が悪い訳ではないと、俺は何度も言っているのだが優し過ぎるんだろう。だから、小鳥は今弁明をしている。


「責めてんじゃねぇよ。ただ、さ……仲間だろ。無事だったら顔くらい見せてくれよ」


(お前がここに来たのは、あいつのためだろ。分かるんだよ。ここの山に来るってことはそういうことだ。お前が帰って来たら、きっと俺より先にあいつを会おうとすることも分かってた。でも、あいつのあの目を見たら分かる。あいつはもうあいつじゃない。そんなあいつが普通に接するとは思えないし、こんな姿の小鳥を見ても労わるとは思えねぇ。寧ろ、こき使うって思ったが……完全に正解か)


「で、巽のための餌をここに取りに来たんだろ? あいつも鬼だねぇ……人間の心を持ってたら、普通はこんなことさせねぇよ」

「……私のせいです」


 小鳥はその場に座り込んだ。しゃがみ込んだせいであるとはいえ、それ以上に小さくなってしまったように思えた。強風が吹き荒れたら、この場から簡単に飛んで行ってしまいそうだった。


「また巽様の手を掴めなかった……何のために私は……」


 小鳥があいつを監視していたのは、化け物の目覚めを防ぐためだった。化け物は巽にとっての苦しみや憎しみ、怒り、あらゆる負のエネルギーがその化け物の力になる。こうなってしまったことは小鳥の失態だ。


「しゃーねよ。起こることはそう簡単には変えられねぇんだ。今は、今出来る最善のことをやろう」


 俺だって失態だらけだった。俺が小鳥を怒る資格などない。俺が今出来る最善の策、それは小鳥の手助けをすることだ。どんなにどん底でも光は差し込むはずだから。陸奥さんが光になってくれたように、今度は俺がこいつの光になる――。

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