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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
二十三章 海の向こうの国へ
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しょぉのえんたぁてぃなぁ

―ホワイトハウス 昼―

 用意された料理は、ご馳走と呼ぶのに相応しい物だった。全体的に肉料理も多かった。見たことも聞いたこともないような料理ばかりだった。

 しかし、一部僕も食べたことのあるものもあった。例えばステーキと呼ばれる肉料理だ。ただ、量と大きさが段違いだった。もし、あれが朝に出てくると想像したら吐き気がする。料理長は絶対ここに来てはいけない。留学なんてさせてなるものか。あの料理長には風の噂で十分だ。


『巽、結構な量を食べたね。細い体からは想像出来ない』


 食事の後、一人の女性を大統領は指差した。彼女の手には、数十枚の皿がある。


(まさか僕の食べた皿の分……?)


 そういえば、彼女が全て僕の皿の分を回収してくれていたような記憶がある。美月の分まで食べなくてはと、半ば投げやりに料理を口に入れ続けた。朝、食べた物を全て吐き出してしまった可能性があるのでその分も。

 僕は元々小食なので、これは地獄。ただ、僕が選んだ道に美月を巻き込んでしまった。その責任を僕は負う。平和で安全な世界になったその日には、いつも通りの日常を捧げる。それが僕の償いだ。


「ハハ……食べないといけないんです」

『まぁ、巽は若いからね。それに沢山動いているだろうし、必要な栄養量だろうね。そういえば、寧々もよく食べてたなぁ……巽ほどじゃないけどね」

「え、母上そんなに食べるんですか?」


 僕の記憶する限り、母上はそこまで馬鹿食いしていたことはない。あまりおかわりをする姿も見たことはない。こっちの食事の方が好みだったりするのだろうか。


『まぁ、彼女がまだ十代の頃だったからだろうか。あと一つ言いたいことがあるんだ。さっきから、ずっと思っていたことだ』


(母上は十代の頃から海外に……)


「え、な、なんですか?」


 母上のことで気が取られていたが、彼の表情はどこか不機嫌そうだった。


(どうしよう。僕何か失礼なことを? もしかしたら僕の使命は……)


 穏やかな気分から一転、焦りへと変わった。まだ、まともに会話をしてすらいないのに。食事の仕方がまずかったのだろうか。

 記憶する限りの食事の規則は守ったはずのだが、どこか記憶違いがあったのかもしれない。


『私は丁寧に話されるのが嫌いなんだ。慣れなくてね……違和感を感じる。対等であるべきだ。そうだろう? まるで他人行儀みたいだ』


 なんと彼が不機嫌な表情を浮かべていたのは、僕の言葉遣いが原因だった。米国の偉い人と話すのだから、敬語を使うべきだと思った。しかし、それが嫌だったらしい。


「そ、それは……すみません。え、えっと……」

『ん~クリフでいい。私の方が本来は丁寧な言葉遣いをしなくてはならないことは承知している……だが、巽とは対等でありたい。遠い距離のままであるようで嫌なんだよ』

「分かったよ、クリフ」


 僕は、なるべく人には敬語を使うようにしている。使わないとすれば使用人や大臣や姉弟くらいだ。だから、少し違和感を感じたが不愉快な思いをさせる訳にもいかない。


「ショーの準備が出来ました、会場へどうぞ」


 扉が開けられた音がした。その先にはラヴィさんが立っていた。どこかにいなくなっていると思ったら、準備の方に回っていたのか。


「しょぉ?」

『つまらない物を見せてくれるなよ』

「大丈夫です。国で一番のエンターティナーですから」

「えんたぁてぃなぁ?」


(知らない言葉ばかりだ)


『どうだか……散々裏切られて来たからな。今回は客人もいる。くだらない物を見せても仕方がない。失態を見せるようなら……フッ』


 しょぉとえんたぁてぃなぁは、人がやるものなんだろうか。言語は難しい。世界が広いからか、僕が馬鹿だからか。言語は理解することは出来そうにもない。

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