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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
四章 与えられた休養
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不変の出来事

–自室 昼―

 僕の脳裏に浮かんだのは最悪の事態。

 睦月の婚約者は、異常なほど睦月を溺愛していた。もし愛が憎しみに変わったら向こうは何をしてくるか、そんなの容易に想像出来てしまう。


(駄目だ! そんな事をしたら国まで巻き込んでしまう……! 早く止めないと!)


 僕は窓を覗き込んだ。しかし、もう二人の姿はなかった。


「くっ!」


 でも、白昼堂々と流石には行かないだろう。夜の方が闇に紛れることが出来るし、見張り以外はいないから行動もしやすい。


(でも、あんなに分かりやすくやっていたら、すぐに誰かに気付かれてしまう。というか、僕が気付いてるくらいだ。誰かに絶対気付かれてるよ。とりあえず二人を説得しよう。どこにいるのかな……)


 僕は、窓から飛び降りようと身を乗り出した時だった。


「あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!」


 体に電流が流れた。治りかけの傷口に激しく染みる。目の前には光る壁があった。


「結界っ! 誰が……!」


 扉の方も確認したが、同じように結界が張られていた。


(今までも散々人が出入りしてた。僕だけが出られないようにするための結界か? でも、結界を張れるような魔法を使う人物なんて小鳥の母親くらいしか、この国ではいないはずだ)


 結界は、かつては使えて当然の魔法だった。だが、その結界を張るには自身の魔力を激しく消耗する。危険だから、使うことが今では禁じられている。僕も習ったことがない魔法、禁忌の魔法だ。

 小鳥の母親も、かつてその力を消耗し過ぎたせいで簡易的な魔法しか使えなくなった。もし、今使っていたとするならば死んでしまうだろう。これだけ強力な結界など今の彼女には出来ることではない。他の何者かであることに間違いない。


(でも行かなきゃ、そうしないと皆が危ない……!)


 魔法に完全なる強さを持つ魔法は存在しない、必ず何かに負ける仕組みになっている。その魔法が暴走しないよう、互いに打ち消しあっている。

 結界は強い意志と、魔力を使っている。それを壊すには、自分の強い意志を魔力に変えて、魔法を使うしかない。僕は意識を自身へと集中させる。


(絶対に出る。この結界を破壊して二人の暴走を止める……! 王である僕が守らなきゃ、王がこの国を守らなきゃ、二人に壊させたりなんかさせない……絶対に!)


 体中に魔力が満ち満ちていくのを感じた。

 そして、再び僕は足を踏み出して、思いっきり結界の張られた窓へと突進した。電流が抵抗を見せるように僕に走る。


「邪魔をするなぁあああああ!」


 思わずそう叫んでしまった。


(恥ずかしいな……誰も聞いていませんように)


 そして、結界は僕の前に崩壊した。


(結界ってガラスが割れるように壊れるんだ、綺麗だな)


 僕は、ゆっくりと宙を舞いながら地面へと着地をした。奇跡的に庭には誰もいなかった。僕の部屋の近くにいた人には聞こえたかもしれないけど。いつもより低い声になってしまったから、ゴンザレスと勘違いしてくれるだろう、多分。

 僕は、自身の額に手を当てる。そんなに熱くはない。多分、平熱だと思う。思えばいい。


「もう熱はないかな。よし。でも、他の誰かに見つかると厄介だな。どうしたものか……」

「……おい」


 背後から息を切らしたような声が聞こえた。あえて、低くしているこの声は……一人しかいない。

 僕が振り向くと、案の定そこにはゴンザレスがいた。


「あっ、ふふっ……」


 妙案を思いついた。


「お前、何笑ってんだよ……」

「ごめんね。少しの間だけ眠っててよ」

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