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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
二十一章 鳥かごの鳥は、遠い外の世界を夢見る。
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彼女の誓い

―琉歌の部屋 昼―

 ベットで苦しそうに息を乱す琉歌の手は、熱した鉄板のようだった。


「琉歌は一体……」


 僕がゴンザレスの星の話を聞いた後、部屋に戻ろうとしたら、なんと部屋の前で琉歌が倒れていたのだ。その時既に体は熱く、目の焦点が定まっていなかった。

 町から慌てて一番の医者を呼んで貰ったのだが、診断するのにここまで時間がかかるとは思わなかった。


「汗などを採取した結果、毒物の成分が見つかりました」


 藤堂の一番弟子だった佐藤さんは、神妙な面持ちでそう言った。彼女は藤堂さん亡き今、この国一番の医者だ。


「毒物?」


(食事に盛られたのか? だとしたら犯人はこの城の中に……)


「えぇ……ありとあらゆる毒物が。飲み込めば確実に死んでいたでしょう。彼女の体の至る所に炎症の跡がありました。そこから大量の毒物が侵入したと考えてよさそうです。一体どこでこんな物を……」


 彼女は、前髪を鬱陶しそうにかきあげた。


「肌から侵入したということですか?」

「えぇ、神経から徐々に侵入してくる性質の奴です。でも、これ素人が作ったみたいですよ。素人が作ったにしては上出来ですから、誉めてもいいですけど」

「職人が作ったらどうなるんです?」

「肌から入ろうが、喉から入ろうが、どっちにしても死にますよ。即死。まぁ、どちらにしても恐ろしいことには変わりはありませんが、チッ」


 あからさまに舌打ちをすると、琉歌の頬に撫でるように触れた。


「琉歌はこれからどうなるんですか……もう歩けなくなったりとかしないですよね?」


 苦しそうに肩で何とか呼吸をしている琉歌を見ると、心が痛んだ。代わってやれるものなら、代わってやりたい。


「それはないです。でもまぁ……しばらくは苦しむことになるかも。完全に治るのは一カ月くらい必要だと思いますね。これから一週間は、意識があってもないようなものだと思ってくれた方がいいですよ」

「どうして――」


(琉歌がこんな目に遭わないといけないんだ? 誰がこんなことを? 何の為に? 許せない……)


 怒りを抑え込もうと握った手が震えた。それに気付いたのか、彼女は優しく僕の手を包み込んだ。


「この方が何者であるのかも、王様にとってどれほど大切な方であるのかも、私は分かりかねます。ですが、これだけは約束致しましょう。医者というこの職業に、私の名に、そして偉大なる師の名にかけて、この方を救います」


 彼女の向ける眼差しは強く、包み込むその手はとても温かかった。


「私という二番煎じがここに呼ばれたのは……師に何かあったのでしょう。まだ公には出来ない、恐ろしいことが。師に劣らぬように誠心誠意治療させて頂きます。どうか、信じて下さい。王様」

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