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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
二十章 穏やかな日々
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確執

―自室 夜―

 結局、全部を食べ終わるのに夜までかかってしまった。皐月はお腹いっぱい食べたし、食べさせたしで満足したのか、僕のベットの上で寝息を立てながら心地良そうに眠っている。


(晩御飯はいいや……小鳥に言わないとって、そういえば、小鳥は大丈夫なんだろうか? 結局、あの騒動のことを聞くのを忘れていた。不安だなぁ……)


 はち切れそうなお腹を摩りながら、僕は息を吐いた。


(とりあえず、皐月を部屋に持って行くか)


 僕は、皐月をすくうように持ち上げた。まだ軽いから魔法を使わなくても、簡単に抱き上げることが出来る。


(大きくなったなぁ)


 皐月と出会った時、皐月はまだ一歳だった。母上の連れ子としてこの城にやってきた。だから、皐月は王族としては公式に十五歳未満で一度城の外にいたことがある人間だ。

 だが、物心つく前であった為に覚えていない。だから、外への好奇心が抑えられず飛び出してしまったのだろう。

 

(あ、白髪がある)


 髪の部分を見ていると、数本の白髪があった。


(苦労してるんだね……後で、抜いてやるように言っておかないと)


 僕は知っている。皐月が、ここに来てどれだけ苦労してきたか。一つ例を挙げるなら、父上とおじい様達の確執だ。母上と父上との再婚は認められた。

 しかし、母上の連れ子であった皐月を宝生一族として迎え入れることを、王族以外の血が入っていることを良しとしないおじい様とおばあ様が許さなかったのだ。母上は肥前国の王女であった。皐月の本来の父親に問題があった。父親は農民から駆け上がった人物であったのだ。

 父上は反発した。父上は二人の命令を拒否し、皐月を自身の子供として受け入れた。その時、初めて皐月に皐月という名が与えられた。

 だが、騒動は収まらなかった。反発したおじい様達は城を出て、その二人との関係が深かった貴族達は露骨に皐月を差別するようになった。僕の見える所では大人しくなったものの、完全に落ち着いたとは言い難い。見えない所で、陰湿な攻撃をしている可能性が十二分にある。


(醜いよ……本当に醜い)


 貴族の最大の後ろ盾は、その二人だ。僕は、二人にどう抵抗していいのかも分からない。純血を良しとする彼らをどう納得させればいいのか、未だに分からない。ただ一つ、その争いは醜悪であるということは分かる。

 幼い子供にいい大人達が攻撃をする。抵抗する力の弱い子を、寄ってたかって苛めている。そんな人たちが親族でもあり、身近にもいることに腹が立つ。


(守ってやる……僕が僕でいられる限り。この国が存在する限り)


「誰が何と言おうとも……僕らは兄妹で、家族だ。絶対に……」


 幸せそうに僕の腕の上で眠る皐月に向かって、そう呟いた。

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