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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
四章 与えられた休養
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記憶を辿れど行きつく先は

–自室 昼–

 僕は、昼食としてお粥とリンゴを食べた。食欲はあったのだが、味覚はまだ治っていないらしく無味だった。食べても食べても何故だか味がしない。これはしばらく治るまで、かなり辛いかもしれない。


(彼女……小鳥って美月が呼んでたな)


 なんやかんやあり過ぎて歌のことは聞けずじまいだった。「夜も来ます」と言って、出て行ったから夜に聞こう。


(それにしても、あのペンダントはなんだったのだろう?)


 何故、あんなものが僕の部屋にあったのだろう。小鳥が聞いてくれると言っていたが、本当にあの二人のどっちかの物なのだろうか? しかし、何度考えてもそうとは思えない。

 美月はあんな輝いている物はあまり好まない。装飾品も嫌がるし、輝いている物、宝石なども派手だから嫌だと我が儘を言って、よく使用人達を困らせている。

 昔、何故そんなに嫌なのか? と僕が尋ねたことがある。すると親指を立てながら、真顔で美月は「しんぷるいずざべすと」と言った。棒読みと不慣れな英単語を使ったせいか、いつも以上に酷くて、僕は大爆笑をしてしまった記憶がある。それがきっかけとなって、喧嘩となり僕に沢山の拳が飛んできたのを覚えている。今思い出しても本当に痛い。


 僕らは昔、顔を合わせるたびに喧嘩をしていた。当時の新聞やらを見ると、僕が無残にもやられる姿を激写した写真が晒された。癒し要素のある場面として記事に掲載されていた。そんな要素なんて一つもないのに。でも、人気だったらしい。

 昔、城に専属の写真家がいてよく撮影していた記憶がある。今はいないけど。


(今もいたら、半裸姿でミミズに怯える姿を晒されていたのかもしれない……)


 写真というのは言い逃れを出来ないくらい強い証拠を残す、嘘やごまかしを簡単に覆す力もある。だからこそ、とんでもない写真を撮ってしまった時、撮影者は狙われるのだ。

 あの女性は不運だったと思う。あの女性は、思わず僕がいたから思わず撮ってしまった。僕の話の相手を確認せずに。

 そして、名実共におじさんは犯罪者になった。元々色々あって数え切れないほどの疑惑があったおじさんは、皆から避けられていた。近付くなとも言われていた。

 だけど、僕はそれに従うことが出来なかった。今思えば、おじさんの策略に完全にハマっていただけなのだろう。悲しいけど。


(犯罪者になって、遂には国を危機に陥れて、それでも帰国し平然と民を……)


 でも、国を危機に陥れた時、あの人は心から衝撃を受けたような顔をしていた。まるでそれを望んでいなかったように。

 それに、あの人は言っていた「ちゃんと力を身につけ、君を治す」と。


(駄目だ。分からない、あの人がどこまで真実を言っていたのか)


 今度、あの人に会える時、僕は僕でいれるのだろうか? 自信がない。それに、もう僕があんなことになっても確実に治してくれる人がいない。

 もし、僕がそれになる瞬間を誰かに見られるだけでなく、写真にされてしまったら、それが後世にまで残り続ける。とんでもない王だったと馬鹿にされ続ける。それに、あの人が持っているであろう接触している写真なんかもばら撒かれたら?

 僕どころじゃない、皆も疑われてしまうかもしれない。


(どうすればいい? どうすれば?)


 また、過去のことを辿ってしまうと、結局あの人にまで行きついてしまった。それだけ僕にとって密接で、重要な人だったのだろう。


(もしかしたら、僕って見る目ないのかも)


 きっと、壊滅的なくらい。

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