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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
十八章 掌の上で
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夕焼けに混じって

―城下町上空 夕刻―

 僕の目の前にいる人数は、ざっと数えて二十人。体格は小柄で細めの若い男性が多い。恐らく速さを意識した人選であろうと思う。


「おやぁ? 王様自らとは……よほど余裕がないんですなぁ」


(ん?)


 先頭にいた眼帯の男が言った。その独特な訛りから一瞬何を言ったのか分からなかったが、言葉を繰り返し脳内で再生してようやく理解することが出来た。


「お前達の王様は何をしている?」

「我らの王は戦艦に乗って悠々とこちらに向かっておる。まぁ、あの方の出る幕もなくここであっこの首を取る。わざわざあっこから来てくれるのは助かったなぁ」


(あっこ? あっこの首……名前って訳じゃないし、お前って意味か? 所々に方言もあるし、全体的に訛ってるし、一瞬じゃ中々聞き取れないな)


 僕にも分かるように、標準語を使ってくれる優しさはありがたい。もしかしたら、樹の指示なのかもしれない。ただ、訛り過ぎて入ってこない。


「一々色々言ってこなくていいよ、それよりさっさと白黒つけようよ」


 薩摩国の王である樹がここにいない以上、長話をしてもしょうがない。さっさと片付けて港の方へ移動したい。


「さっきから時差があるのが気になるが……いいだろう。その首、貰う!」


 先頭の男性が叫び、こちらに向かって手を伸ばす。すると、周囲の男性達が逃げられないようにする為か、箒に乗って僕を囲った。


(樹は、本当に頑張って標準語を話していたんだなぁ……)


 彼が標準語を勉強しても使う機会はほとんどないだろう。あるとするなら、それは他国との交流の時くらい。しかし、現状として方言を所有する国々は標準語を使う人は少ない。

 これは僕の憶測にすぎないが、彼は睦月の為だけに標準語を勉強していたのではないだろうか。もし、あのまま事が進んでいれば今頃、睦月は樹の下へ嫁入りしていた。睦月が少しでも安心して暮らせるように努力をしていたのではないか、そう考えてしまう。


(まぁ、いいか)


 今は、目の前のことに集中しなくてはならない。


「いい柵だ……綺麗に並んで、一定の間隔が保たれている。壊しがいがありそうだね」

「何を訳の分からぬことを……この囲いを抜け出す前にあっこは死ぬんだよ!」


 目の前の男性の手から、鋭いゴツゴツした岩が大量に飛んできた。僕はそれを風で逸らす。逸らした岩は囲いの者達へと向かっていった。


「うぎゃぁ!」


 どうやら、一人に当たってしまったらしい。


「◎◆▽☆●○★!」


 目の前の男が鬼の形相で、その人物を叱った。


「♡○▽!」

「あーもう何言ってるのか分からなくてイライラしてくるよ……まとめて焼き払ってもいいよね?」


 自身の手を見つめると、僕の手から赤い炎が吹き上がる。


「○▽×◆!」

「◆×▽!」


 しかし、僕のそんな様子には気付かずに言い争いを始めた。かなり眩しくなっているはずなのだが、夕焼けと混じっただろうか。その言い争いの火は、柵全体に広がってしまっているようだ。


「まとまりがないにもほどがあるね。慊人が言ってた雑魚って、これのことかな」


 僕は、男性達が炎に飲み込まれていく様子を想像しながら手を天に向けた。すると、僕の手から飛び出した炎は噴水のように上へと舞い上がると、未だ口論を続ける愚かな雑魚どもを一瞬にして飲み込んだ。

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