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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
十八章 掌の上で
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終わらせる為

―城下町上空 夕刻―

 ここからだと城下町全体が見渡せる。いつもの賑やかな城下町とは違い、不気味に静まり返っている。国民達は地下か、城内に避難させた。だから、武者達が歩いているくらいで他は誰もいない。

 そして、城からでは一部しか見えない為に分からなかったが、よく見れば城下町は六角形の形をしていることに気付いた。城を中央にして、その角には同じ塔が建てられている。


「ねぇ、城下町って六角形に作られているの?」


 隣にいた陸奥大臣に聞いてみた。


「真剣な表情で何を考えておられるのかと思っていましたが……これは子供の頃に歴史で学びましたよ」


 陸奥大臣は、呆れ笑いを浮かべた。


(この国のことにはあまり興味がなくて、まともに聞いてなかったんだよね……全然記憶にない)


「これは武蔵国の初代当主が何らかの儀式のために、このような形にしたという言い伝えがあります。事実はどうかは分かりませんがね……」

「儀式か……この国に伝わる儀式なんて呪い――」

「巽様、戦いの前に他のことを考える余裕はありません。これからのことに備え、精神統一です」


 僕の言葉を遮った後、陸奥大臣は深く息を吸い目を瞑った。


(面倒だな……さっさと来たらいいのに)


 退屈過ぎて欠伸が出る。隣で集中している陸奥大臣に気付かれないように、手で口を覆い隠した。

 その時だった、遠くから鳥の甲高い鳴き声が響いた。


「薩摩国の軍です! 既に海では大砲などの撃ち合いが始まっていると伝達がありました! 西の空より箒に乗った集団が計り知れない速度でこちらに向かっているそうです! 皆様、備えて下さい!」


 その後すぐ熊鷹が鳥の姿のまま、城下町全体に響き渡る声で言った。そして風に乗って、港とは反対方向へと飛んで行った。他国を経由してこないとも限らない、その為の確認だろう。


(そうか……さっきのは鳥族同士にだけ分かるって奴か。素晴らしいな)


「さぁ、巽様! 覚悟を!」

「とっくに出来てるよ」


 心が躍る。一体どんな惨劇が見えるのだろう、一体どれほど相手は強いのだろう。薩摩国の人間はどれくらい美味しいのだろう。


(嗚呼……想像するだけでお腹が空いてくる)


 肉を食べると、自然と僕の力も上がる。それは動物であっても人であっても同じ。倒した敵は、僕にとっての獲物。無駄にするつもりはない。全てを利用するつもりだ。


「血が……騒ぐよ」


 東の空に、小さな粒が見える。影になってはっきりとは見えないが、ついに始まるのだ。やがて、その粒は徐々に大きくなっていく。箒に人が乗っているのだと、この目ではっきりと認識出来る。


(これで勝てば睦月のことは片付くはずだ。だから絶対に――負けない)


「巽様!?」


 陸奥大臣が僕の名前を叫んだ。だが、それを気にせず僕は風に身を任せ、箒に乗った集団の方向へと突進した。

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