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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
十七章 迫る危機
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支配、掌握

―自室 十年前―

「おじさん、王様に必要なことって何ですか?」

「必要なことか……」


 おじさんは、椅子にふんぞり返って足を組みながら、僕の質問に対して考えるような仕草を見せた。


「はい、おじさんなら分かりますよね?」

「颯に聞けばいいではないか。今の王はあいつだ」


 おじさんは鼻で笑った。そんなこと僕には出来ない、僕なんかがきやすく話しかけていいのだろうか。それに仕事で忙しいだろうし、きっと邪魔だ。


「おじさんしか頼れる人がいないんです……父上のことを理解されている、おじさんしか」

「フフ、そうかい」


 おじさんは、誰よりも父上のこと理解していた。怒ってる時、嬉しい時、悲しい時、今何をして欲しいかなど簡単に見抜くのだ。僕はおじさんを尊敬する、父上の次に。


「王様はそうだなぁ……全て支配し掌握する存在だな」

「支配……掌握?」

「そう。圧倒的な力で人々、国を支配するんだ。今の颯にはあいつにはそれが出来ている。それは、力があるからだ」


(父上は強いんだ……でも僕は……)


 自身の掌を見つめる。父上のような力強さは微塵も感じない。


「でも、僕は弱いです。強くなれません、美月にもいつも負けてしまいます。睦月に助けて貰ってばかり……」


 目の奥から涙が込み上げてくる。必死に抑え込もうとするも、それが反動となってさらに涙が湧き上がる。

 そして、ついに堪え切れなくなって絶え間なく涙が零れ落ちていく。


「強くなればいい、単純な話だ。こっちへおいで」

「強くなれますか、僕が」


 おじさんは優しく微笑んで、手招きした。僕は涙を何度も拭き取りながら、おじさんの所へと向かった。前に立った瞬間、おじさんは僕を引き寄せて膝の上に座らせた。


「あいつの血を引き、王になる宿命の男が弱いはずがない。まだ目覚めていないだけ……この私が君の新の力を目覚めさせてあげよう。強くなれば病気も治る。それに王として相応しくなれる、国の全てを支配出来るんだよ」

***

―小鳥 巽の部屋 昼―

(どうしたんだろう……お昼今から食べたいのかな?)


 しかし、目の前の巽様からそんな様子は微塵も感じない。巽様は目を瞑って椅子に身を委ねるように座り、足を組んでいる。


「あの……巽様?」

「小鳥、藤堂さんに伝えて欲しいことがあるんだ」


 目を閉じたまま、巽様はそう呟くように言った。


「なんでしょうか?」

「上野国に行ってあの奇病について研究しなさいって伝えて欲しいんだ、今すぐに。準備が出来たら早急に出発させて欲しい」


 あまりにも唐突過ぎて、私は言葉を失った。


「いいね? それだけだから」


 それだけ言うと、巽様は椅子をクルリと回して背を向けた。


(よく分からないけど、巽様からの命令だし……ちゃんと伝えなきゃ)


「承知致しました。失礼します」


 巽様に礼をして、私は部屋を後にした。

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