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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
四章 与えられた休養
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誤解発生

―自室 昼―

 刹那、両目の激しい痛みに僕は襲われた。


「あ゛あ゛あ゛っ゛!」


 僕は、目を押さえながら倒れた。その時気付いたのだが、いつの間にか上半身の分だけ上げられていたベットは元に戻されていた。そのまま僕はベットの上で悶え苦しむことしか出来ない。


「ううううううううう……」

「おはよう」


 美月の抑揚のない声が聞こえた。


「何で……こんなっ……」


 目を開こうと頑張ってみたのだが、何度やってもすぐに閉じてしまう。自然と目が潤んで、さらに目がしみる。


「扉を叩いても返事がないから。それで部屋に入ってみたら、巽が目を開けながら座ってて微動だにしない、ベットを倒しても倒れない、怖いから目潰しをしてみただけだよ」

「意味が分からない……失明したり菌が入ったりしたら、どうするんだよっ!」

「大丈夫。ちゃんとこの部屋に入って、ちゃんと消毒したもの。最初に触ったのが巽の眼球だし。失明しない程度にちゃんとやったから問題ないよ」

「そういう問題じゃない!」

「じゃあ、どういう問題なの?」


(駄目だこりゃ)


「もういいよ……」


 すると、急に重みを感じた。


(あれ? 何だ?)


 目の痛みが少し引いてきた為、僕は今の状況を確認しようとゆっくりと目を開いた。


「はっ!?」


 目の前のぼんやりとした光景に僕は動揺を隠せなかった。何故なら、美月が僕に覆い被さるように上にいるのだ。

 顔をさらに美月はさらに顔を近付けてきた。美月の息が僕の顔に何度も当たる。


「ち、近いよ! 何してるんだよ!」


(この状況を他の人が見たら、間違いなく誤解が……!)


「見てるの。改めて顔だけ見たら女の子にしか見えないね、可愛い。声もどっちでもいける声してるしね。いくら成長したって、そういう所は変わらないんだ」


 可愛いとか女の子。それは幼い頃、僕がよく言われていたことだった。それだけじゃない、女々しいとか乙女とか、生まれてくる性別を間違えたとか、記者達や周囲の者達がうるさかった。そして、本当に嫌だった。

 僕は男なのに、見た目や声だけで、そんな風に言われるのが苦痛だった。でも、自分でも分かっていた。僕には男らしさも強さも微塵もないことに。喧嘩でも、何度も美月には力負けし、僕はいつも泣いて母上や睦月に解決してもらう。情けなかった。

 やがて、僕らは成長して喧嘩をしなくなった。その間に僕は成長した。強くなった訳ではないが、弱いなりに頑張っている。

 あの頃とは違う。違うのだ。


「……馬鹿にしてるの? 僕は男だよ」


(ミミズのことと言い、僕を苛々させて何をしたいんだ? 美月は)


「そんなことは分かってる。私最近不安だったの、見えているものが見えている通りなのか。でも、やっと分かった。見えないように、ううん、見せたくないんだって」

「は……?」


(見えている、見えない、見せないとか……さっきから、一体何がしたくて、何を言いたいのかさっぱり分からない。美月は大丈夫なのか?)


「どうしてこうなっちゃったのかな、ねぇ、いつからなの? 心からわ――」


 美月の言葉を思いっきり遮るほどの勢いで扉が開いた。僕らが扉の方を見ると、そこにいたのは凄い形相でこちらを見るゴンザレスだった。

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