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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
十七章 迫る危機
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何でも

―自室 昼―

 ホヨは尻尾を下げて、萎れた花のようになってしまった。


(どうしてだろう。まぁいいや)


 僕は鏡の前に移動する。確かに、僕の瞳は黄色く輝いていた。勿論、普段の僕の瞳の色は黒だ。すぐに皆にバレてしまう訳だ。

 鏡に近付いて、目を凝らし自身の瞳を観察する。まるで、最初からその色であったかのようだ。


「ハハ……」


 乾いた笑いが零れる。


(もう治せないのかな。僕が少しずつ化け物に向かってる……また段階が一つ進んで、今度は体にしっかりと現れたのかもしれない)


 鏡に手を置いて、さらに目を覗き込む。すると、鏡が僕の息で白く染まった。僕が自身の目を確認することを、拒んでいるように感じた。


(馬鹿らしいな、どうせ見た所で何も変わらない。現実を見せられるだけだ)


 僕は鏡に背を向けて、再びホヨに視線を向けた。ホヨは相変わらずの様子だ。


「ホヨ、もう一つ聞きたいことがあるんだけど」

「何ホヨ?」


 ホヨは耳をピクッとさせて、顔を上げる。


「山口村の方はどうかな? ちゃんとお金になってるかな」

「ホヨは毎日届けてるホヨ。全部ではないけど、質屋で売ってる姿を見たホヨ」

「そうか……それならいい」

「二人と巽は一体どんな関係ホヨ?」


 ホヨからのその質問に、走馬灯のように思い出が蘇った。苦しみも楽しさも、共に分かち合ったあの日々を。

 僕が泣いている時は、優しく手を差し伸べてくれた睦月。睦月の背後から楽しそうに笑っていた東。そんな二人が我が儘で、城から逃げ出した。僕はそれを見逃して、二人が生きて行けるようこっそりと支えている。

 僕と今の二人の関係は一体なんなのだろう。もう姉弟でもないし、主従関係でもない。でも、もしあえてこの関係に言葉を飾るのなら――。


「保護者かな」


 偉そうな言葉だ。僕には似つかわしくない言葉。でも、僕は二人との関係をこっそり一方的に勝手に続けている。家族でも何でもない、そんな縁を切るような発言をしておきながら本当に情けない話だ。


「そうホヨか……」


 少しの間、無言の時間が続いた。そんな中、ホヨをずっと見ていて思い出した。ホヨは「何でも出来る」そう言っていた。


「ホヨ、君はなんでも出来るんだよね?」

「当たり前ホヨ!」


 垂れていた尻尾が元気良く上を向き、耳が激しく上下し始める。


「本当に?」

「本当ホヨ!」

「そうか……フフ」


(いいことを思いついたぞ)


 薩摩国が数の力で圧倒するのなら、当然数の少ない僕らの国は負ける。しかし、勝つ手段がない訳ではない。勝つ為ならば、どんな卑怯な手だって使おう。それが、この国を守るための最善の策になる。


「ホヨ、今から薩摩国に行って来てよ。それでね――」

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