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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
十七章 迫る危機
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胸が躍る

―夕景の間 昼―

「お前……その目はどしたんじゃ?」


 慊人が怪訝な表情で僕を見る。


「目?」


(僕の目がどうかしたのかな?)


「なんで黄色になっとんじゃ」

「……あぁ」


 シャーロットさんから聞いた。僕達みたいに変な技術を使われた人間には、目にその副作用的な物が共通して現れると。僕の場合は、どうやら目の色が変わることみたいだ。

 しかし、これは厄介だ。ここまで露骨に現れると怪しまれてしまう。


「これは、そうだねぇ……オシャレみたいなものだよ」

「男の癖にそんなことをしとるんか?」

「男だって身だしなみは整えないといけないでしょ? その一環だよ……フフフフ」


 慊人が馬鹿というか、まともでなくて良かったと思う瞬間だった。しかし、これからが問題だ。いつになれば、この目が治るのかが分からない。他の人への誤魔化し方を考えなくてはいけない。


「ほう、急にのぉ……変わったオシャレもあるんじゃのぉ。余はちっとも興味ないわ」


 そう言いながら、慊人は自身の坊主頭を何度か撫でた。


「フッ……まぁ、そうだよねぇ。昔から君はそういう人間だったもんね。で、話を戻すけど、僕らはどうやって国を守るの?」

「あん? そんなんその時にならんと分からんじゃろ」

「正気?」


 まさか、これほどまでだったとは。慊人は感情のままというか、行き当たりばったりの行動が多い。それで何度苦労させられ、何度痛い思いをしてきたか。ましてや、今回は国のことが関わっているのに。


「正気に決まっとろうが、一々細かいことを考えるのはたいぎーんじゃ! それに薩摩国の軍隊の八割が雑魚、一割が普通、一割が楽しく戦える相手じゃけ、なんてことないじゃろうが。それに皆でハラハラとした気持ちで戦える方が楽しいじゃろう。事前に色々考えても疲れるだけじゃ」

「あっそう……」


(まぁいいか、いざとなったらこの世界ごと消してしまえばいいんだから)


「本当に向こうがくる日付とか分からない?」

「余の戦艦が監視しとるでの、海の方は来たら分かるわ」


 慊人は、やや面倒臭そうにそう答えた。


「使用人だけで大丈夫なのかい?」

「不良品の船にやられとるようじゃ、余の使用人としては失格じゃの。死んでもなんの問題もないわ」

「ハハハッ! 慊人は本当に面白いね」


 命の価値、きっと慊人にはない概念だのだろう。


「あん? どこが面白いん?」

「フフ、気にしなくていいよ。それより急いでこのことを皆に伝えないとね……」

***

―廊下 昼―

「巽様!」


 僕だけが部屋から出た。慊人はもう少しふかふかな椅子の感覚を堪能したいらしい。

 すると、遠くから陸奥大臣の声がした。大きな音を立てながら、目の前までやって来ると僕を見て驚愕の表情を浮かべる。


「巽様!? 一体、その目は……」


 どうやら、この目は治っていないみたいだ。


「オシャレしてみただけだよ。それより……これからとっても面白くて楽しいことがあるんだ」

「は……?」

「武者達に言っておいて……」


 僕は、陸奥大臣の耳元に口を近づけ囁いた。


「僕らの強さを証明出来るいい機会になる、君達の血と悲鳴と絶望が……僕らの国を守る盾になる。これから戦争が始まるよって」


 僕がそう言った瞬間、みるみるうちに陸奥大臣の顔が青ざめていくのが分かった。僕は陸奥大臣の耳元から口を離し、陸奥大臣を見る。


「これは命令だよ。薩摩国との戦いに、しっかり備えてね。嗚呼、胸が躍るな!」

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