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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
十七章 迫る危機
205/403

最高に最高な日

―夕景の間 昼―

「小細工って……?」

「戦艦を不良品にしたんじゃ! 上手いこと機能せんようにの!」

「え? それってかなり大問題なんじゃ……」


 技術力が国の売りなのに、そんなことをしては信用にも関わってくるのではないだろうか。


「薩摩国の現当主は、横暴そのものでのぉ……圧倒的武力を盾に好き勝手言ってくる。余も周辺の国々もうんざりじゃ。な~に大したことはない。普段の行いが悪いと壊れると注意事項にも記載したしのぉ。それで造ってくれとほざくんじゃから……」


 西の方のことはよく分からない。さらに、忍者達が死んで他国の情報が入りにくくなった。同盟国のほとんどが東に集中している為、西の情報を知る機会は安芸国くらいしかない。


「彼らはいつ来るんだ?」

「もう来るじゃろ」

「は!?」


(待て待て待ってくれ! 滅茶苦茶過ぎやしないか!? もうほとんど不意打ちだろ、こんなの!)


「じゃけぇ、余が協力しちゃるって」

「協力って言ったって、こっちは数が少な過ぎる!」


 薩摩国の力を百とするならば、僕の国の力は十だ。数があまりにも違い過ぎる。こんなの無茶だ。


「やってみんと分からんじゃろ?」

「一か八かって……国の未来がかかってるのに、そんなこと――」

「無抵抗でやられたいんか?」


 慊人は僕を睨みつけた。


「それは……」

「やられとうないよのぉ!? 国としても、王としても、男としても恥じゃ! やらずして負けるのは最悪じゃ! 巽……お前はあの頃とは違うんじゃろう?」


(そうだ……もしここで怯んで何もせずに負けたら永遠の恥だ。やってみないと分からない……もしかしたら、意外と相手は僕よりも弱いかもしれない。数はあっても、僕よりは――)


「それにさっきお前をひさしぶりに見た時に思ったんじゃ……一緒に戦ってみたいとの」

「前会った時は、僕みたいな奴とは一緒に戦いたくないって言ってたじゃないか」


 思わず笑いが零れ出る。戦いごっこをやらされて、一方的に殴られた後に言われたことだ。


「じゃけ、言ったじゃろうが! 今のお前なら一緒に戦ってみたいとの。昔のお前はただのサンドイッチじゃ!」


 慊人は、僕を指差して自信満々に言った。


「サンドイッチ……? うぇ……」


 白いパンに卵と野菜が挟まれた物が脳裏に浮かんだ。ただ、それは想像するだけで不味くて吐き気が込み上げてくる。


(昔の僕って……食べ物? どういうことだ?)


 ――馬鹿馬鹿しい会話だ。反吐が出る――


 その声がするのと同時、激しい頭痛が僕を襲う。


 ――情けない奴。そんなのだからいつまで経っても追いつけない――


「ううっ……」


 世界が眩む、歪んでいく。


 ――あいつのいいようにはさせない。僕が弱い巽の代わりにやってやる――


「あん? 大丈夫か? おーい、聞いちょんか? われぇ!」

「……聞いてるよ。はぁ……少しは静かに出来ないの? まぁいいや、それより楽しみだねぇ。フフフフ……ゾクゾクする」


 人々の悲鳴、嘆き、唸り声、怒声。無差別に流れる血、涙、崩壊する建物、人。想像するだけで気分が高揚する。今日は最高の日だ。

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